ＬＯＶＥ　ＭＥ　ＡＧＡＩＮ　（ＬＡＮＤ　ＤＯＷＮ　ＵＮＤＥＲ）
　
08年：ＡＢＳ−ＣＢＮプロダクションズ／スター・シネマ・プロダクション
監督：ロリー・Ｂ・キントス
主演：ピオロ・パスクアル
　　　 エンジェル・ロクシン
　　　 リッキー・ダヴァオ
　　　 ロニー・ラサロ
　　　 ディンプレス・ロマナ
　　　 ＡＪ・ディー
　　　 エリッチ・ゴンザレス
　　　 ナッシュ・アグアス
　　　 ジョン・マナロ
　　　 ブレント・メトケン
　　　 チャンダ・ロメロ
　　　 ドミニク・オチョア
　ピオロ・パスクアルとエンジェル・ロクシンの顔合わせにより、オーストラリア・ロケで描く恋愛もの。人気スターのファンに向けた商業作といえる。
　カウボーイのミゴ（ピオロ）はカウガールのアラー（エンジェル）が好き。男まさりのアラーはミゴの求愛をうるさがるも、やがて相思相愛になる。ラヴラヴの幸福の中、ロデオ大会に出場で、カウボーイ部門のミゴ、カウガール部門のアラーともに好成績を喜ぶとき、アラーの父のウェイン（リッキー・ダヴァオ）が牛に蹴られて大ケガをおう。金銭トラブルにみまわれ、叔父のドドン（ロニー・ラサロ）の紹介でオーストラリアの牧場に仕事をえたアラーは、ミゴの猛反対をふり切って出発。オーストラリアの仕事にとまどいつつも頑張り、その仕送りで家族が借金を返す。やがて有能ぶりを気に入った牧場のオーナーのブライアン（ブレント・メトケン）がアラーにプロポーズ。迷いながらもうけたアラーだが、新しいフィリピンからの労働者がやってくるや、そこにミゴがいた。
　との物語で、ジェウェル・Ｃ・カストロのストーリーにもとづくアラー・ジェル・Ｇ・バダヨスとジェウェル・Ｃ・カストロの脚本は、とくにどうってことない内容。多少とも海外就労の形をとるあたりがフィリピンっぽいかな。
　とにかくフィリピン映画全般の大きな特徴だし、さらにロリー・Ｂ・キントスのテーマなのか、鼻につくくらいの家族愛の強調がここにもみられる。ミゴがアラーの気を引こうと、アラーのふたりの弟にカウボーイ・ハットを買ってあげ、家族づき合いで好印象を与える。アラーがオーストラリアへ出発に弟のアントニー（ジョン・ヴラディーミル・マナロ）とアリエル（ナッシュ・アグアス）が今生の別れのごとく泣きじゃくり、オーストラリアとフィリピンの家の間にパソコン通信が開通し、ＴＶ電話で父や弟たちの顔がうつってアラーがモニターごしにキスをする。ブライアンの求婚にアラーが家族のことを考え、ブライアンが「フィリピン人はいつも家族が優先だ」とあきれるが、まさにそうよという感じ。ミゴにも母（チャンダ・ロメロ）と兄（ドミニク・オチョア）との問題が横たわる暗示をおく。
　人間の表現はアラーのオーストラリア就労の決断にミゴが憤慨で、心をとざす単細胞さが説得力を弱める。ただしオーストラリアの牧場で再会のあと、お互いの気持ちをおさえていたものの、ミゴが馬に蹴られてケガのとき、アラーが大声であわてたためにブライアンがふたりの関係を察するあたりはまずまずかもしれない。ミゴが「カネのためか」とアラーを非難は一方的でも、こっそり愛撫に発展が自然のなりゆきなら、ブライアンがアラーにドレスを贈り、ミゴに帰国を迫る流れで、さほど愛憎がドロドロ盛りあがらないのは、ピオロとエンジェルのスター企画ゆえん。オーストラリア人をからめても、文化や人間観の対立をおざなりにすませる。
　まあドラマはともかく、周囲の環境や風習、主人公の生活描写が興味を引きつける。まずミンダナオのブキッドノンを舞台に、ここで開かれるカアムラン・ロデオの光景がおもしろい。カウボーイたちは馬でなく牛に乗り、カウガールたちは子牛を地面に寝かせて縛る速さを競う。またアラーはパイナップル畑で収穫し、パイナップルを切ってミゴに食わせる。オーストラリアの牧場では小型ヘリコプターが牛の群れを追いこみ、おしっこしたいアラーが先輩のイナー（ディンプレス・ロマナ）に「トイレはないから、そのへんでするのよ」といわれ、人目をしのんで座りションの際に野良カンガルーをみる。アラーがイナーと買いものでレジのおばさんの「グッダイ」に、オーストラリア英語の発音を確かめる。
　もっとも三度の主題歌の挿入で音楽をバックにアラーの仕送りのようすを紹介や、フィリピンでミゴとアラーが再会に、馬で競争を移動撮影のミドル・ショットを含めて撮るなど、ロリー・Ｂ・キントスの丁寧なタッチが伝わり、ミゴとアラーがデートでコアラの公園へいく観光要素のさり気ないプラスがうまいも、中盤の退屈さがいかんともしがたい。起伏の平坦なリズム感に乏しい演出は家族愛の度をすぎた押しつけともどもに、ちょっと困りものかな。
　エンジェル・ロクシンは野原のおしっこでお尻がみえないのは当然ながら、ブライアンと暮らす部屋で髪をすくとき、ランジェリーじゃなくて残念。衣装はほとんどがジーンズになり、ロデオで暴れるや、腰のまわりがずれるハプニングがほしかったところ。ミコと愛撫は筋肉質なピオロのボディーにふれたあと、シャツを脱いで背中が露出し、お尻の割れ目がのぞく寸前でショットが変わるも、ミコが立位でバックからナメナメにぞくぞく。画面は乳首のでるギリギリでフレームを切る。
　ほかにディンプレス・ロマノが妊娠する役で大人の女性を演じ、ブキッドノンのアラーの友人役でエリッチ・ゴンザレスが顔をだしてキュートさをふりまく。
　亡くなった設定のアラーの母役のジーナ・アマドルは写真のみの登場になる。