ＩＭＢＥＳＴＩＧＡＳＹＯＮ　ＫＡＹ　ＬＯＬＩＴＡ　ＭＡＣＡＲＥＮＡ
（ロリータ・マカレナの捜査）
　
97年：グッド・ハーヴェスト
監督：ジョナス・セバスチャン
主演：リタ・マグダレナ
　　　 マイク・マガット
　　　 ロイ・ロドリゴ
　　　 アドニス・ラクサマナ
　　　 アナ・マリー・ファルコン（フランシン・プリエト）
　　　 マギー・デラ・リヴァ
　　　 アーチー・ヴェントサ
　人間の動かしかたが非常に類型的で、感情表現もストレートすぎて、ジョン・セバスチャン監督は決してうまくないのだが、ちょっと面白いドラマである。
　アナ・マリー・ファルコン演じる大きな縫製工場主の娘と、ロイ・ロドリゴ演じる議員の婚約パーティー。いかにも中流の上の金持ち趣味を感じさせる席上へ、マイク・マガット演じる刑事が現われて状況が一変する。マイクはリタ・マグダレナ演じるロリータ・マカレナが自殺したことを調べていて、彼女の残した日記から浮上した名前を当たれば、ここへたどりついたという。
　アーチー・ヴェントサ演じるアナの父は、かつてリタの雇い主だったものの、リタの父親が病気で治療費の必要から賃上げデモに加担し、それでクビにした過去を持つ。アナ自身も以前、ドレスを買いに行ったブティックで、ナイス・ボディーの店員を嫉妬から解雇するようにオーナーへ圧力をかけたときの女性がリタだったと知る。ロイは某パーティーに余興のダンサーとして呼ばれていたセルヤという女性がリタで、セックス・ビジネスに慣れない純情さに引かれて愛人として囲い、父親を入院させてあげるも、結局は捨てた事実を告白する。マギー・デラ・リヴァ演じるアナの母は信仰心厚い人物だったのに、慈善活動の場所へリタがきたときに名前を聞けば「カーン夫人」と答えたから、まさに自分のことだったので疑問を抱き、妊娠していたリタを堕胎させた背徳行為を働いている。アドニス・ラクサマナ演じるアナの弟は、バーの掃除係だったリタをレイプし、しばらくはやさしく接したときもあったのだが、リタのお腹にいたのはアドニスの子だった。
　とアガサ・クリスティーを彷彿とさせるような、登場人物全員に動機のある構図。犯人当てのミステリーじゃないからややつまらないものの、それぞれがリタへ放った仕打ちから陰の内面をさらけだして、平和な家庭がガラガラ崩れるようすを話の核とする。人間の二面性や、特権階級の欺瞞に迫りきれたかどうかは疑問だが、とりあえず狙いを評価したい。
　また最後にマイクがニセ刑事だったとわかり、はたしてリタは本当に自殺したのか…　ロリータなど名前が異なってでてくるリタのキャラクターは、ひょっとして同一人物じゃないのではないか…　一体マイクの正体は…　などの逆転もあって、まずまず練ったあとをうかがわせる。
　緊迫感のない画面づくりながらも、退屈させずにみせた点は評価したい。
　ただし全員に残った心の傷を具象化するイメージで、マリア像と同じく目から血を流すマギー以外の表現がいささか陳腐。家を追いだされたリタが父親と一緒にさまようシーンで鍋をかかえていたり、病院の受けつけで父の治療を頼むとき、医者がリタの持ちガネをチェックするや「足らない」と重体の父を放りだしてしまったり、現実かもしれないが、シンプルに描くあまり苦笑を誘う。
　ホント、ヘタだなあ、と声がでそうで、演出次第によってまだいくらでもよくできたのに、かなり惜しい作品だ。
　一方、肝心要のリタのセクシーさはいつになく大胆さを抑えていて、こちらもマイナス点。青いボディコンへチェンジするショットでは白いハイレグ下着になり、ブラから豊かなバストの谷間をのぞかせるくらいで、中途半端な露出。ロイがみているパーティーでのダンスは、白いビキニのステージ衣装の生地が厚めで、イマイチはっきりとプロポーションが浮きでない。胸元からは誘惑光線を放っているものの…　ついにオッパイの全開は自粛か？　でも父親が亡くなって、ロイと一緒に墓へ参るときの白いピタパンがムンムンに誘惑してくれる。座ったポーズから立ちあがる斜めうしろから撮ったリタにはピチッとパンツが貼りついていて、素材の薄い布がつくるシワシワや、スケてみえるＴバックのパンティーなど、中身丸みえよりも刺激的。全裸ファンには不満かもしれないが、個人的にはこれでヘロヘロになった次第。まあ、いいんじゃないか。
　アナは現在、フランシン・プリエトと改名してバンバン、ヌードを披露しているものの、ブティックのフィッティング・ルームの着がえで、黒いスリップになるどまり。男のストリップ・ダンサーたちに囲まれ、もてあそばれそうになる幻想を抱く心の傷の描写でも、脱がされる雰囲気なのに、脱がないままで終わってしまった。