92年：コンコード・ニュー・ホライズンズ
監督：シリオ・Ｈ・サンチャゴ
主演：ジェリー・トリンブル
ジョージ・タケイ
テッド・マークランド
ローラ・アルバート
シリオ・Ｈ・サンチャゴによるアメリカ合衆国向けのフィリピン映画で、フィリピンとアメリカ合衆国の合作になる。撮影にジョー・バタク、編集にエド・ヴィナーの名義でエドゥガルド・ヴィナラオとフィリピンのスタッフが要所を占める。
キック・ボクシングのＰＫＣライト・ウェルター級の世界チャンピオンであるジェリー・トリンブルを主人公に配役の格闘技系アクション作。
古参の囚人役にジョージ・タケイ、白人の囚人のリーダー役にテッド・マークランド、人権団体の女性委員役にローラ・アルバートのアメリカ合衆国の俳優陣にくわえ、白人の囚人役にニック・ニコルスン、スティーヴ・ロジャーズ、ジム・モス、刑事役にヘンリー・ストーザルコフスキーとシリオの作品で常連のアメリカ人役者のほかは、刑務所長役にヴィク・ディアス、現地人の囚人のリーダー役にロミー・ディアス、現地人の囚人役にベルティン・ラブラ、ラモン・ドゥサルヴァ、セルナン・マナハン、看守役にアーチー・アダモス、ロナルド・アシナス、神父役にレイ・ヴェントゥラ、医者役にココ・トリニダッド、女性を殺す悪党役にクリス・アギラーとフィリピンの個性派のオン・パレード。もちろんロケはフィリピンだし、ほとんど主役だけにアメリカ人を使ったフィリピン映画にみえる。
ストーリーは単細胞なもの。海軍を除隊で船員の仕事をえたジョン（ジェリー・トリンブル）がたまたま港で女性を犯す集団をみつけ、助けに入ると、ボスのチャヴェス（クリス・アギラー）が女の首を切ったため、怒りで格闘のうち、チャヴェスに事故でナイフが刺さる。チャヴェスの手下たちの証言でジョンが女性とチャヴェスの殺害犯にでっちあげられ、刑務所送りになる。沖の孤島にある刑務所では所長のアコスタ（ヴィク・ディアス）が好き勝手に振るまい、囚人たちの給料をネコババしてる。その事実をつかんだ囚人が帳簿を盗んで隠すも、偽りの脱走容疑で殺される。古参の囚人のアンクル（ジョージ・タケイ）が医者（ココ・トリニダッド）の協力で内部告発の手紙を書き、それを読んだ人権団体のヘレン（ローラ・アルバート）がサモラ神父（レイ・ヴェントゥラ）と調査に乗りだすが、証拠に帳簿がいる。所内にはチャヴェスの仲間のアルヴァレス（ロミー・ディアス）がジョンを仇と狙ってくる。白人の囚人のサッカー（テッド・マークランド）がジョンに白人同士で組もうと声をかけるも、あからさまな人種差別の露骨さにジョンが断わる。アコスタがジョンをアンクルの房に入れ、現地人のグループと白人のグループの両方からケンカを売られる騒ぎを利用で帳簿をみつけ、おさえようと考える。さらにアルヴァレスとサッカーに手を結ばせ、ジョンを追いつめる。アンクルの丸めこみに失敗し、ヘレンが再調査にきたとき、看守のリーダーのヴァルガス（ローランド・ダンテス）がアンクルを陰で殺すや、独房の監禁小屋で帳簿を発見のジョンがヴァルガスをやっつけ、ヘレンと逃げる。暴動が起きた刑務所では囚人たちがアコスタを檻に閉じこめる。
チャールズ・フィリップ・ムーアの脚本はわざとだろうが、各人のキャラクターがシンプルで、とてもドラマと呼ぶにいたらない。ラストも看守のロペス（アーチー・アダモス）がやっつけられないままでカタルシスが残る。
架空の国の設定ながら、背中にＰの文字が書かれる囚人服はフィリピンの監獄そのもの。ジョンがアンクルに取り調べで大使館に電話一本も許されなかったといい、このフィリピンの買収体質や腐敗をアメリカ合衆国の映画が遠慮もなく口にできるあたり、シリオがフィリピン人だと感じる。
悪徳の看守たちも神父は撃てないも、凶悪なヴァルガスが平気で射殺のキリスト教の浸透がまた、フィリピンっぽい。
所長室のアコスタのバックに日本刀が二本、かけてあるのは、ただの雰囲気づくりに思える。
とにかく刑務所内なため、看守以外は銃を使えず、囚人たちが殴り合う設定で全編に肉弾戦が展開し、半端じゃない迫力。ジェリー・トリンブルをメインに起用が格闘技の醍醐味につながる。しかもテッド・マークランド、ロミー・ディアス、ローランド・ダンテス、ロナルド・アシナス、クリス・アギラーなどがプロフェッショナルな格闘家のジェリーに負けないがんばりをみせ、さほどウソっぽさの少ないファイティングが手に汗握る。いささかチンプな面をともなう内容のＢ級作であっても、技闘の部分のみをとればＡ級のできばえ。人間のダイナミックな動きでみせるアクションの魅力を満喫する。
いわば低予算でアクション作をつくる見本のようなもの。
それとチャヴェスに殺される女性が服をビリッと裂かれてオッパイがプラプラなうえ、パンティーをはぎとられるや、陰毛も丸だしが嬉しい。おそらくフィリピンのセクシー女優だろうが、クレジットがなく、容姿からも判断ができないため、誰かわからないのが残念。是非とも名前を知りたくなる。
※ この作品は『キング・オブ・フィスト』の題名でヴィデオ発売されたことがある。
