ＬＩＮＬＡＮＧ
（欺まん）
　
99年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：マリオ・Ｊ・デロス・レイエス
主演：リチャード・ゴメス
　　　 ジョイス・ヒメネス
　　　 ポップス・フェルナンデス
　　　 デイジー・レイエス
　　　 ジゼル・サンチェス
　　　 リト・レガスピ
　　　 アリ・ソット
　　　 チンゴイ・アロンソ
　　　 ポッポ・ロントク
　　　 ルーカス・レオナルド
　　　 ベルト・アヴィレス
　　　 ジョン・ロモノ
　　　 ダンテ・ゴメス
　肉欲に溺れるのは男の常だが、魅力的な二人の女性を同時に愛そうというのは身勝手であり、女性には背徳となる。背徳であるがゆえにドラマの題材には格好ともいえて、三角関係の物語はあとを絶たない。でも相変わらずのアイディアのない定番のストーリー展開だと､いささかウンザリであることも否定できない。ルキノ・ヴィスコンティの『イノセント』しかり、しょせん上流階級の男女のイチャイチャ劇はくだらないといえるのではないか。クロード・ルルーシュの『パリのめぐり逢い』などは稀有な例だろう。
　マリオ・Ｊ・デロス・レイエス監督の本作も、上流階級のくだらない不倫劇の枠からまったくでていない。金持ちで何不自由なく暮らしているリチャード・ゴメス扮するビジネス・マンが、ポップス・フェルナンデス扮する妻との新婚旅行の帰り、ふとした偶然からジョイス・ヒメネス扮する女性と出会う。携帯電話を貸したことからメモリー機能に番号が残り、二人は再び会うことに。
　妻であるポップスがいつ夫の浮気に気がつくか、また知ったあとにどう対応するかが見どころになるはずだが、イマイチ盛りあげに欠けるのは演出力の不足に負う面が大きいように思われる。また悲劇の結幕も、これなら『アメリカの悲劇』にしたほうがよかったのでは、という感じのもの。
　いわゆる『アメリカの悲劇』のようなリアリズムというか、本作がフィリピン社会の現実に目を向けないのは、そういう内容にうんざりであり、映画の中ぐらいは別世界の人間たちのイチャイチャを単純に楽しもうという観客の欲求に応えるため、と察するのだが…　そうなれば興味の焦点は、ジョイス・ヒメネスとポップス・フェルナンデスという二大スターのセクシーさがいかに競われるかしかないではないか。
　ジョイスは実に奔放な人物を演じていて、舞台劇を鑑賞に行った帰りなど、その役者の一人とあっさりベッド・イン。まあジョイスのような女性に誘惑されたら誰だって拒めるわけがなく、主人公のリチャードが不倫に走るのにも、何の疑問も起きずに納得。ただ本作でのジョイスは、役者と寝た翌朝、ベッドで豊満なオッパイをちらつかせながら全裸から下着をはくシーンや、リチャードとボラカイの海でたわむれるときにビキニのブラを脱いでみせたりしてくれるものの、いつもの彼女より魅力が薄れているように思う。リチャードとのセックス中に暴漢に襲われるシーンも、いま一つ興奮させる要素が少ない。マリオ監督の表現力がヘタなせいであり、エロティシズムを理解していないからではないか。
　ポップスは女優に徹していて、主題歌はレジーン・ヴェラスケスが歌っているわけで、演技力に賭けてみようと思ったのかもしれない。とくにうまいわけではないが、まずまず魅力はでているように感じる。セクシー・スターではないからヌードなど期待できないが、入浴シーンではもう少しハラハラする要素があっていいのではとの不満が残るのは、やはり監督の撮りかたのまずさだろう。ただ冒頭の海岸でのラヴ・シーンは、ホット・パンツのような露出の少ない水着ながら、ヒップラインがくっきりと浮かびあがって悩殺パワーがビンビン。
　もっともリチャード・ゴメスは小さな海水パンツでモッコリさせているし、ポップスとの入浴シーンでは白いビキニのパンツを濡れてスケスケ状態に。ジョイスから誘惑される役者の若者も、ジョイスが去るときにまだ全裸で眠っている彼のシーツをめくっていくから、お尻が丸だしだけでなく、チンポのつけ根までみえそうになる。大衆紙のグラビアに女性ヌードばかりか、男性の肉体美まで載せる国だけに、女性ファンのためにセックス・アピールを強調する需要があるのだろう。
　身勝手な男の不倫劇ながら、男性よりも女性ファンのための映画といえそうだ。