ＬＩＧＡＹＡ　　ＡＮＧ　ＩＴＡＷＡＧ　ＭＯ　ＳＡ　ＡＫＩＮ
（悦び　私をそう呼んで）
　
96年：レイナ・フィルムズ
監督：カルロス・シギオン・レイナ
主演：ロサンナ・ローセス
　　　 チャンダ・ロメロ
　　　 ジョン・アルシーリア
　　　 アルミダ・シギオン・レイナ
　　　 イザベル・グラナダ
　　　 ミルナ・カスティーリオ
　　　 ペン・メディナ
　　　 エヴァ・ダレン
　　　 イーマン・エストゥルコ
　　　 クリスピン・ピネダ
　　　 ルビロサ
　アルミダ・シギオン・レイナがプロデュースするレイナ・フィルムズの作品。ニューヨーク大学で映画学の学位を得たフィリピン映画界の若きホープ、カルロス・シギオン・レイナが監督していて、いかにもインテリっぽい匂いを漂わせる。
　チャンダ・ロメロがママを演じる、どこかの地方にある（ロケはイロコス・ノルテ）娼婦の館が舞台。いわゆる一階がダンス・ホール兼バーになっていて、二階の小部屋でセックスしたり、女の子をお連れ帰る施設。ここに娼婦のなれのはてともいうべきアルミナ演じるおばあちゃんがいて、チャンダがいろいろと世話を焼いているのだが、わがままなうえに「議員さんから求婚された」といった夢のような昔ばなしばかり口にするから、まさしく老醜をさらしている。
　ロサンナ・ローセス演じる主人公は、アルミナのようになりたくないと思っている娼婦で、まともな相手との結婚が夢。
　映画はジョン・アルシーリア演じる農夫がロサンナに求婚するも、うまくいかずに破談し、いつしかロサンナがアルミダと同じ人生を歩んでいる皮肉を描いている。
　前半はルビロサ演じる叔母から売られたイザベル・グラナダ演じる処女がいかにすれていくか、を並行して展開。イザベルが泣いてばかりで、客から逃げだしたからチャンダが鞭打ちにするなど、厳しさのいったんをみせつける。ロサンナが売春のＡＢＣを教えるのだが、イーマン・エストゥルコ演じるドスケベな市長がやってくると、さり気なくイザベルを隠してやるやさしさの表現がうまい。とにかくチャンダにしても根は親切だし、ロサンナが男たちに対して傲慢なキャラクターになっているだけに、人間の秘める二面を巧みににじませているといえる。それでもイザベルがみつかってレイプ同然に処女を奪われ、やがて化粧も堂に座ったイザベルは、ペン・メディナ演じるジョンの義理の父を顧客につかむと、図太くカネを要求するまでに変化。自分が新人を指導する立場にもなるあたりがポイントだが、結婚に失敗して舞い戻ったロサンナと反対に、娼館からでていく希望を残す人物として、なかなか印象的なサブ・キャラクターだといえよう。
　ロサンナは市長の誘いをわざとふるばかりでなく、市長の運転手をお得意にしていて、カネが少ないからとチンポをギュッとねじる気の強さ。最初にペンが娼館へジョンを連れてきたときは軽くあしらうも、ビジネス・ライクなロサンナへジョンが純情に求婚して、一気にラヴラヴ。娼婦たちから見送られてジョンの家へ移り住んだのはよいのだが…
　料理はできないし、アイロンをあてれば衣服をこがす。エヴァ・ダレン演じるジョンの母はロサンナを嫌い、ペンはオッパイのこぼれそうなロサンナの胸元をみて欲望を抱く。ついにはジョンが留守のときペンが襲い、それを目撃したエヴァがかえってふくみ笑いを浮かべるあたりに残酷な現実を提示している。
　ジョンがペンとロサンナのことや、クリスピン・ピネダ演じる神父とも肉体関係があった事実を知って絶望。結婚式の準備のために買っておいたウェディング・ドレスを投げ捨てるのだが、家を去る決心をしたロサンナが何度もまだかまだかと箱からあけてはながめていたあこがれのウェディング・ドレスを踏んでいくあたり、いかにも計算がちらつく。シンボル的なアイテムとして扱いながらも、いささか頭による小細工のようにもうかがえるから、演出とはホント難しいもの。カルロスは若いなあ、という感じか。でもでていくロサンナをエヴァが初めて感謝から抱きしめるなど、体を売ったもののけがれというか、そうした人間が秘める純潔志向のようなものを示した視点はさすが。
　やがてチャンダが店を閉め、廃墟となった娼館跡が寂しさを醸すも、ただ一人、中年となったロサンナが娼婦を続けているラストからは、悦びを与え続けた女性が、自らは悦びを得ることができなかったというアイロニーがきいていて、まずまずのでき。
　どこまで女心に迫っているかは、女性じゃないから判断できないので、一度、意見を聞いてみたいものだが、まあいいんじゃないか。
　さてロサンナのボディーの誘惑は、「おみごと」と呼びたいまでの素晴らしさになっている。市長の運転手とのセックスで豊満ながらも、張りのよいオッパイが揺れまくるし、ジョンに全身をなめられるベッドでの素っ裸もそそるプロポーション。ペンに襲われるときは、水浴びあがりのパンティー一枚で、濡れた肌のオッパイが挑発的だから、キャーッ、ステキ。終わってシーツからオッパイを丸だしで寝ている姿も圧巻。
　正直なところ、美人だけどもタイプ外のロサンナだが、燃えさせてくれるよなあ。
　イザベルは脱ぐシチュエーションでずっとシーツを巻いていて、やや期待はずれ。娼婦を演じたミルナ・カスティーリオ、マッキー・ヴィリアロン、カロル・マルセド、ステファニー・リン・オイネザ、レーチェル・ディアスといった女優陣の中ではミルナとマッキーがかわいく、ミルナにはオッパイがみえそうなショットがあった。