ＬＩＧＡＬＩＧ
（トラブル）
　
06年：ＣＭフィルムズ
監督：セザール・モンタノ
主演：セザール・モンタノ
　　　 サンシャイン・クルース
　　　 セリア・ロドリゲス
　　　 ジョニー・デルガド
　　　 カチャ・サントス
　　　 バヤニ・アグバヤニ
　　　 ジョン・レガラ
　　　 グウェン・ガルシ
　　　 マニー・カラヤン
　セザール・モンタノが制作・原案・脚本（ウィリー・ラコンサイと共同）・監督を兼ねたディジタル作品。制作指揮にモンソール・デル・ロサリオ、ロンメル・モンタノ、バヤニ・アグバヤニ、ライン制作にサンシャイン・モンタノ（クルース）が名を連ね、いかにも映画好きによる、自分たちの手でいいものをつくろうとの意欲がうかがえる。低予算で何を描くかを考えたようにも思える。意外な逆転のおもしろさを狙った構成。
　売春婦（グウェン・ガルシ）が殺され、最後の客だったタクシー運転手のジュニア（セザール・モンタノ）に刑事のノブレ（ロンメル・モンタノ）が職務質問をする。ジュニアにはフィアンセのトリキシー（サンシャイン・クルース）がいて、結婚前に家族に会ってほしいというので、田舎へ向かう。トリキシーの希望で同郷のトティー（カチャ・サントス）が同行となる。車の中でトリキシーが仮眠をとるすきにトティーがジョニアの股間をさわり、意味深な誘惑をかける。トリキシーの母のマルタ（セリア・ロドリゲス）は家畜に散弾銃を撃つような男まさりの性格で、ジュニアに冷たい態度をとる。トリキシーの兄にあたるマックス（ジョン・レガラ）もジュニアの前で刀をとぐ怪しいキャラクターをにおわせ、マックスの妻のベティー（カリラ・アギロス）はジュニアの視線をはばからずにマックスとイチャついてみせる。唯一、トリキシーの妹のロウェナ（レベッカ・ルステリオ）のみがノーマルっぽい。一方で狂人のごとく叫びながら運転する初老のダミアン（ジョニー・デルガド）がいる。ジュニアとの結婚にマルタがトリキシーへ注文をつけるのをジュニアが耳にはさみ、トティーの水浴びをマックスがのぞいて迫る。うさんくさそうな隣人のインゴ（バヤニ・アグバヤニ）のところへトティーがヴィデオ・カメラをもって遊びにいったあと、突然にダミアンが現われて、いきなりベティーを撃ち殺し、マックスからマルタへと殺りくをはじめる。
　理由のわからない無差別殺人のうちに反撃の銃をもったマックスが半死状態で乱射をくり返したり、マルタと様子を探るにらみ合いがあったり、ベッドの下に隠れたトリキシーの顔を蜘蛛がはったりと映画はサスペンスを盛りあげる。トティーがもどってくるや、ちょうどダミアンがトリキシーをら致していて、驚いたトティーも殺される。たまたま棚に置いたヴィデオ・カメラがダミアンのほうを向き、撮影を続けている。トランクへトリキシーを押しこんだ車の後部にジュニアが潜み、運転中のダミアンとジュニアが格闘になる。斬殺の家にはノブレが部下のドゥラナ（アルヴィン・アンソン）と捜査にやってきて、生き残ったロウェナやインゴに事情を聞く。
　ここから先はオチをバラすので、みていない人は読まないでほしいのだが、ジュニアに少年時代の記憶がよみがえり、浮気の母（アシュリー・オット）を父が愛人ともに撃ち殺して自殺。まさにジュニアの父がダミアンにほかならない。あれっ、自殺のはずとキツネにつままれると、ノブレがトティーのヴィデオ・カメラをチェックし、そこにはトリキシーを拘束のうえ、トティーを殺すジュニアが映っている。ようは『サイコ』からの流れを引く二重人格ものであり、ときどき父になりかわっている。ジュニアへ性的刺激や不快感を与えた人物がターゲットにされて、ロウェナだけ助かった理由がわかる。マルタやマックスの不愉快な態度にジュニアが笑顔で接していたことや、ダミアンの急襲に身を隠したジュニアがとっさにロウェナをみていたのが伏線だったと気がつく。冒頭の売春婦ともジュニアは口論している。トリキシーとジュニアが向かいあう現場へドゥラナがきてとめるも、ジュニアに石で殴り殺されたと思われていたダミアンが生き返って刺殺となるとき、倒れていたジュニアの位置と起きあがるダミアンの位置を合わせていて、細部をおろそかにしない演出をうかがわせる。でもありきたりなトラウマを原因とする異常心理ジャンルを脱せず、ダミアンの常軌を逸した登場シーンから違和感をまねき、それは想像の存在なのでいいにしても、マルタやマックスの偏狭な描きかたは不自然きわまりないわけで、あまり高評価といかないのが本当のところ。モノクロームふうの売春婦殺人シーンや、続く赤みがかった画面の売春婦とセザールのやりとりシーンのほか、全編にコマ落としの動きや瞬間的ストップ・モーションなどの小細工的な技法の多用が、ディジタル作品にはよくみられる表現方法ながら、こけおどしをあおるばかりでプラスの作用につながっていない。ノブレが田舎で捜査を遂行に警察の管轄はどうなっているのとの疑問もわいて、水準でしょうとの印象に落ちつく。
　もっとも既製の会社の企画にあきたらず、ディジタルという撮影費の少なくてすむ方式ができたことで、スターのセザール・モンタノが人気を生かして積極的に自主制作へチャレンジしている姿勢には頭がさがり、これからも応援していきたいと痛感する。
　女優ではサンシャイン・クルースが脱がないも、カチャ・サントスとグウェン・ガルシがセクシー要素の導入を担当。カチャはスリップで水浴びし、白い布がボディーにペタペタと貼りつき、ノー・ブラかと視線を奪いつつもパンティーを抜きとる挑発で興奮をくれる。グウェンはセックスでオッパイをチラつかせ、枕をだいてオッパイとお股をみえなくした全裸を披露する。あとカリラ・アグロスがバス・タオルを巻いた半裸になっている。