05年：ＧＭＡフィルムズ
監督：マック・Ｃ・アレハンドレ
主演：リチャード・グチェレス
エンジェル・ロクシン
マーク・ヘラス
ジェニリン・メルカド
グロリア・ロメロ
トントン・グチェレス
ベアウィン・メイリー
チューズデー・ヴァルガス
ナネット・インヴェントル
パオロ・コンティス
リチャード・グチェレスとエンジェル・ロクシン、マーク・ヘラスとジェニリン・メルカドという、人気沸騰中の二組のカップルを主演にすえるラヴ・ロマンス。リチャードとエンジェルが軸で、マークとジェニリンはオマケになっている。前半は学園もの、五年後の後半は社会人ものの構成をとり、前半のほうがけっこうみせる。
リチャード演じるのは貧しい苦学生で、両親が亡くなり、グロリア・ロメロ演じる教会の掃除係や、近所の食堂を手伝う祖母と暮らす。学費が足りなくて学校の掃除夫のアルヴァイトをしている。夜、消灯まで図書館に残って勉強し、成績優秀。マーク演じる同級生など友人にめぐまれ、ベアウィン・メイリー演じる近所の自転車トライシクルの運転手には、アメリカ合衆国にいるペン・パルとの手紙を代筆してあげる。エンジェル演じるのは何不自由なくすごす裕福なお嬢さまで、ベンツで通学し、学校では男子学生の間で憧憬のマト的存在。周囲が「ストーカー」と呼ぶ弁天みたいな中国顔の学生につきまとわれるも、あからさまにかわしまくる。でも本当は美術をやりたいのにトントン・グチェレス演じる父に理解がなく、ビジネスの習得を強要するので成績が悪いため、父の怒りを買う。ナネット・インヴェントル演じる家政婦が、家での唯一の味方。以前に自分が原因で兄が交通事故で亡くなったことへの後悔を引きずっている。リチャードがエンジェルにあこがれを抱くながら、身分違いを心得ていて近づけない。ジュリアン・リー、マーガレット・ウィルソン、ニコル・アンダーソン演じるエンジェルのとりまきたちがリチャードを「ハンサムだけど、しょせん掃除夫よ」とウワサする。パオロ・コンティス演じるエンジェルを口説く男子学生が、リチャードに意地悪くふるまう。なんて設定が、まずあまりにもいかにもで、パターンの踏襲にあきれる。この手のストーリーは貧乏人がカネもちと接触をもつきっかけが大切だが、なるほどそこはアイディアを感じる。メル・キムラ演じる教師からエンジェルが質問をうけて答えられず、恥をかく。宿題を机に落書きしておくと、夜学のリチャードがたまたま同じデスクだったので、回答を書いておく。翌日、エンジェルがメルの前で正解を述べてほめられ、お礼の手紙をデスクにしのばせる、というもの。リチャードがエンジェルの陰の支えになる構図は、どこか『スパイダーマン２』に似ているとの指摘があるのを知り、正直なところ、最近のＣＧ過多による安易な映像づくりやリメークばかりの貧弱な企画のハリウッド映画はほとんどみなくなったため、自分では確かめていないのだが、マネたのかもと推測する。フィリピン映画の特徴として、ハリウッドの模倣が頻繁なのでありえる話。卒業パーティーでエンジェルがストーカーから逃げる目的でリチャードをダンスに誘い、ときめいたリチャードが勇気をだして告白に豪邸を訪ねるや、父の命令でイヤイヤながらエンジェルがアメリカ合衆国留学へ出発したあとだとわかる。
後半はエンジェルが代理店に勤務し、リチャードがそこの掃除係。チューズデー・ヴァルガス演じるエンジェルのとりまきの一人も同僚で、パオロも勤めているとのシチュエーションがカレッジの延長すぎて、さすがに感心しない。しかも男まさりのじゃじゃ馬から女らしく変わり、マークと結ばれたジェニリン演じる女学生がカメラマンとして成功し、マクドナルドの店長になったマークと再会。エンジェルの会社に写真提供で出入りするのだから、小さな世界のイメージが現実性を薄める。リチャードが官費留学の試験にパスでアメリカ合衆国いきが認められるも、秀才が相変わらず掃除係とは、カレッジ卒なのに無理がある。いくらコネ社会でも、外資系の進出が多いわけだし、そこまでひどくはないだろう。テス・ボン演じる秘書がつくエンジェルが若いエグゼクティヴで、プレゼン用のデザインをパソコンの操作ミスで消去にあせり、荒れまくる無能さなのも同様。リチャードがこっそりデザインを入力してエンジェルがプレゼンで賞賛を集め、再びリチャードが陰で支えになる繰り返しにおいて、パソコンにはパスワードが必要なはずなど、どことなくご都合主義が気になりだす。
ロベルト・ジョセフ・ヌエヴァスとズセット・ドクトレロの脚本は偶然と小道具をたくみに活用するのが、まずまず評価できる点といえる。偶然ではエンジェルたちが夜学の教室をのぞき、誰がエンジェルの席に座るかを確かめようとすると、そのときだけリチャードのとなりのデブ男が間違えて着席したり、絶望のエンジェルが教会で涙を流しているとグロリアが声をかけ、二回目にグロリアが倒れたのを送ったり、リチャードがラヴ・レターをもってエンジェルへプロポーズに現われ、グロリアが危篤の連絡にあわてて戻る際に手紙を落とし、それをパオロが拾ったため、エンジェルがパオロに支えられていたと勘違いしたり、といったぐあい。小道具ではエンジェルが蝶を描き、席の目印に使い、卒業のあとリチャードがもち帰り、絵の才能があるので蝶を美しく加筆するスカーフ、エンジェルのデスクにおかれたのをリチャードが六面ちゃんとそろえ、パオロができないから誤解に気がつくルービック・キューヴ、同じくパオロが内容をチンプンカンプンのリチャードが贈った『星の王子さま』の英訳本、リチャードの手紙にあるスマイル・マークの変形みたいなワン・ポイントのイラストなど。
まあエンジェルがいったんパオロをボーイ・フレンドと紹介し、素直になれないまま一緒になろうと動くあたり、愛がなんたるかもあいまいなバカ女なんか相手にするなと思わせ、もし支えてくれたのがストーカーのごときブサイクな男だったらエンジェルはなびくだろうかとの疑問が、しょせん人間を表面的な部分で判断するレヴェルの物語に終わる。リチャードだってエンジェルがブスなら助けないわけで、映画という大衆に夢を与えるフィクションだと割りきれば、それなりによくできているかもしれない。会社の掃除係が変わったのにエンジェルがリチャードへの感情をはっきり認識し、貧民街にあるリチャードの家を訪ねてみれば、グロリアが祖母とわかり、アメリカ合衆国へ出発で空港へ向かった直後と聞く。マーク、ジェニリン、ベアウィンとともに追いかけ、航空券がないために空港ロビーへ入れない。モン・コンフィアド演じる近所の知人がガードマンだったので、特別にはからってもらう。まさに自分でも送迎の際に経験があるが、フィリピンのコネの強さそのものに苦笑い。モンの夫婦ゲンカを前半に挿入していた意味が、ここで生きてくる。出発ロビーを歩くリチャードの横に、ストーカーと呼ばれていた男が通りすぎる。エンジェルは間に合わず、外で涙にくれていると、ストーカーの男が蝶のスカーフを差しだす。もしリチャードが飛行機に乗らなかったハッピー・エンドなら、大甘で小バカにしそうと思っていたら、やっぱりそうでバカバカし。でもストーカーを含め、本質的に悪人を一人もださないやさしさみたいなのが買え、リチャードとエンジェル、マークとジェニリンのみならず、パオロとチューズデー、ベアウィンとアメリカ合衆国のペン・パルまで結ばれるオチに、決して印象が悪くない。抱き合うリチャードとエンジェルに蝶の一群が舞ってきたり、ザッと通り雨が降る演出など、マック・Ｃ・アレハンドレの手堅さが、商業作品におけるロマンティックさの表現の典型ともいえる。
風俗的興味では、卒業パーティーでエンジェルたちの踊るＢＧＭが『ボルテスＶ』で、日本語のままなのに、この番組の評判をうかがわせる。美術好きのリチャードがエンジェルを案内する現代アートの画廊の主催者、スーザン・ローセス（ＦＰＪの妻である女優とは別人）という画家が実在かどうか、すごく知りたくなる。ジェニリンがアメリカ人のハンサムな男をつれてきて、マークが嫉妬をおぼえるも、実はオカマなのはコメディー要素。ラストのマニラ空港は新規に完成した第三ターミナルで、お披露目の宣伝を兼ねているのかもしれない。
とにかく個人的に注目は、女優たちの魅力に尽きる。エンジェルのグループであるチューズデー、ジュリアン、マーガレット、ニコルでは、チューズデーがいつもながらに個性的なお笑いキャラでエンジェルを引きたて、ジュリアンとニコルがなかなか美人で視線を奪う。意地悪っぽい雰囲気をだすジュリアンが自分にはタイプで、いずれセクシーな役をみたいところ。ジェニリンはあっさりした容貌がかわいく、リチャード、エンジェル、マークと四人でＷデートの際の白パンがキュート。それでエンジェルはどうかだが、チャーミングに違いないも、ななめ横顔など、ややブスっぽく映るアングルがあるのがイマイチ萌えない。目下、フィリピンの若者たちをとりこにするのに、エンジェル・ファンに溶けこめない感じ。でも薄いピンク、ベージュ、白のピタパンが色っぽく、欲をいえば雨で濡れるときにスケてほしかったが、一応、ドキドキと刺激をくれる。しかも嬉しかったのは水着シーンを含むことで、期待がまったくなかっただけに歓喜がわき起こる。自宅のプールで泳ぎ、ちょこんとターンでお尻を突きだす。水からあがるポーズをしっかりカメラがとらえ、ブラは大きめでオッパイをほぼ隠し、パンティーもホット・パンツふうの露出の少ない型ながら、貼りついて食いこみ、お尻の形がくっきりに鼻息が荒くなる。エンジェルの水着姿に乾杯。
なお貧民街でギターをもって歌う住民役で、オギー・アルカシドがカメオ出演している。
