03年：ジョルダン・フィルムズ
監督：トニー・ベルナル
主演：ジェストニ・アラルコン
エディー・ガルシア
チンチン・グチェレス
ジョン・レガラ
エリカ・モンテカルロ
エヴァンジェリン・パスクアル
トニー・フェレル
キエール・レガスピ
チャーリー・ダヴァオ
実在の警察将軍であるロメオ・Ｂ・マガントの半生を描く伝記映画。ニュースなどでしょうちゅう耳にするマガント将軍の名だが、かなりフィクションだとは推測できるも、こんな生きざまだったの的な興味が盛りあがる。
でも映画のできは著しく感心しない。どことなく『ＰＩＮＧ ＬＡＣＳＯＮ ＳＵＰＥＲ ＣＯＰ』を意識したような構成ながら、足元にも及ばない内容になっている。
本人の映像がジェストニ・アラルコン演じるマガントに変わり、いきなり冒頭から音楽がブツ切れ、録音に注意を払わない手抜きに不安が走る。
1975年の指名手配犯を逮捕する描きかたの陳腐さに、早くも愕然。
1985年と86年のレーイ・ロルダンとダニー・ラブラが演じる人質をとる男の射殺と説得の二つの挿話はこじんまりとしたまとまりでみせるながら、親しくなったサラー・バラバガン演じるバーの女が“マガントの妾だ”と殺される部分は、そこそこ引っぱるわりに、犯人グループとの銃撃戦が中途半端に終わって、ナニこれ。
1986年のロミー・ディアス演じる部下などを亡くすゲリラとのドンパチでは、ジェスニが重傷を負うにもかかわらず、180万ペソとの病院からの請求額に驚くコメディーっぽい演技が目立ち、マジな狙いとの曖昧さがバランスを崩す。
とくに核をなすのは、1991〜93年のイロコスにおけるＮＰＡと戦闘だろう。けっこうな時間をさいているも、パキト・ディアス演じるＮＰＡのリーダーがただの暴君で、かえって住民や仲間を困らせているのが、いかにも体制側の人物を主人公にする映画の視点で嫌らしい。
1994年のキエール・レガスピ演じる少女の誘拐レイプ犯の逮捕は、スキをみて逃げたキエールが自殺ｊのオチに、だから… とのあとが続かず、単なるエピソードのら列による展開のくだらなさを露呈する。
1997年のカッとなっただけで相手を射殺の男の捕りものや、ジョン・レガラとトニー・フェレルが首領で、内部抗争から自滅しそうな誘拐団の撲滅など、しょーもなさすぎてアホかと声がでそう。
恐ろしいまでの駄作だ。
チンチン・グチェレス演じる妻ともめるなど、家庭のトラブルもお申し訳程度にでてくるが、サラーとの浮気が疑われたときにチンチンの反応を無視など、ご都合主義このうえない。リト・レガスピとエヴァンジェリン・パスクアルが演じる両親にいたっては、エヴァンジェリンが病死のドラマを含むも、まったく事実の提示以上に意味がなく、もっと全体の流れに組みこませろよとさじ投げ状態。
マリルー・ヴェルとプリンセス・アナ演じるサラーの母と妹が喪服で訪ねてくる悪夢をみたり、白い衣装の顔だけ光る裁判官から断罪されるシュール・レアリズムっぽいラストのイメージも陳腐で、トニー・ベルナル監督のストーリー・テリングの手法のみならず、イマジネーションの欠如にも驚くばかり。
小道具のつくりもひどく、ローカルの警察チーフだったとき、アドル・マワナイ演じるサラーの友人がたれこむ際、デスクにあるネーム・プレートがヘタな手書きで笑ったものの、これはマニラの幹部になったらちゃんと印刷をつかっているから、わざとリアルさを表現したのかとうなづくながら、犯人脱獄を報道する新聞のアップで、見だしをノリで貼りつけているのが丸わかりは、さすがにあきれてものがいえない。
また、サラーが殺された日時のクレジットが小学生の日記以下で、信じられないことに“1987 3:00ＰＭ”だから、しっかり月と日も入れろよ、と教師の気分で指導を与えたくなる。
これで女優が魅力的なら、少しは満足も得ようものなのだが… 期待のチンチンは家族で海へバカンスにでかけるシーンがあるのに、ジェット・スキーで水着にならずじまい。確かに服を着たままが実際のフィリピーナに近いとはいえ、イラつかせるじゃないか。五人の子どもたちは、うち三名が女の子で、大きくなってからは長女をエリカ・モンテカルロが演じるも、平均レヴェルのかわいさだし、セクシーなシチュエーションを欠くからイマイチ。射撃練習している伏線は、受けがなくてアレレ。残りの二人は、正直いってブスの範ちゅう。サラーの店を訪ねるシーンではビキニのダンサーが三人（メリー・ジェーン・アルダバ、ドンナ・チャヴェス、セシール・マリーオ？）視線を奪うながら、肝心のサラーがキュートさにほど遠い。サラーを殺害する一団にダイアン・ソリアノ演じる女性がいて、首領らしき男とセックスを繰り広げ、さすがにカッカ興奮を呼ぶのは嬉しいが、ほんのあともう少しのところで乳首を露出せず、いささかサーヴィス不足。このグループとの撃ち合いはプールで、水からあがって逃げる群衆がいるのに、濡れた水着でうろつく若い女性を撮ろうとせず、えー加減にせー。唯一、ＮＰＡの女性メンバーが納得をくれるかな。ロナ・レイエスとステラ・ガルシアが演じ、ロナのほうがタイプで、パキトをいさめる正義派。冷酷に人質の政府軍兵士を殺すステラを撃ち、ジェストニへの協力者へ転じるも、ケガしたロナをジェストニがかばうポーズからベッド・シーンへの発展を願ったのだが、こちらの妄想で残念。でも荒っぽい容貌のステラがパキトと小屋でセックスしたあと、全裸にタオルでボディーを押さえながら外へでてくるではないか。タオルがポロッと落ちてオッパイがドバーッはないものの、小屋の中へ戻るとき、バックの素っ裸がバッチリで、びっくりするほど形によいお尻によだれがたれそう。
そのほか、請求書をわたす病院の事務員、ジョイ・デ・ヴェラ演じるイロコスの女市長へ連絡を告げる秘書、衝動的殺人魔の車に同乗していた女性など、たったワン・ショットしかアップのない一瞬の脇に相当な美人がいて、思わずナンパしたくなる。キエールを診察の女医も中年の色気が漂う。キエールの斬殺で変死体化した少女の母はデクスター・ドリアが演じ、ヴェテランらしい存在感が要所を締める。犠牲者の友人で、オトリを引き受ける女の子を演じるアンジェリカ・マガントは、名前から察してモデルの将軍の孫だろうか。
なお、エディー・ガルシア、チャーリー・ダヴァオ、ガミー・ヴィライなどが会議に出席する将軍として、ジョニー・ヴィカールがジェストニへ大佐昇進を知らせる将軍として出演し、大作感をだそうとの意図とわかるも、エディーが当時のラモス大統領へ電話をワザとらしく入れるなど、セコくて笑いが起きそう。
つまらないことだが、アンジェリカが警察でジェストニへ犯人の特徴を話すとき、ジョリビーのスパゲッティーを黙々と食べているのが妙におかしかった。
