ＬＡＳＴＩＫＭＡＮ
　
02/03年：オクトアーツ・フィルムズ／Ｍ−ゼット・ＴＶプロダクションズ
監督：トニー・Ｙ・レイエス
主演：ヴィク・ソット
　　　 ドニータ・ローズ
　　　 マイケル・Ｖ
　　　 ジェフリー・キゾン
　　　 ミシェル・バイレ
　　　 アン・カーティス
　　　 ライアン・アイゲンマン
　　　 エリザベト・オロペサ
　　　 エヴァンジェリン・パスクアル
　　　 ジュニー・ガンボア
　　　 オヨ・ボーイ・ソット
　　　 ジョーイ・デ・レオン
　ラスティクマン（エラスティクのＥが落ちたネーミング）というキャラクターはダルナと同じくマルス・ラヴェロの創作のようだ。宇宙からの隕石がゴムの木にあたり、そこからでたゴムの溶液を全身に浴びたら伸縮自由のゴム人間になった、とはクモに噛まれたスパイダーマンを連想させないこともない。まずはいかにもコミック的でいいんじゃないか。
　冒頭、ロミー・ディアス演じる悪党どもをクルーザーの上で退治のシーンは、弾のよけかたが『マトリックス』で、オイオイ猿まねだぞと不安を抱かせる。でも手足がビヨーンと伸びるイメージはＣＧが効果をあげていて、けっこうおかしさがこみあげる。助けた女性とキスしたら口がチューインガム状態になるなど、確かに笑いを誘うところ。
　期待できそうなコメディーと感じたのだが、トニー・Ｙ・レイエスのテンポがよい演出もあって、なかなかの娯楽作と評価したい。
　まずはオヨ・ボーイ・ソット演じるイジメられっ子がラスティクマンになる過程が描かれ、ジョーイ・デ・レオンとエヴァンジェリン・パスクアル演じる亡くなった両親の霊から「正義のために力を使え」とさとされる。
　このときモーリン・マウリシオがメイド役で出演していて、ジュニー・ガンボア演じるオヨの祖父とのかけ合いがほんわかした雰囲気をつくっている。
　人気コメディアンのヴィク・ソットがラスティクマンを演じるように変わると、しばらく悪を退治のエピソードがいくつか展開。バズーカ砲を胴体で受けて跳ね返すギャグなど、相当に愉快。ホイトうまくＣＧを活用したものだ。
　やはり人気コメディアンのマイケル・Ｖ演じるＴＶレポーターと、ミシェル・バイレ演じる他局のライヴァルがインタビューをとろうとスクープ合戦を繰り広げる様子が並行する。
　一方でオヨにはアン・カーティス演じるガールフレンドがいたのだが、ビルの火災現場から女性を助けてみれば、ドニータ・ローズ演じるアンの成長した姿。ヴィクは恋の再燃に胸こがすも、ドニータはラスティクマンに夢中で、正体をあかそうかどうか…　とスーパーマン的な男女のシチュエーションも盛りこまれる。
　ドニータが歌手との設定で、コンサート・シーンの挿入はファンへのサーヴィス精神だろう。ラスティクマンがドニータの部屋へ忍びこみ、ドニータがシャワーを浴びているのにゾクゾク。もちろんオッパイの露出はなく、残念は残念だが…　椅子に化けているとドニータの友人たちが訪ねてきて、その中のミニー・アギラー演じる太った女性が座ってドスンドスン体をゆするギャグなど、またクスクスをくれる。
　ヴィクは大学の物理学教授なのだが、ジェフリー・キゾン演じる教え子との関係がストーリーの根幹。ポチョロ・モンテスとエリザベト・オロペサ演じる両親がイマイチ無関心で、ジェフリーは祖父と住むヴィクの家をしょっちゅう訪れる。そこでヴィクが宙に浮く物質を発明し、ジェフリーがスケボーのように乗ってみせる最初のほうのエピソードは伏線。ヴィク宅には盲目や脚が悪いなど障害者の男の子や、虚弱体質の女の子が同居していて、この中のディンディン・リラレナ演じる少女が倒れて入院し、ドニータが見舞うあたりはファミリー・ピクチャーらしいほのぼの感を醸している。ジェフリーはライアン・アイゲンマン演じる不良学生からイジメのターゲットで、ラスティクマンに助けられて以来、アイドルのようにあこがれる。そこでライアンがラスティクマンのふりをしてジェフリーをボコボコにし、間違った印象を植えつける。ジェフリーは怒りと絶望でマッド・サイエンティスト化し、傷ついた腕へ砲弾を自由に動かせるシステムの装着に成功。イーヴル・ストライカーと名乗って空飛ぶスケボーにまたがり、マニラを破壊する。中央郵便局が崩れるシーンはそこそこオッといわせるが、さすがにＬＲＴの橋を吹っ飛ばせるところはオモチャっぽいかな。しかもライアンに復讐の際に、事故からジョアンヌ・サラザール演じる自分の恋人を殺してしまい、この犯人が濡れ衣でラスティクマンに…　と死を持ちこむあたあたりはファンタジーとしていただけない。
　ミシェルが「ラスティクマンは民衆の敵だ」と報道し、警察も逮捕に乗りだしたからヴィクは活動を控えるも、マイケルが「ラスティクマンはヒーローだ」と証明。ミシェルがわびて、ラスティクマンVSイーヴル・ストライカーのクライマックスを迎えるわけである。
　公園でのバトルはバックにみえている道路で普通に車が走っていたり、人が歩いているから、オイオイ、ちょっとヘンじゃないか。もっと細部まで配慮してほしいもの。
　遊園地に舞台を移しても周囲の人の動きに不自然さを残したままなのだが、ウォーター・スライダーでの対決ではジェット・コースターのように滑り落ちる瞬間に、殴り合っていた二人が万歳のポーズでウヒャーッ、なんてのは思わず爆笑。氷の部屋へ入って、ラスティクマンが硬直の危機へ。そういや前に食堂でアイスをこぼされてヴィクが金縛り状態に陥り、ゴムの性質から寒さに弱いというウィーク・ポイントを示していた。そのときは病院のベッドで看護婦がくっついて添い寝し、抱いて温めたのだが、セックスボン・ダンサーズのジョパイが看護婦に扮している。
　最後はお互いがヴィクとジェフリーだったとの正体に気づき、円満解決。
　まあ、あきずに楽しめて、まずまずじゃないか。この手のくだらなさが個人的に大好きでもあるし…
　次第点だ。
　欲をいえばドニータとキスしたら口がビヨーンと伸びて「あなたがラスティクマンだったの」とわかるラストで、場所がプール・サイド。女性たちが泳いでいるだけに、ドニータも水着になってほしかった。