02年：カリナナン・シネワークス／シーズ・オブ・ジオン・フィルムズ／クラシック・フィルムズ
監督：ウィリアム・Ｇ・マヨ
主演：リト・ラピッド
ジョイス・ヒメネス
ジェリク・ラヴァル
マーク・ラピッド
ロイ・ヴィンゾン
ヴィク・ヴァルガス
ダンテ・リヴェロ
ジェス・ラピッド
グロリア・セヴィーリア
ダイナー・ドミンゲス
イアン・ヴェネラション
フリオ・ディアス
ボブ・ソレル
マリア・イザベル・ロペス
リト・マルコス
レナート・デル・プラド
アルマ・ソリアノ
小学生のとき、マジェラン（当時はマゼランといった）はエライ人だと思ってた。教室に貼りつけてある歴史年表には世界一周の航海が偉業のように書かれていたし、教師も地球が丸いことを実証した人みたいに教えてくれた。中学生になると、マジェラン本人はフィリピンの原住民に殺されたと知って、未開の土人（明らかに差別用語）だからな、と感じたものだ。まさに六十年代後半から七十年代前半の学校教育とは、こんな程度のレヴェル。おかげでマジェランのほうがはるかに野蛮であり、西洋人の残虐性に気がつくまでに、それから二十年近い年月をようしてしまった。
戦前の教育を受けたり、マッカーサー統治下の時代に十代を送った世代が教師だったのだから、彼らが意識しないままに偏見を煽っていたのは、しょうがないかもしれない。はたして現在では、どんな評価に扱っているのだろうか。
なんてことはさておき、フィリピン最初の英雄となったラプラプだが、さすがにはっきりした実像がわからないのでは… と推測する。ほとんど資料など残っていないかもれないし、おそらくこの史劇の内容も、九割近くはイマジネーションに頼って構成されたんじゃないか。でも大砲を積んだマジェランの船を、たとえ張りぼてでも建造してみせただけで相当な意欲であり、当時のスペインのコスチュームなども再現し、フィリピン映画にあってズバ抜けたスケールの大きさを誇っているのは確か。オール・スター・キャストだけでなく、かなりのエキストラを動員した合戦シーンにしても、あの頃の人口から考えれば、ほぼこんな感じだったんじゃないかという、実際と同じだけの規模のものを繰り広げている。
正直なところ、制作費も通常の何倍に違いないが、ウィリアム・Ｇ・マヨ、クラスの監督（失礼）に勝負をかけるだけの大作をまかせている姿勢に驚く。しかも目をみはるようなうまさはないものの、二時間十五分にも及ぶ長尺を、退屈させずに引っぱりきっているから、さすがではないか。
とりあえずは素直に評価したい演出だ。
前半はリト・ラピッド演じるラプラプがリーダーの部族と、となりのヴィク・ヴァルガスが酋長を演じ、ロイ・ヴィンゾンが戦士のトップを演じる部族との対立がメイン。リリア・クンタパイ演じる巫女のような呪い師が登場したり、薬草を調合したり、その暮らしぶりや衣装のデザインを含めてすごく興味深いのも、はたして史実かどうかの確証がない。リトの村の娘たちをロイがさらって中国の奴隷商人に売り、リトが取り返すエピソードは、いかにもあっただろうなとのイメージながら、歴史家に真相をたずねてみたいところ。それでもレナート・デル・プラド演じるレイプした男を、辱めの絶望から自殺した本人に代わってクリス・ダルスとルシタ・ソリアノ演じる両親に処刑させたり、アルマ・ソリアノ演じるそのレイプの犠牲者を白い布に巻いてイカダに乗せ、沖で遺体を焼く葬式など、視覚的な面白さをけっこう表出している。とくにジョイス・ヒメネス演じるプリンセスとリトとの結婚式は、ケチャックに近い踊りがでてきたり、ポリネシアン文化を参考にしたな、とうなずかせる内容になっている。
ダンテ・リヴェロ演じるマジェランが到着してからは、ヴィクの部族を説得し、キリスト教の洗礼をほどこしていくあたりが、さもありなん。現地宗教の偶像を倒すと、大きな十字架をたてて村民たちがひざまずく描写や、クロイド・ロビンソン演じるマジェラン隊に同行した司祭がサント・ニーニョを贈るさまを伝える。
まあ、１５２１年３月20日に来て、31日に上陸したマジェランが、ラプラプによって退治されるのが４月27日だから、一ヶ月ちょい滞在の事実を初めて知って、けっこう勉強になった。
というか、それまで不勉強だっただけだが…
鉄砲隊を海岸に配置させるなど、具体的なマジェランの戦術は、一応研究したあとをうかがわせて説得力がある。エピローグのリトが罠にかかって第三の部族に処刑され、ちょうどそのときジョイスがあとつぎの男児を生むのは、いかにもフィクションなものの、まずはいいんじゃないか。同じような実在の英雄を主人公とする史劇では、なるほどアンソニー・マンの『エル・シド』の域には達しなかったかもしれないが、ロバート・ロッセンの『アレキサンダー大王』やヘンリー・レヴィンの『ジンギス・カン』などよりははるかに上だといえよう。
ところでジョイスとアルマが出演しているから、しっかりセクシーな要素を盛りこんでいる点が実に嬉しい。ジョイスは浅瀬で下女たちから花びらをかけられる結婚の準備のシーンで、やや半ケツまでみえた上半身ハダカのうしろ姿がそそる。すぐに横チチがのぞくと、乳首がみえるか、みえないかの寸前のところで視線が釘づけに。リトとの初夜では、腰に手がいくも、肝心のパーツがみえないままなのが残念。
アルマは川で水浴びのシーンで、ほかの友人たちとともにオッパイを丸だし。強姦されるときもオッパイをプラプラで、こりゃあ、たまらんぞー。
あとリトに薬草の湿布を貼る二人の村娘が、女優名はわからないものの、ともにオッパイをモロだしにしていて、これまたよだれタラタラものだった。
