ＬＡＫＡＳ　ＡＴ　ＰＡＧ−ＩＢＩＧ
（力と愛）
　
01年：ＥＤＬプロダクションズ／ドカンプ・プロダクションズ
監督：デオ・Ｊ・ファハルド・ジュニア
主演：マージー・ディゾン
　　　 デイジー・レイエス
　　　 ロイ・ロドリゴ
　　　 パトリック・グスマン
　　 　レオ・ラバゴ
　　 　アルマ・ソリアノ
　　　 クリスティナ・カステン
　　　 コンラッド・ポー
　　　 ボーイ・ロケ
　ボールド・ムーヴィーと呼ぶジャンルはフィリピン映画の特徴の一つであり、個人的にも大好きで、ここでも何本も取りあげているが、セクシーな要素の強い映画という意味だろうか。 ボールド・スターはいわゆるヌードをセールス・ポイントにおく女優だが、日本のＡＶモデルのようにセックスするだけの売春婦の変形とは異なるし、ヌードといってもオマンコまでみせるわけじゃない。ドラマの中でちゃんと演技ができないといけないから、あくまで女優である。
　だからこそ現在一番人気のアスンタ・デ・ロッシにしても、女性からはあこがれの目が集まり、若年層にも支持があり、国民的なアイドルぶりを誇っている。個人的にもっとも大好きなアラ・ミナなど、映画ではボールドながら、ＴＶでは子ども番組のヒロインを演じていて、セックスしか能のないモデルばかりの日本とはかなり異なっている。あえていえばかつての美保純や、最近の飯島愛が似たパターンかもしれない。
　これはボールド女優を主人公とる作品で、ちょっと異様な内容にあきれる、というのが正直な感想。アルマ・ソリアノ演じるナンバー・ワンを維持してきたものの、落ち目のボールド女優がスリップを濡らし、スケスケで撮影の光景から始まる。それを横でマージー・ディゾン演じる現在のナンバー・ワンが、こバカにみている。このあと二つの記者会見がダブり、セックス体験を告白のマージーと、清純なイメージのデイジー・レイエス演じる一般女優が比較される。デイジーはボールドへ出演を拒み、アクションやロマンスに出演したがっているが、デイジーの台頭を危惧のマージーがこれをジャマしようとする内容。
　アラ・ミナやジョイス・ヒメネスがミレニアム・ゴッテスやセクシー・クィーンと呼ばれたのはほんのちょっと前だが、人気はアスンタ・デ・ロッシやリカ・ペラレホに移り、さらにはマウイ・テーラーが追いかけてきているから、確かにトップの地位をまもるのは至難の技かもしれない。でもアラのように才能のある者はちゃんとある程度のところから脱皮していくわけで、マージーが演じる人物のような相手を暴力でやっつける依頼をするなどの違法行為に走る者は、いかにもフィクションだろう。またこれ以上ないほどの性格の悪い女にキャラクタライズされ、女優のワガママは当然のようにあるにしても、度を越えて正常な部分が欠如と思わせるのは、カリカチュアだとしても類型的といえそうだ。
　物語はマージーがスティール撮影で地方へでかけている間にデイジーへ危機が迫り、なんとか無事に回避され、これが原因で反対にデイジーが主役の座を射とめる。
　また構成のかなりの部分をしめるのは、撮影の帰りに車のエンコに合い、修理の間に泊めてもらった田園の中の一軒家で、マージーがレオ・ラバゴ演じるそこの夫を誘惑し、家族に波瀾を巻き起こす部分になる。パトリック・グスマン演じるマージーの運転手兼ボディー・ガードもベリンダ・リオス演じる一家と一緒に住んでいる従兄弟とできてしまい、ロマンスが華盛り。マージーたちが去ったあとにレオがクリスティナ・カステン演じる妻とよりを戻して「相手はしょせんボールド女優だから」というのに加え、酔った男たちにマージーが「ヤラせろ」とからまれてボーイ・ロケ演じるタフ・ガイに助けられるエピソードなど、やっぱりボールド女優はオナペットにすぎない、といったとらえかたがうかがえて、興味深いことは事実。
　もっとも、この作品の最大の不満は、主役である新人のマージーがブスな点にとどめを刺す。性格のどうしょうもなさは実によく表現しているから、演技的には合格なのだが、納得のいく容姿でないとストーリーが成立しないんじゃないかと思えてくる。「美人ね」とのセリフがあるものの、どこがじゃ、と感じさせるあたりがつらい。もちろん海岸で撮影のときは、スルスルッと服を脱ぐと、パンティーをはいていなくて、いきなり全裸。それでパトリック相手に波うちぎわでたわむれるし、砂浜をゴロゴロ転がる姿は興奮。マージーがすっぽんぽんなのに、パトリックが海パンをはいているのは、みたくないも不公平だと思うし、濡れた全身に砂がつくのは個人的に美的センスの範囲外だが、たくみに陰毛を露出の部分だけ編集でカットされていることに残念だと悔しがるため、悩殺をうけた事実に間違いない。
　でも冷静にみてみれば、同行のトリシア・エマヌエル演じるスタッフがスリップ姿を濡らして乳首のポッチとお尻をみえたも同然状態に歩く光景のほうに引かれる。
　レオの家へ泊まっているときは、池のある原っぱで、やはり素っ裸になると、レオに抱かれるアウトドアのセックス・シーンでのマージーが大胆なものの、牛のなく風景が妙にリアルなため、実際に同様のシチューションでセックスしそうになったときの個人的経験の不快感が蘇ったせいもあり、またもうっとりさせてくれない。草原をバックにスケスケの下着で踊るレオのイメージの中におけるマージーが輝いていないのは、いやはや困ったマイナスだ。
　他にクリスティナはレオとのセックスでＴバック下着のアップがあるながら、ブラをはずして乳首がみえる寸前でカットが肩透かし。それにピンボケに近いショットを含み、オイオイそれは基本だろう、ちゃんと撮影しろよ、とあきれる要素も重なって、ここも及第点に達しない。
　トリシアはパトリックにシャワーを浴びているときに抱かれ、オッパイ丸だしの全裸に拍手をおくるも、ブスすぎるためにドキドキ感がない。
　ようは好みのタイプが不在だとセクシーなシーンもイマイチに終わる典型。
　美人の部類に入るのはデイジーとアルマだが、相当に期待したデイジーに色っぽい表現の皆無なことが、とくにダメなポイントと指摘したい。アルマが撮影のシーンにみせるキュートな乳首がスケているスリップ姿と、プールでマージーとケンカの際の、水からあがる濡れてピッタリとお尻に貼りついた黄色いビキニが鼻血ものくらいだから、スタッフに申し訳ないがハズれ映画だとの判断に落ち着く。
　再びエンコで奇妙なＳＭパーティーを開く家にまぎれこみ、仮面とハイレグのボンデージ・ファッションで踊る女がいるのはオッといわせてくれるながら、マージーが悪魔の犠牲として首を切られるラストに至るや、ただあっけにとられるのみ。
　マジかよー、といった感想しか残らない。
　まあボールド・ムーヴィーだが、趣味に合わなかった作品、というのが個人的な結論である。