ＫＵＹＡ
（兄貴）
　
04年：リーガル・エンターテインメント
監督：ドミニク・サパタ
主演：リチャード・グチェレス
　　　 コギー・ドミンゴ
　　　 ダニロ・バリオス
　　　 ジェームズ・ブランコ
　　　 オヨ・ボーイ・ソット
　　　 ライリー・ヴァレロソ
　　　 オーブリー・マイルス
　　　 マキシン・マガロナ
　　　 シャイナ・オルタレサ
　　　 エンジェル・ロクシン
　ロクに勉強もせずにガキどもが騒ぐだけの青春映画というのは、とかくみていて不快なものだ。
　リチャード・グチェレス、ジェームズ・ブランコ、オヨ・ボーイ・ソット、ライリー・ヴァレロソ、ダニロ・バリオス演じるハイ・ティーンの五人組が主人公で、あとの四人を「兄貴」としたう一番年下のダニロが語り手。いつもヴィデオ・カメラで自分たちの行動を撮影のうえ、家で編集していて、映画監督を夢みている。これにアメリカからコギー・ドミンゴ演じるリチャードの従兄弟が帰国で加わり、絶えずグループにこだわる姿勢を批判したため、リーダー格のリチャードと対立が生じ、いったん亀裂が走ったりする。当然ながら恋はつきもので、それぞれリチャード、オヨ、ジェームズ、ライリーのシャイナ・オルタレサ、オーブリー・マイルス、マキシン・マガロナ、エンジェル・ロクシン演じるギャルとの交際と、ダニロのアリシア・メーヤー演じる大人の女性への初恋的あこがれが語られる。ケンカで別れるも復活の中で、オーブリーともめたオヨが腹いせに妹のマキシンに迫ったり、それで姉のオーブリーがマキシンのボーイ・フレンドであるジェームズを誘惑したり、シャイナとエンジェルが仲たがいで男たちを困らせたり、妊娠問題やドラッグへの警告がでてくるも、結局は元の鞘へおさまるわけで、底の浅いドラマなのはお子さまランチならぬ、ガキ向けハンバーグ定食程度の調理法だからだろう。
　映画館でのデートや、流れ星への願いごと、家の玄関でラヴ・ソングを歌う告白、留置体験といったおなじみの要素を巧みに盛りこみ、ホント、惣菜を適度に置いた定食か。最後はドラッグで倒れた兄のオヨを救おうとダニロが病院へ車を飛ばしため交通事故に遭遇し、亡くなるわけで、人の死によってドラマティックさを演出するフィリピン映画のパターンよとあきれ、味つけに工夫がほしいなあ。
　またライリーが勤労学生で、ファースト・フードの店員やベビー・シッターのバイトがでてくるとはいえ、医者の息子のリチャードなど、いわゆる恵まれた環境にあるものたちの物語だけに、ちょっとは勉強もしろよ、と怒鳴りたくなる。
　フィリピンの若者は真剣にアホなのか、なんて疑問が起きるくらい。
　もちろん、ここに描かれているようなノータリンばかりじゃないのはちゃんと知ってますから、念のため。
　ジャッキー・カスティリエホス演じるリチャードの母がリチャード・クアン演じるオヨとダニロの父と不倫中で、現場をリチャードが目撃し、チンゴイ・アロンソ演じる父へふがいなさの不満をぶつけたり、ジョエル・トーレ演じるシャイナの父が同性愛者でチェスにばかり興じていて、いささか軽薄だったり、ロイ・アルヴァレスとメル・キムラ演じるジェームズの両親がやたら思春期の息子に恋愛を強制したり、オレステス・オヘダとピンキー・アマドール演じるオーブリーとマキシンの両親が娘たちの朝帰りなどに無関心だったり、家庭のトラブルやヘンテコさが描かれるも、中流のぜい沢な悩みにしか感じられない。
　個人的な好みでいうと、女の子たちの仲間によるセクシーな青春ものなら、いくら内容がくだらなくても大歓迎なのだが、しっかり十代という人生のひとコマにおける苦楽の経験による成長をみつめるならともかく、しょーもないガキどもの単細胞な悩みを表面的につきけられても、ヘドがでるばかり。
　ムカムカの残る作品だ。
　それでもオーブリーの出演に注目なのに、ターゲットの年齢層が低い映画だからヌードにならず、さらに落胆を深くする。脱がないと何の魅力もない女優だし、普通ならディスコでやけになって踊ったり、ジェームズとカー・セックスするシーンでオッパイをポロッと露出するはずだが、それは我慢するにしても、みんなでビーチへ行く最高のはずのエピソードで水着にすらならないのは、いくらなんでもサーヴィス不足すぎる。エンジェルとマキシンも水着を披露せず、じゃあビーチの設定が無駄だぞ、と怒りプンプン。ひとりシャイナがパンティーだけ水着姿で拍手ながら、浅瀬で水をかけ合うときはセパレーツのホット・パンツ型に変わって誘惑度をさげ、リチャードと素潜りする一連の水中撮影のショットではリチャードばかり映っていてシャイナがいないから、オイオイ、やめてくれ。ガキ・タレントによる女の子向けだから、しょうがないのか。シャイナは小さなバストがそそるし、ローライズぎみの白いピタパンからスリムなプロポーションをうかがわせ、一応は視線を奪ってくれる。エンジェルはボディコン・ミニでハッと息を飲む瞬間があるも、ベタベタの厚化粧がイメージ・ダウン。せっかくの美人なのに…　マキシンは色っぽさと無縁。
　ウハウハ興奮を呼ぶのはアリシアだけといえる。ダニロが塀をよじ登って自宅のプールで泳いでいるのを盗撮するシーンで、アリシアは水の中からプール・サイドへとあがるとき、みごとなハイレグ・ビキニ。濡れたボディーの誘惑がたまらない。ダニロがバーでみかけて近寄り、キスを奪うシーンは胸元の大胆に切れたドレスが豊満なオッパイを包んでいて、五つ星レストランの最高級ディナーのようにおいしそう。
　アリシアの出演によるポイント・アップが落第点から救ったようだ。
　やっぱり映画は女優ね。