（予感）
05年：カナリー・フィルムズ
監督：ホセ・ハヴィエール・レイエス
主演：リカ・ペラレホ
マーヴィン・アグスティン
アレッサンドラ・デ・ロッシ
ライアン・アゴンシーリオ
リザ・ロレナ
アンドレア・デル・ロサリオ
アナ・カプリ
ジェームズ・ブランコ
ビン・ロイサガ
ジョン・ウェイン・セース
サイコ・サスペンスといえるだろう。
ＯＬのエリカ（リカ・ペラレホ）が占いで大凶を告げられ、気分を害していると、恋人のカルロ（ライアン・アゴンシーリオ）の浮気が発覚する。また妊娠中の女性上司ロウェナ（ビン・ロイサガ）にはヒステリックないじめをうける。カルロを避けて逃げたとき、近くにいたレムエル（マーヴィン・アゴスティン）が隠してくれる。それからレムエルと親しくなるも、実はレムエルがじっと自分のことを遠目にずっと観察していた事実を知らない。エリカがロウェナへの不満を相談すると、ロウェナが巻きぞえをくったロバート（ジョージ・リム）とともに殺される。
犯行の直前にロウェナが犯人に話しかけていて、関係者のごとくみせる手法でミステリー・タッチを加えるも、とくに推理ものを意図したわけじゃないようだ。この手の作品の場合、どうしてもネタばらしになるので書きづらく、まだみていない人には先を読んでほしくないとの前置きをして、最後にまでふれてしまえば、明らかにホセ・ハヴィエール・レイエスの演出はレムエルに異常性を含ませている。病的にネクラなキャラででてきて、どこか演技づけから『サイコ』を連想するが、途中で本当に『サイコ』に違いないぞとの予想のつくのがつらい。
叔母のグアダ（リザ・ロレナ）にレムエルが追いだされるシーンが冒頭にきて、そのあともグアダがうるさくレムエルのプライヴェートをしかるシチュエーションがはさまれるので、あれっ、依然同居してるの、としばらくは疑問のままに進むが、すぐにグアダはレムエルの幻想にしかいないと容易に察せられる。マザコンの『サイコ』と異なり、アンティコンなのがフィリピンふうかもしれない。
レムエルを酔わせてセックスを迫り、拒まれたので「オカマ」とののしる同僚のサンドラ（アンドレア・デル・ロサリオ）が現われ、カルロの浮気の証拠はサンドラにからまれたときのものとわかり、エリカがカルロと寄りを戻す。しつこいレムエルにエリカがつめたくなると、強引にレムエルがエリカの家へ押しかけたりのあと、今度はサンドラが殺される。さらにエリカの親友のマエン（アレッサンドラ・デ・ロッシ）を誘いだし、監禁のうえに殺害。マエンを探すエリカは、心配で訪ねてきたレムエルの家族のサルヴェ（ユージン・ドミンゴ）からグアダは事故で亡くなっていると聞き、観客へ真相がバラされるのだが、やっぱりといった感じで意外性が乏しい。
細部にもおかしな点がみられ、エリカとマエンが友人のＲＪ（ジェームズ・ブランコ）と三人でタロット・カードによる運勢をみてもらうとき、不吉な絵のカードばかりでて不安をあおるも、多少ともタロットの読みかたを理解しているものには、それっていい加減でしょとわかってしまう。レムエルの家へエリカがきた際にグアダの声を耳にしたような印象を与えるのも説明がつかない。ましていくらカルロのことをネタに使われたとはいえ、グアダの死を知ったあとにエリカがレムエルの家へ再び足を踏み入れる構成はどんなものか。
エリカのもうひとりの親友アーミー（アナ・カプリ）はうまくドラマにかんでいない。
でもさすがはホセだけあって評価すべきポイントも多く、レムエルが喫茶店で出会った女性のリナ（パメラ・ニエヴァ）が登場し、エリカにあげた子犬を返されてリナにわたそうとするも、うまくいかず、子犬の死体をサルヴェがみつけるエピソードの挿入が本筋への引きつけに活用されるなら、少年時代のレムエル（ジョン・ウェイン・セース）を風呂に入れてグアダが身体を石鹸で洗ってあげる記憶に、エリカの顔の映った鏡が割れる映像をだぶらせる表現が映像センスをうかがわせる。
またレムエルがいやがらせの無言電話をかける前にシムを入れかえていて、これだからプリペイド式は犯罪に利用可能なのよと妙に納得がいく。
もっともアレッサンドラ、アナ、アンドレアとセクシーな女優がでているのに色っぽいシチュエーションを欠くのは残念だし、雑誌できわどいビキニ写真を発表しているジェイミー・ホアキンがカルロのガール・フレンドらしき女性として顔をだすも、いささかブスっぽいのがわかってマイナスながら、リカは着衣でもぞくぞくっとそそってくる。ほとんどをピタパンのファッションで通し、とくにラストのレムエルとの葛藤では階段をあがるお尻のアップに目が釘づけ。
リカ・ファンにすればハラハラドキドキのスリルに富んだクライマックスよりも、リカのスタイルのよさを堪能できたのに拍手をおくりたい。
