ＫＵＲＡＰ
（まばたき）
　
08年：シランサン・ピクチャーズ
監督：ロナルド・ベルトゥビン
主演：シェルウィン・アルドニェス
　　　 ジョジット・ロレンソ
　　　 アシュリー・レイン・アルカ
　キアポを舞台にとる裏社会劇になり、題材的には『ＢＵＬＡＫＬＡＫ　ＮＧ　ＭＡＹＮＩＬＡ』に通じるが、ずっと小品で、マイナーなグループの話なので現実っぽい。ただし内容に深みを欠くのは、70分ほどの長さにもよるだろう。
　また『ＳＩＫＩＬ』のロナルド・Ｍ・ベルトゥビンの第二作にあたり、今回もホモの要素がくわわっている。でも個人的には、ラジャ・モンテロの出演に期待がかかる。
　主人公のアンベット（シェルウィン・アルドニェス）はキアポでひったくり、置き引き、シャブの売買、ホモ売春、男娼などをおこなう犯罪者で、盗品を売りさばく仲間がいる。小学生くらいの妹のルチー（アシュリー・レイン・アルカ）が視力を低下させ、メガネを買うためにカネを盗む。いっぽう一眼レフとヴィデオ・カメラの中古を購入の男がいて、自称ジャーナリストのマーロン（ジョジット・ロレンソ）。たまたま街で撮ったひったくり映像と、カインデリャで撮った男が同一だったことから、編集でアンベットが犯人と気がつく。マスコミに売るネタにかっこうとマーロンがアンベットに取材依頼し、最初は断わっていたアンベットだが、手術しないとルチーが失明の危機にあり、その費用のためにとうける。メガネ屋（ヘルミー・コンセプション）でのやりとりを再現したり、マーロンがアンベットの日常をカメラで追うも、一連の映像が証拠となって盗品売買や証明書偽造の実態がバレ、仲間が二名、逮捕される。アンベットはマーロンのカメラを盗もうとするが、裏切り者だとほかの仲間から私刑にあう。
　興味をそそるのは、意外と単純な裏市場の実態で、よく中古ショップをみかけるキアポだが、携帯電話にはけっこう盗品があるのかと思えてくる。偽証明書の作成方法は、かなり具体的に描かれる。パシグ川に浮かぶボロ船にたむろするようすもおもしろく、うしろでフェリー・バスが通過していくのがみえている。
　もっともマーロンのほうは人物像に突っこみがたらないため、アンベットが顧客の女性のロリエリン（ラジャ・モンテロ）とセックスする映像を編集しながらオナニーにふけるなど、さほど必要性が生じない。アンベットとマーロンがホモ・セックスになり、そのカラミをヴィデオ・カメラが撮影しているなども、ルチーが目撃でショックをうけるよりは、ラストでルチーがアンベットとマーロンの海賊版ホモＤＶＤを売っている皮肉へもっていくための強引さに思えてくる。
　マーロンのヴィデオ・カメラのレンズ越しになるショットをモロクロームで表現で画面にメリハリをつけるが、正確にすべてがマーロンのカメラ人称とは厳密に規定できず、適当な部分も判断されて、イマイチ知的になりきれない。アンベットとルチーが食事のシーンなど、カメラの影が映りこむミスもあり、ロナルド・Ｍ・ベルトゥビンにすれば、ちょっと『ＳＩＫＩＬ』より後退したようだ。
　ホモの表現は勘弁してほしいながら、こちらもややマイルド化され、廃墟のビルでアンベットの仲間たちが水浴びしたり、アンベットが口のきけない若者のピポイ（リコ・サラサール）と同性愛セックスや、アンベットとマーロンの同性愛セックスでお尻丸だしの全裸が気持ち悪く、四つんばいのかっこうのリアルさがゲーッなれど、チンポはモロになっていない。
　さすがに拍手喝采はラジャ・モンテロの脱ぎっぷりで、一回目の非常階段におけるアンベットとのセックスでオッパイを堂々に揺らせ、二度目のベッドでのセックスはアンベットのお尻のほうが目立っていたが、正常位でオッパイをプラプラのあと、全裸のまま座ってシャツを着るときは、なにも隠さないオッパイを全開。しかも驚くべきかな、起きあがるショットはモノクロームだけど、オマンコがチラついている。まさかのラジャのオマンコみせに興奮がもりあがった次第。
　なお、スクリプトライターがロムアルド・ アヴェリアノサで、脚本のクレジットが落ちるので、わりと自由なアドリブの台詞まわしで撮影したと推測される。音楽はオリジナルの担当にシージェー・ハヴィエール、追加スコアーにマイク・メリアとあるが、けっこう規制曲を使っているようだ。

※　この作品は『まばたき』の題名で“第21回東京国際映画祭／アジアの風”（2008年開催）にて上映された。