（彼女が呼びよせたのがケダモノだったら）
84年：ＧＰＳフィルムズ・プロダクション
監督：ニック・ロマノ
主演：ジェス・ラピッド・ジュニア
チャット・シラヤン
ジョージ・エストレガン
ルシタ・ソリアノ
トニー・カレオン
ジュニー・ガンボア
アーノルド・メンドーサ
ヒーローとして登場した主人公がアンチ・ヒーローに変わるおもしろさを狙った作品。
田舎の漁村を舞台にとり、海岸ものでおなじみの知恵遅れの大人がうろつく。ジョージ・エストレガン演じるおつむの弱い男をアーノルド・メンドーサなどが演じるグループがいじめ、ジェス・ラピッド・ジュニア演じるタフ・ガイが助ける。ジョージがてんかんを起こすのが伏線。となりにはベレン・ヴェラスコとヴィルマ・ヴィトゥグ演じる母娘が住み、ヴィルマがジェスにホレている。マニラからジュニー・ガンボア演じる作家がチャット・シラヤン演じる妻を連れ、ベレン経営のコテージへ滞在にきてドラマが始まる。ジュニーの車にピストルがおいてあるのも伏線。ジェスがチャットにみとれ、回想が入る。かつてジェスにはチャットそっくりの恋人がいたが、たまたま彼女の兄とケンカになって、過失で事故死させる。裁判で無罪をえるも、恋人が兄殺しを責め、そのショックで母が心臓発作により亡くなる、という過去をもっている。海岸でビキニのチャットをアーノルドたちが襲ったのをジェスが撃退。いったんジュニーが一人でマニラへ戻り、その間に今度はジェスがチャットを襲って、ジョージが目撃。ジュニーが帰ってチャットが「ケダモノだ」と訴えたので抗議にいくや、ひ弱なインテリのためにあっさりのされる。ジョージもチャットに迫って抵抗中にてんかんを起こし、怖くなったチャットとジュニーが車で去ろうとすると、ジェスが立ちふさがる。ジュニーがひこうとアクセルを踏むとジェスが屋根にしがみつき、フロント・ガラスを割ってジュニーを引きずりだし、ピストルで撃たれるも、反対に奪ってジュニーを殺す。嫌がるチャットを殴ってかつぎ、バンカーで川をさかのぼり、山奥へまぎれこむ。翌日、ジュニーの死体がみつかって、警察にベレンがジェスの仕業だろうと告げる。肩をやられたジェスは自分で焼いたナイフを使って弾をとりだすが、だんだん衰弱していく。「私はあなたの恋人じゃない」と説得をくり返せど、いっさい無駄とわかったチャットが逃げるときに滝から池へ落ち、ジェスに救われる。悪寒でジェスがブルブル震えるのを、逆にチャットが看病する。後悔を感じたジェスがピストルをわたし「殺せ」と頼むも、チャットには撃てない。
エルニー・カスリーリオの脚本は無難にまとめているが、平均レヴェルにとどまる。フィリピン映画にしてはヒーローのイメージ転換にユニークさがあるかもしれないが、アメリカ映画などではちょくちょくみるもの。ニック・ロマノの演出はジェスからケダモノのごとき迫力を生まなかった点に不満が残り、これはジェスのせいでもあるだろう。風俗的には夜間漁の風景、日曜礼拝後の教会の外観に興味がわく。ジェスが恋人の兄に勝つ水泳大会のＢＧＭがピンクレディの“モンスター”のインストゥルメンタルなのは、さすがに日本人にはシラける。
なんといっても嬉しいのはチャットのセクシーさに尽きる。ビーチへやってきてタンク・トップのシャツにハミケツぎみのランニング短パンから生脚が伸びて誘惑光線を放ち、お尻の突きだしポーズをとる。着がえでスリップになり、ジュニーとのセックスはアップの積みかさねで肝心の部分を隠し、ジェスのレイプはワンピースにパンチラのみ。寒がるジェスにシャツを脱いでかけるときにまたスリップをみせ、池で水浴びはスリップが濡れるのにスケないため、乳首がわからないとイマイチな印象を含むが、二度にわたるビキニ水着が素晴らしい。三角ブラにハイレグっぽいパンティーで泳ぎ、濡れてあがるとガウンをはおり、ブラを抜きとる。アーノルドたちが三人で手ごめにかかってオッパイのポロリを予感したが、それはなかったものの、浅瀬に投げ倒されてガウンが全身に貼りつき、とくに下半身のラインがたまらない。ジュニーと寝転ぶ砂浜ではオイルをぬったのか、テカテカと光る素肌が興奮を誘う。海へ歩いていく姿にも悩殺をうける。
あとヴィルマもやってくれて、個人的には元ミス・フィリピンのチャットより美人だと思うし、ジェスの部屋へ愛を確かめにくるシーンでパンティー一枚の裸になり、乳首までバッチリでごちそうさま。
チャットとヴィルマの魅力が、ほぼすべてだったようだ。
なおジェスの母親役でルシタ・ソリアノ、回想における彼女の父親役にトニー・カレオンが顔をだしている。
※ ２００６年４月、チャット・シラヤンが病死。とくにときめいた女優ではなかったが、自分と同世代の、しかもじゃっかん年下の女性が亡くなると、やはりショックをおぼえた。
