ＫＵＮＧ　ＡＫＯ　ＮＡ　ＬＡＮＧ　ＳＡＮＡ
（望まれるのが私なら）
　
03年：スター・シネマ・プロダクションズ
監督：ホセ・ハヴィエール・レイエス
出演：シャーロン・コネータ
　　　 アガ・ムーラック
　　 　ドミニク・オチョア
　　　 ジェニファー・セヴィーリア
　　　 シンタロ・ヴァルデス
　　　 ミッキー・フェリオルス
　　　 クリスティン・ベルソラ
　　　 チャット・シラヤン・バイロン
　　　 ブッツ・アキノ
　　　 パトリック・グスマン
　　　 ゲーブ・メルカド
　　　 レジー・カーリー
　シャーロン・コネータとアガ・ムーラックの共演によるラヴ・ロマンスで、スター企画にありがちなつまらなさ。ホセ・ハヴィエール・レイエスが無難にまとめ、うまさがあるも、意外性のおもしろさを欠く。
　少し長い間にわたる物語。バルカダという仲間たちの群像をとらえながら、主人公の二人を語る。
　まあ、双方が意識のないままに愛し合い、それに気がつくまでの過程を追うわけで、結果がミエミエのドラマといえる。
　シャーロン演じるエミーとアガ演じるヴィンスはバルカダ同士。友人の連中はヴィンスをエンテンと呼んで親しさを示す。しばらくエミーとヴィンスのそれぞれの恋愛を軸に進む。カレッジの同級生のコンラッド（レジー・カーリー）とつき合うエミーは、コンラッドがエミーのしっかりものの性格に負けて別れを申しでる。雑貨の輸出を始めたエミーは、セブからきた仕事相手のグレグ（パトリック・グスマン）につきめくが、誕生日パーティーへ招かれたときにホモとわかって驚く。ヴィンスはプレーボーイで女性にだらしなく、恋人に結婚を迫られて逃げ、バルカダのクリスチャン（シンタロ・ヴァルデス）の従兄妹で、まだ十七歳のアンジー（エニド・レイエス）と交際も、クリスチャンの怒りを買う。
　これにエミーの親友で、バルカダのジネット（ジェニファー・セヴィーリア）の恋愛がからむ。エミーが後見人になるジネットの赤ん坊の洗礼式では、パーティーで赤ん坊の父親と早くも破綻している。バルカダのヴィッキー（クリスティン・ヴェルソラ）の誕生日パーティーには、トルコ人の恋人を連れてくる。バルカダのノルマン（ラウル・モンテッサ）とメルヴィ（バナウエ・ミクラット）の夫妻は子どもを産み、バルカダのハイメ（ドミニク・オチョア）が結婚で、新婦のマリエル（オリヴィアリン・リチャード）と神父（ジョジット・ロレンソ）の前で契りをかわすのに、ヴィンスが幸福のイメージをみる。エミーの事業のパートナーであるヴィッキーが妊娠で結婚を決め、夫が仕事を望まないとエミーに辞意を伝えて困らせ、いざ夫のオスカル（ゲーブ・メルカド）に会えば、美人のヴィッキーに不似合いなチビのデブなうえ、生活力も低そうなあたりがコメディー要素。
　エミーのやり手ぶりはヴィッキーと雑貨の輸出を計画し、中国ふうの調度品の工場でヴィッキーに指示や、クリスマス用の燭台の生産などによって、ついに自分の家具店を開くまでにあらわす。兄（ビン・ダヴァオ）が二人の幼い息子をかかえ、義理の姉（ジレット・サンディコ）におカネをあげる甘さに乳母の使用人（カルメ・サンチェス）があきれるも、両親や家族にカネがかかるとなげくジネットを支えつつ、いつまでもジネットがカネの無心で頼るばかりに、あまりの依頼心を批判でケンカ。
　ヴィンスのダメさ加減は遅刻の常習で示し、ジネットの子の洗礼式に始まり、ヴィッキーの誕生日パーティーや、メルヴィーが出産の病院での祝い、ハイメの結婚式、ハイメ夫妻のアメリカ合衆国への出発を見送りと遅れて現われ、たえず「渋滞」と言いわけで、皮肉にたとえれば、いかにもフィリピン人っぽい。アメリカ合衆国で学んだものの仕事につかず、父（ブッツ・アキノ）が「三十歳だろう」と責め、インド料理店でエミーとビジネスの話をすれば、思いつきばかりでエミーがシラける。「土曜日も働くのか」とエミーの仕事重視を理解できず、エミーに開業のチャンスをもらえば書類を持ってくるのに遅刻のうえ、そろえた書類が不備。
　コンラッドと破綻のエミーをなぐさめるヴィンスがポケットベルを読みながらに女好きがわかれば、アンジーを前にエミーが「まだ十七歳よ」と注意も、つき合いに発展のヴィンスを「レイプだ」と非難は、それより年少の娘が恋人のこちとらはどうなるとオイオイオイ。アンジーの十七歳に「若い」と羨望のジネットにハイメが「神に誓って、十七歳のときに処女だったか」と突っこむやりとりがおかしい。実はエミーとヴィンスがひかれ合う事実はビーチ・リゾートの屋外でハイメとマリエルの結婚式でダンスや、ヴィンスを看病のあとに花が届けられ、エミーが喜ぶのににおわせ、花の贈り主は誰だろうと乳母の使用人がギフト・カードをのぞくしぐさがユーモラス。
　ヴィンスが何度目かの新しい恋人のエレイン（ミッキー・フェリオルス）をつくってシチュエーションが動く。エミーがジネットに美容院で相談するほど、今回はなかなかの女性。たまたまエミーの家具店と知らずに客できたコンラッドに妻（サリーヌ・カルボネル）と娘（アンジェリカ・フェレル）がいると知るや、落ちこむエミーのなぐさめをヴィンスが優先にエレインが軽い嫉妬。ヴィンスの父がガンで亡くなり、エミーにすがってヴィンスが泣くのをエレインがみつめ、ジネットの態度をヴィンスにグチりながらも、まだヴィンスへの愛に気がつかないエミーにエレインが「ヴィンスの愛するのはあなただ」と告げる。
　全編にフィリピンのアメリカ合衆国志向がうかがえ、エミーが雑貨の輸出先にのべるほか、ヴィンスの留学やハイメ夫妻の就労に、ヴィンスの母（ロリー・マラ）がアメリカ在住で、別れた夫のガンに帰国で「アメリカに医者がいる」という。ヴィンスが留学の土産にスティーヴン・キングの新刊を買ってきて、エミーがすごく嬉しがる。エレインが去ってヴィンスが再び渡米らしく、エミーがジネットと仲直りでヴィンスと「１９９９年から会っていない」と一緒じゃない状況を示唆も、ヴィンスが遅れて現われてハッピー・エンドを迎える。
　エレインが姿を消す先は香港になる。
　時間の経過は赤ん坊だったジネットの子どもが成長や、エミーの甥たちが大きく育つのにあらわす。二人の甥（ミコ・アイトナ、アドリアン・アルベルト）はエミーに感謝のペンダントを贈ってホロリとさせ、身内が第一のフィリピン気質がにじむ。
　とにかくシャーロンとアガのファンに向けた商業映画と割りきれば平均レヴェルでも、一応は女優の美しさにうっとりできるのが個人的な評価のポイント。ジェニファー・セヴィーリア、ミッキー・フェリオルス、クリスティン・ベルソラの整った美貌に視線を奪われれば、オリヴィアリン・リチャードがまずまず。ヴィンスに結婚を迫るガールフレンド役はシーラ・ヴァルデラマと思うが、ちょっとアンドレア・デル・ロサリオっぽく、クリスチャンのガールフレンド役は洗礼式のほうがサンドラ・ロバンコスでヴィンスとトラブル騒ぎのほうがモナリサ・ベルナルドだろうも、サリーヌ・カルボネルともどもに普通かな。洗礼式におけるハイメのガールフレンド役のタニャ・デル・ロサリオがキュートに輝く。かわいさでぞくぞくはエニド・レイエスになり、十七歳なのに「白ワイン」というパーティーでのお尻にタイトな白パンがそそるうえ、エミーがあきれるＴシャツ一枚のかっこうの脚がセクシー。バルカダが井戸端会議のプール・サイドで奥にお尻を突きだして座るセパレーツ水着の三名は、単なるエキストラ。ヴィンスの姪のチャリは幼いときをピア・ロメロが演じ、父が入院の病室には台詞がなく、チャーミングなポーリン・ルナが魅力を放つ。ヴィンスの伯母役のチャット・シラヤンは上品に老けている。
　シーンごとにバラバラばかりか、同じシーンですら極端に高低差が目だつ録音の悪さがマイナスに拍車をかけ、ヒット狙いの作品でも整音に手抜きなあたりが、マヌケな意味でフィリピンと指摘できる。