ＫＵＭＡＫＡＳＡ…　ＬＵＭＡＬＡＢＡＮ
（受けてたつぜ…　かかってこい）
　
98年：ＡＲＡ　ＴＲＩ−メディア・プロダクション
監督：アマド・アドスアラ、アルヴィン・Ｖ・アルセオ
主演：ロンメル・パディーリア
　　　 マイキー・ヴィリアヌエヴァ
　　　 ラヴリー・リヴェロ
　　　 ジュンキン・オーストリア
　　　 ディンキー・ドゥー
　　　 バンジョー・ロメロ
　　　 ジョジョ・アベリアーナ
　　　 エヴァ・カリニョ・パディーリア
　　　 ジュン・ヒダルゴ
　　　 ジュリー・ヒダルゴ
　　　 ジャニス・ロサノ
　　　 ロエット・パディーリア
　予算は多いに越したことないが、予算の額が決して映画製作の第一の要素ではない。少額なら、少額なりの撮りかたがある。それはアクション映画でも例外でなく、たとえ爆破シーンやドンパチが小さくても、観客の興奮を引っぱることができるはず。ようは安手と思わせないことだ。
　ここに安手のＣ級アクションの典型的にダメな例があるといわざるをえない。
　巻頭、銀行強盗のシーンから入るのはまずまず。ロンメル・パディーリア演じる主人公が、犯人グループの主犯格を撃ち殺す。犯人たちがアジトへ引きあげると、殺されたのがボスの兄弟であったとわかる。怒り心頭のボスは、現場にいた手下を処刑してしまう。
　単細胞なボスに、ありがたくも仲間同士で人数を減らしてくれるという、よく犯罪映画にありがちな常套手段によるバカな展開だと思いながらも、主人公に対してボスが復讐してくるだろうことは、容易に予想がつく。そうなれば、あとに続いくストーリーにはパターンがあると考えるものだ。
　ところが本作では、悪い方向へ予想を裏切ってくれる。
　主人公は女遊びが大好きで、しばらくその女性遍歴が描かれる。プールで会ったり、スーパーで一緒にショッピングしたり、ベッド・インしたり。これらの相手役をエヴァ・エストレラ、イングリッド・ロドリゲス、クリスマ・ティクマン、パトリシア・ペレスたちがつとめ、正直なところだれがだれなのか、よくわからない。それにみるベきシーンもまったくない。ただ一人、プールからスケスケ下着のパンティーをお尻にピッタリ貼りつかせてあがってくる女性が、そのあと乳房をあらわにセックス・シーンを繰り広げ、ウハウハに嬉しいも、どこかのストリップ・バーから連れてきたようなあか抜けない容貌なので、さっぱり興奮をくれない。
　それに主人公がこんな呆れるようなパルパロ男では、共感が起きないというもの。女性ファンなど、どう思うのだろうか。ラヴリー・リヴェロ演じる女性が、彼を責めてビンタをくらわせるのが納得の処置。ラヴリーは目鼻立ちがくっきりの美形だけに、ああ、もったいない。
　もっとも本命はちゃんといて、マイキー・ヴィリアヌエヴァ扮するアメリカ育ちの娘。具の大きな濃い容貌で、確かに魅力的である。みごとに均整のとれたプロポーションをハイレグ・ビキニでたっぷり堪能させてくれるし、プール・サイドで野郎どもにからまれ、水着でまわし蹴りを演じてみせる。はっきりいってマイキーがいなかったら、この映画にはまったくみるべき点がないと断言したいほど。彼女のために窓の下でギターを弾きながら歌うという、フィリピンでおなじみの口説きかたがでてくるのも興味深い。
　マイキーの友人役である新人のジャニス・ロサノは庶民的な顔だちだが、迫力ボディーの持ち主。プール・サイドに座るところで、はちきれんばかりのオッパイを小さなビキニのブラにくるんで圧倒してくる。ディスコで踊るシーンでの腰つきも色っぽい。
　それはいいとして、女性との戯ればかりで、少しも強盗団の復讐劇がでてこないのは困った流れ。やっと犯罪の準備が始まったなと思わせても、映画はまたストーリー上意味のない、なぜかオッパイをみせながら水の中でハシャぐ三人の女性をスロー・モーションで挿入し、テンポを狂わせる。これはこれで、目の保養にはなるが…
　復讐の銃撃戦は、さあ始まるぞという盛りあげもないままに突然開始され、あれよあれよという間に終わり。えっ、これで全部なの？　と思わず声がでそうになるほど。
　アクション映画として、Ｃ級にも達していないのではないか。