ＫＲＩＭＩＮＡＬ
　
84年：セイコ・フィルムズ
監督：エフレン・Ｃ・ピニョン
主演：ルディー・フェルナンデス
　　　 エディー・ガルシア
　　　 トミー・アブエル
　　　 オーロラ・サルヴェ
　　　 ザンドロ・ザモラ
　　　 ロウェナ・ルイス
　　　 ステラ・ストラダ
　　　 ルスティー・サントス
　　　 トニー・カレオン
　　　 ラリー・シルヴァ
　　　 ディック・イズラエル
　　　 ローズ・アン・ゴンザレス
　ルディー・フェルナンデス主演による、ちょっと屈折した内容のＢ級アクション。
　田舎に暮らすヘスス（ルディー）は妻のラウラ（ドンナ・ヴィリア＝クレジットが欠落）が妊娠し、出産を心待ちで幸せだったものの、腹違いの弟のオメン（ディック・イズラエル）が手下たちと現われ、ケンカになってナイフをだしたとき、事故で妻が刺し殺されて人生が変わる。友人のポジョー（ルスティー・サントス）とともに酒場でオメンの一味と殴り合い、心ならずもオメンを撲殺する。実は二人の親父にあたるタタン（エディー・ガルシア）は犯罪シンジケートのボス。カジノ場を経営し、新聞記者のロデン（トミー・アブエル）がギャンブルで多額の借金をつくったので返済を迫る。それでロデンが上司（トニー・カレオン）の許可をとりつけ、ヘススのオメン殺しをセンセーショナルにあおる。ヘススが警察署長のロレンソ（ザンドロ・ザモラ）につかまると、ロデンがカネで証人を雇ってヘススを悪人に仕立てあげる。タタンは部下に命じてロレンソの幼い娘であるエンジェル（ローズ・アン・ゴンザレス）をら致。さらにギャンブルの借金がかさんだロデンがタタンとヘススの関係を訴え、ロレンソにヘススと娘の交換をもちかける。その実行現場でタタンが撃たれ、しょうがなくヘススがエンジェルをつれて逃げる。
　タイトル・バックに輪転機のショットが流れ、私的怨恨から記事をでっちあげの記者の存在にマスコミ批判を盛りこむが、さほど社会性をおびない。母（ナティー・サンチャゴ）が差別したために兄弟の仲が悪く、ヘススはトラウマになっていて、それを気にかけながらタタンが亡くなるセンティメンタルなドラマもいささかとってつけた感じ。マウロ・ジア・サモンテの脚本は無難にまとめたといえる。ポジョーが警察に射殺で、密告した元・人民軍のカ・ジョー（ラリー・シルヴァ）をヘススが殺し、ロデンをヘススが撃つ人物整理の早さもスケールを縮める。
　警察暑にイメルダの肖像がかかり、マルコスじゃないのが興味引き、元・人民軍を悪者に使っている点がマルコス政権末期の映画たるゆえんか。ヘススとポショーが貧民窟へくるエピソードが風俗的なおもしろさを呼び、松葉杖をついて善人のごとく登場しながら、実際は暴君みたいな独裁者だったカ・ジョーをヘススがやっつけると、住民たちに喝采が巻きおこる。ここで知り合った盲目の若い女性のグロリア（ステラ・ストラダ）はヘススに好意を示し、留置場へ面会にまでくるのに、しっかりロマンスを描かないのは余韻をさげる。
　ロデンのダイスによる博打がどうなるかの過程や、エンジェルをヘススが人質にとり、父の仇であるロレンソと向かい合い、はたして二人が引き金を引くかのサスペンスに精彩を欠くあたりは、エフレン・Ｃ・ピニョンの演出力不足。
　女優の魅力ではロレンソの妻役のオーロラ・サルヴェが美人で、ドンナ・ヴィリアもなかなかの容貌ながらも、色っぽいシチュエーションを含まない。ステラ・ストラダはカ・ジョンにビリビリッと服を破られ、ブラまでの露出。ロデンが水商売の女性とつきあっている設定だが、この愛人役のロウェナ・ルイスがけっこうみせてくれる。ロデンとバーで飲むとき、ステージではビキニのダンサーが五人ほど踊っている。大胆な紐ビキニのものもいて視線を集めたあと、愛人の順番がくるや、ビキニでのソロ・ステージをロデンがながめる。けっこう小さなビキニなのでボディーのラインがよくわかり、ほどほどに下半身をドキドキとさせる。
　できればドンナやオーロラに下着のシーンでもあれば、もっと評価をあげたに違いない。