ＳＥＲＡＦＩＮ　ＧＥＲＯＮＩＭＯ
ＡＮＧ　ＫＲＩＭＩＮＡＬ　ＮＧ　ＢＡＲＹＯ　ＣＯＮＣＥＰＣＩＯＮ
（セラフィン・ヘロニモ　コンセプション村の犯罪）
　
98年：グッド・ハーヴェスト
監督：ラヴ・ディアス
主演：レーモンド・バガチング
　　　 アナ・カプリ
　　　 エンジェル・アキノ
　　　 トントン・グチェレス
　　　 ディンディ・ガリアールド
　　　 レーモンド・キアヌー
　　　 エボン・ホソン
　　　 ローレンス・デーヴィッド
　　　 ロルリ・ヴィリアヌエヴァ
　1997年のフィルム・ディヴェロップメント・ファンデーション・オブ・ザ・フィリピンにおいて賞を受けたラヴ・ディアスの脚本を、本人が監督した作品。冒頭にドストエフスキーの『罪と罰』からの一節が引用され、自分の加担した犯罪への後悔にさいなまれる男の物語である。
　レーモンド・バガチング演じる誘拐事件の一味となった主人公が、エンジェル・アキノ演じるジャーナリストにすべてを告白していく構成。しばらくはレーモンドが何を悩んでいるのかわからない状態におき、ミステリー的な要素を、じゃっかんであるが、盛りこんでいる。エンジェルのほうにも、いっこうになくならない誘拐への対策を政治家に迫りながら、実は三年前に起きたレーモンドの事件で殺されたと判明する被害者の女性が友人であった、とのからみかたを加えている。こうした人間関係を説明っぽくなく、流れの中で自然と示していくあたりが、さすがにうまいテクニック。ただしトントン・グチェレス演じる首領があまりにも極悪非道で、血も涙もない人物なのが大げさすぎて、そういうキャラになった過去をちゃんと語るべきだったかもしれない。エボン・ホソン演じる仲間が、トントンの残虐ぶりに疑問と恐怖を抱いていて、トントンが人質の女性をあっさり射殺したのをきっかけに内輪もめとなり、レーモンドを除いて誘拐グループが全滅するのは、いささかご都合主義とも思える。でもレーモンドがディンディ・ガリアールド演じるトントンの情婦であった、これまた冷酷な女を殺すあたりに、人間はときにこいつだけは死んだほうがいいとの気持ちから殺人を肯定することもあるんだ的な主張をうかがうことができる。
　アナ・カプリ演じる妻がガンにおかされ、治療費が必要になったというレーモンドの悪事へと走った理由をあとで紹介のあたりも、ユニークながら、罪を問う内容には一応の効果をあげている。赤ん坊の人質をレーモンドが助け、ロルリ・ヴィリアヌエヴァ演じる母の元で娘として育てていた、との事実もけっこうセンティメンタルな部分。三歳になった娘をレーモンドがエンジェルに会わせるラストまで、ひねった展開に十分感心させられる。しばらくはスクープだと興奮していたエンジェルが、証拠を抹消でレーモンドをかばう決心をするあたりからは、人間が犯した罪というものを、いったい誰が何で裁けばいいんだといった問題まで突きつけてくるように思える。
　それと誘拐されるのが中国系住民である事実からは、ほかにも多くの作品で身代金を狙うとなると中国系ばかりがターゲットに向けられるから、そんなにフィリピンでは中国系対象の営利略取が頻発しているのか、と社会学的な興味もわきあがる。
　さすが、高い評価を得た脚本だけのことはある、といえよう。
　さらにはラヴが演出にも卓越した技量を発揮している点に注目。レーモンドの呵責を暗示するような心象風景の挿入がうまく、家や車を焼くシーンでの火の使いかたなど、映像センスがなかなかのもの。とくに花嫁衣裳のアナの姿をレーモンドの心理に重ねるあたり、生まれながらにして人間が有している幸福になる権利、とでもいったイメージを喚起させる。アナが亡くなるシチュエーションが、ありがちなドラマティックさを排除した表現なのも共感できる。
　もっともテンポがイマイチで、二時間を越える上映時間を引っぱりきれなかった印象なのは、残念ながら力量不足を指摘せざるをえない。ラヴの今後に期待したいところである。
　さて、アナが出演しているから、ちゃんとセクシーなシーンがあるのは嬉しいじゃないか。レーモンドの前でワンピースをスルスルッと脱ぎ落とすと、下着をつけてなくて、堂々の全裸。なんと陰毛もみえていて、ウハウハ状態を誘発する。ショットが寄りに変わると、お腹から上を大きくとらえ、オッパイがくっきりと明らかに。
　うーん、納得。
　本当は大ファンのディンディを目的にしていたのだが、こちらはトントンに愛撫されるときにシャツをまくられるも、オッパイの露出がなく、かなり不満。
　意外にもアナやディンディはチョイ役で、レーモンドとともに全編でずっぱりなのがエンジェルになっている、正直なところ美人とはいいかねるし、オバサンふうの容貌と雰囲気で魅力薄なはずなのに、なぜかそそる色気をもった彼女。以前、全裸でベッドに座っているポーズを斜めうしろから撮った、オッパイは腕で隠しているし、太腿にはシーツが乗っているものの、レースのカーテンのようなものが半分かぶさるも、ほぼお尻が露出しているセミ・ヌード写真をみて以来、すっかり悩殺状態。腰のくびれのラインがセクシーなうえ、ほかの水着写真では、小さめのバストがかえってキュート。ここでもタンク・トップから豊かとはいえない胸のふくらみが視線を奪い、パンツ・ルックから浮きでるプロポーションにうっとり。
　もちろん脱いでいないのだが、ただエンジェルをながめているだけで、ごちそうさま。彼女の代表作かもしれない。