ＫＯＲＯＮＡＮＧ　ＩＴＩＭ
（黒い王冠）
　
94年：プライム・ピクチャーズ
監督：ホセ・マリ・アヴェリアーナ
主演：スヌーキー・セルナ
　　　 パトリック・グスマン
　　　 シャーメイン・アルナイス
　　　 ティルソ・クルース・３世
　　　 グロリア・ディアス
　　　 エミリオ・ガルシア
　　　 アイアイ・デラス・アラス
　　　 カリダッド・サンチェス
　　　 テレサ・ロイサガ
　野望を抱く女性が人気女優にとり入り、自分の台頭の踏み台にする話で、どこか『イヴの総て』を思いだす。シャーメイン・アルナイス演じる新人の役名がエヴァなので、実際に意識においたかもしれない。または映画女優が主人公なあたり、ユレク・ボガエヴィッチの『アンナ』にも通じる要素を感じる。
　新作のプレミア上映会にはじまり、二回目のプレミア上映会までの物語。会場前にファンがつめかけるのは、ハリウッド映画にみられるのと同じ図式。入り口で意識を失ったファンのひとりのエヴァを主演スターのアダナ（スヌーキー・セルナ）が助ける。タバコを吸ったり、アル中だったり、カツラで顔のイメージをかえたり、アダナが虚飾にまみれるのが、ショー・ビズのゆえん。マネージャーのダニエル（パトリック・グスマン）とできているようで、共演男優のブランド（エミリオ・ガルシア）にも口説かれる。でもブランドは、アダナを嫌うライヴァル女優のクリスタル（テレサ・ロイサガ）とも関係をもつ。芸能レポーターのディグナ（アイアイ・デラス・アラス）による悪意の記事がでて、エヴァが編集部へ抗議にいく。これを機に、演技のまねごとをするエヴァをアダナがみかけ、ヴェテランのアダイ（カリダッド・サンチェス）を引っこめ、シャイなエヴァを秘書兼助手に採用。監督のジーノ（ティルソ・クルース・３世）の演出に不満でエヴァがアイディアをだし、アダナとエヴァが共同でストーリーを書き、エヴァに役をもうける。「私の発見よ」とエヴァのデビューを自慢のアダナだが、睡眠薬の服用などで撮影がもたつき、エヴァのほうがスタッフに好印象を与える。ブランドをとりこにしたエヴァは、いよいよ本性を現わし、アダナの酒に睡眠薬を大量にまぜ、急患で入院のうえ、インタビューでアダナを心配と泣いたあと、バギオにある療養所へ追いやる。
　プレミア会場の群集へ怒鳴るなど、ジーノが無能な監督っぽく、妙にオカマふうな演出ぶりがフィリピン映画の舞台裏らしいかな。ディグナが“ＴＯＮＩＴＥ”や“ＪＯＵＲＮＡＬ”の編集部にいて、そのオフィスの光景が興味深い。酒でろれつがまわらず、うまくセリフのいえないアダナがエヴァにあたり、ディグナがなぐさめる展開はエヴァの作戦ながら、いかにもディグナが芸能記者にいそうなタイプで、実際に自分が日本で映画宣伝の仕事をしていた頃にみかけた、芸能界にその名も高き某雑誌のおばちゃん記者Ａさんを思いだす。アドナがＴＶのトーク番組に出演のシーンは司会のアスター・アモヨとアンセル・ベリユーソが本人役で顔をみせ、ほかにもヴィクトリア・アグバヤニ、ディンドン・アヴァンカド、アーチー・デ・カルマ、オギー・ディアス、モンチン・ハラミーリオ、ジュン・ラティン、ジョアンヌ・ロレンサナ、リンゴー・マルケス、ジミー・ナヴァロ、リチャード・ピンラク、モンティー・ティラソル、シャーロン・ヴィリアルスなどのゲストのクレジットがあり、どの役かわからなくて残念。スターの仲間入りをはたしたエヴァへ、プロデューサーのミンダ（グロリア・ディアス）がプールつきの豪邸に住まわせるのは、家の立派さが基本のひとつといえるフィリピン人の価値基準をうかがわせる。
　以前にチョイ役でエヴァが映画にでていたのをダニエルが発見し、別名でプロダクションに売りこみの過去をつかみ、いよいよエヴァがごう慢さを発揮。アダナのイメージ・ダウンをはかり、療養先をディグナに教える。看護婦の制止も無視で強引にディグナがインタビューへおしかけ、それならとアダナがうけるや、カツラをとって実像をさらす勇気や本音の告白に、かえって感動を与える。看護婦のデパドレ（モネット・アルフォン）とセヴィーリア（ミナ・ベルナレス）のうち、デパドレが怖いまでに厳しくアダナへ接するも、隠れてタバコを吸うキャラで、人気女優とのキャリアへ敬意を払うようになり、退院のときの交流など、目だつ脇でしめる。エヴァの主演作のプレミアが開かれ、復帰のアダナが『ＫＯＲＯＮＡＮＧ　ＩＴＩＭ』との題名で次回にエヴァと共演の皮肉をのべ、対立の姿勢を示す。前のプレミアでは屋上でスレたアダナへ素朴なエヴァが話しかけたものの、今回は屋上でエヴァがタバコを吸っているのに性悪をにおわせ、二人が激しく感情をぶつけ合う。さすがに『愛と喝采の日々』のシャーリー・マクレーンとアン・バンクロフトの迫力を思いだしたが、そこまではおよんでいないのがご愛嬌。
　アダナがダニエルと結婚で幸福なプライヴェートを選び、エヴァがブランドへのプロポーズをマスコミに発表するや、ワルでは自分よりもエヴァのほうが上と悟ったブランドが去っていくラストを迎える。タバコの煙をはく口のアップの冒頭からしてイヤな女のごとく登場のアダナにスターの虚像を描きながら、破綻を経て愛をとるのと対照的に、控え目で気弱なエヴァがＴＶでアダナのインタビューをみるのをブランドがやめず、ムカムカっと足でＴＶを蹴ってプールに落とすまで変ぼうに人間ドラマのおもしろさを狙うが、平均レヴェルのできに終わったようだ。せっかく映画界の裏事情をのぞく内幕もの的な色合いを高めるも、意外に内情の描写にリアリティーが乏しいのが大きな不満点。ホセ・マリ・アヴェリアーナは本作自体をフィクションっぽくつくりすぎたようだ。
　もっとも大ファンのシャーメイン・アルナイスの魅力に期待でみたので、輝くごときかわいさに胸がときめく。アダナとブランド、エヴァとブランドでスティル撮影と映画撮影のシーンが何度かあり、スティルのほうでドレスばかりがイマイチだったが、エヴァにはアラビアふうの衣装を含み、ヘソだしのシャーメインにドキドキ。ブランドとプールにいるときは黒いワンピース水着で歩いてきて、濡れるショットを欠くのは残念だけど、切れあがった割れかたのラインが浮かぶヒップに興奮を呼ぶ。容貌だけでも勃起をまねく色っぽいシャーメインのお尻にキスしたい。スヌーキー・セルナはカツラをはずしたショット・カットのほうがキュートで、ブランドが押しかける夜のガウンをはおったスリップと、ブランドに抱きあげられてのゆるパンがあやうい太腿の股間にはじまり、睡眠薬を飲む際のガウンからでる太腿、撮影に遅刻であわててベッドを飛びだす白いタイツ姿、ダニエルの「愛してる」をうけてセックスになり、シーツを巻いたボディーの背中と乳首がこぼれそうな横チチをみせてくれる。さらに美貌でシャーメインに劣るも、セクシーさがそそって好みのタイプのテレサ・ロイサガがブランドと泡風呂に入るシーンで視線を奪う。
　まずまず女優のあつかいは合格点。
　いやあ、なにをおいてもシャーメインの水着姿はよいなあ。