ＫＥＫＡ
　
03年：ＶＩＶＡフィルムズ／シネマ・ヴェンデッタ・プロダクション
監督：クァーク・ヘナレス
主演：カチャ・サントス
　　　 ウェンデル・ラモス
　　　 ヴォン・ナヴァロ
　　　 ボビー・アンドルーズ
　　　 ライアン・アイゲンマン
　　　 ジョルダン・ヘレラ
　　　 マーキー・ロペス
　　　 ルイス・アランディー
　　　 リッサ・サムソン
　　　 ＴＪ・トリニダッド
　　　 トリスタン・エンリケス
　　　 チューズデー・ヴァルガス
　腹立たしいまでに期待はずれ、というのが正直なところ。
　確かに駄作と切って捨てるのは、いささか酷かもしれない。クァーク・ヘナレスは『ＧＡＭＩＴＡＮ』同様に、コマ落としやヴィデオ映像の挿入といった小細工を多様で、ＭＴＶふうのシャレた演出をみせている。カチャ・サントス演じる主人公が、いきなりボビー・アンドルーズ演じる食事の相手を絞殺し、オッと引きつける出だしではある。
　すぐにカチャがジョルダン・ヘレラ演じる恋人を学生時代に五人組からささいな理由で処刑され、ライアン・アイゲンマン演じる犯人の一人が政治家の息子だったため、裁判で無罪になった。五年後にライアンが映画スターとして人気を集めているのに憤慨し、復讐を決意したとのストーリーが紹介される。ならば『黒衣の花嫁』を連想するし、カチャが夢想の中で弓矢を放つイメージもあって、実際に『黒衣の花嫁』から影響を受けたかなと推測するも、あんな執念のドラマではない。
　ヴォン・ナヴァロ演じる友人の協力を得て、まずＴＪ・トニリダッド演じる事務員となった一人を射殺すると、直後にカチャはヴォンに「やった、やった」と興奮を伝える電話を入れていて、ハデに銃声が鳴り響いたというのに、どうしてすぐ現場を立ち去らないわけ？　お前はパーかよとの思いを抱かせる。トリスタン・エンリケス演じる犯人グループの一人を刺殺しようとしたときは、トリスタンが気づいて格闘になるも、軽い音楽をＢＧＭにした著しくサスペンスを欠く表現で、あえて確信犯的にそうしている意図は伝わるものの、ドッチラケ。ウェンデル・ラモス演じる恋人にフラれた刑事がカチャにほれ、つきまとって交際に発展する流れで、ルイス・アランディー演じるＣＭモデルの一人をカチャが殺すタイミングに、ちょうど事件の糸口をつかんだウェンデルがマーキー・ロペス演じる部下とともにルイスの家を訪ねてくる偶然も、最初からサスペンスを狙ってないとはいえ、あまりにも簡単にカチャがピンチを逃れすぎる。これだからヴォンを痛めつけてライアンがカチャの存在を知り、カチャ宅を襲ってくるのと、ほぼ同時にカチャが犯人だと割りだしたウェンデルが駆けつけるクライマックスの盛りあげ欠如は、半端じゃない。
　途中でカチャとジョルダンが歌いだし、ウェンデルが加わり、ボビー、ルイス、ＴＪ、トリスタンがコーラスを担当する、ダンスをまじえたミュージカルっぽいシーンを繰り広げるのは、ライトな感覚によるノリのよさのサーヴィスだろうが、だったらエコーをかけずにちゃんと歌えよ（カチャには無理か）と声がでそう。
　とにかく終了と同時にどっとこみあげてくるもの足りなさは、茫然自失寸前のレヴェル。はっきりいって、気どりばかりの表層的装飾のみで内容なし。きれいな包装紙を開けて中身をみればゴミだった、みたいな失望感が全身を襲う。
　やはり駄作と切って捨てよう。
　ヴォンがジョイス・ヒメネスの濡れた水着映像でオナニーするのが笑いを誘うほか、カチャとウェンデルが日本料理店でデートし、リア・マルティネス演じるウェイトレスがハッピを着ていて、確かにこうよと納得（トーマス・モラートのＫＡＭＡＭＥＳＨＩという店でロケしたようだ）。ルイスの部屋におけるカチャがペコちゃんのＴシャツなのが興味をそそるなど、どうでもいいサブの要素ばかりに注目が集まるのは、情けなくないか。
　カチャからセクシーさを奪ったのも著しく不満なポイント。ボビー殺害の際にロー・ライズ気味のジーンズだったり、ボクシングや太極拳を鍛錬する過程で下半身に貼りついたトレーニング・ウェア姿を披露するも、ウェンデルとのベッド・シーンでハダカをみせないのはなぜ？　ボビーの死体を片づけていると、チューズデー・ヴェルガス演じるとなりの女の子が現れたから適当にごまかし、チューズデーが詮索好きなのは、どこかの国のヒマなバカ主婦のよう。聞き耳を立てるチューズデーへのカモフラージュでセックスのフリを演じるとき、着衣のままあえぎ声をあげていて、あー、つまんねー。失礼ながらさして美人じゃないし、迫力ボディー以外に魅力皆無の女優だけに、脱がないなら主役にするなよ、とどなりたくなる。
　あとウェンデルの婚約者を演じたリッサ・サムソンは色っぽいタイプながら、ウェンデルの部屋へきてもずっと黒いイヴニングを通し、スケベな妄想に応えてくれない。ウェンデルがお見合いをした女性のフラッシュでは、ヘレン・アレヴァロ、ジェイシー、顔みせ特別主演だろうアンドレア・デル・ロサリオの三名がギャグっぽくでてきて、ヘレンが赤ん坊にオッパイをあげているも、乳首はみえずじまい。ライアンの映画撮影における相手役を演じたヴァンナ・ガルシアは、これまで清楚なタイプだったのに、ベトベトの厚化粧だからゲソー。一応ヘソだし衣装にときめきを起こすも、興味を失ってしまった。