ＫＡＲＭＡ
　
81年：シニン・シランガン・フィルム
監督：ダニー・Ｌ・シアルシタ
主演：ヴィルマ・サントス
　　　 ロナルド・ヴァルデス
　　　 トミー・アブエル
　　　 チャンダ・ロメロ
　　　 ダンテ・リヴェロ
　　　 レイラ・ヘルモサ
　　　 クリストファー・デ・レオン
　カルマとイーリンカーネションの区別がよくつかないのだが、どちらも信じるかといえば、さほど信じる気にならない。
　なんて話はどうでもよく、カルマとの題名によるドラマで、カルマの概念が正しいかどうかはさておき、さしてキリスト教っぽくないのがフィリピン映画にはめずらしいと思える。
　でも、さっぱり評価にたらないでき。
　まずシルヴィア・バレートのストーリーをもとに、脚本をかねたダニー・Ｌ・シアルシタの構成力があまい。最初にエンリコ（ダンテ・リヴェロ）とグアダ（レイラ・ヘルモサ）の浮気現場へグアダの夫のリンボ（ルエル・ヴェルナル）があらわれ、エンリコとグアダを射殺のうえに自殺のエピソードがおかれる。ときが流れて現代になり、飛行機の遅れで待ち時間にホテルの部屋へ案内されたサラ（ヴィルマ・サントス）が、同じ部屋の宿泊客だったエリック（ロナルド・ヴァルデス）にレイプで処女を奪われる。サラはアルフレド（トミー・アブエル）と結婚するも、初夜で処女じゃないとわかり、アルフレドが怒りをぶつける。数年後、アンティークをあつかうサラの店にクリスティー（チャンダ・ロメロ）が客できて、奇遇にもクリスティーはエリックの妻。アルフレドがオリヴィア（オーロラ・サルヴェ）と浮気などあり、電話の混線や中華料理店の個室がとなりだったなどの偶然をへて、サラとエリックが愛し合うようになる。
　そんなアルフレドがサラの情事を疑り、暴力を振るうだけでなく、サラが家族づき合いする友人のスザンヌ（スザンヌ・ゴンザレス）の夫（アウグスト・ヴィクタ）が産科医なので、膣に精液の付着がないかを調べさせる陰湿さにあきれるとはいえ、自分をレイプした男と愛を交わすかのご都合主義に、まったく説得力がない。エリックのほうもサラが処女とわかったあと、カネをおいていくごう慢野郎だったのに。
　またエリックが精神科医（ヴィク・シラヤン）にかかって、催眠術で自分とサラがエンリコとグアダの生まれ変わりとわかり、廃墟になったエンリコの屋敷にきて、殺人のもようを再現の霊の声を聞くのがチンプなら、あとの展開はただ退屈。アルフレドが事故で車椅子生活を強いられて自殺し、クリスティーがエリックを殺すと、こちらも自殺。ちょうど病院で瀕死の男（クリストファー・デ・レオン）を医者（ジョニー・ヴィカール）が手術するも亡くなり、別の場所にいるクリスティーが息をひきとった直後に奇跡の復活。男がサラと出会うラストがアホらしいばかり。
　とにかくダニー・Ｌ・シアルシアの語り口がヘタ。
　でもセクシーな表現が、そこそこの興奮をくれる。レイラ・ヘルモサは黒いスリップまでで、オーロラ・サルヴェとスザンヌ・ゴンザレスはきわどいシチュエーションがないながら、ヴィルマ・サントスがすごい。パンツ一丁のエリックに犯されるシャワーでオッパイを手で隠す背中のハダカにはじまり、アルフレドとの初夜はシーツをバストにあてるも、嫉妬のアルフレドに暴行をうけるとき、ブラウスとスカートを破られてブラとパンティーがあらわになる。エリックの前でトップレスに脱ぐショットは遠景だが、ビーチでエリックと歩くワンピース水着にヒップラインがくっきりと浮かぶ。ビッグ・スターのヴィルマだけに、多少ともプロポーションがイマイチなことなど気にならず、つい下半身の元気を呼ぶ。チャンダ・ロメロはさらに爆発級で、バストの谷間がチラつき、パンティーの股間がのぞきそうなスリップや、オッパイがこぼれる寸前のうえ、太腿にスリットの入った黒いナイト・ドレスの衣装で視線を奪い、エリックの愛情を確かめるセックスではベッドの前で全裸になり、暗い中でお尻のアップがド迫力もの。抱かれて眠るポーズはオマンコのみえそうなあやうさにドキドキ。
　あとエリックに娼婦を紹介の斡旋おばさん役にベリア・フロレス、アルフレドとオリヴィアの関係をネタにサラへ接するたかりおばさん役にオデット・カーンが出演し、サラにホテルで待つことをすすめるスチュワーデス役のマルタ・セヴィーリアは色っぽいので、 そそるシーンがほしかったところ。
　なお、エンリコとグアダの殺害のバックにエルヴィス・プレスリーの『イッツ・ナウ・オワ・ネヴァー』を流して時代を示し、レストランでこのフレーズが聞こえるとサラがスザンヌに「好きな歌なの」というとき、原曲の『オー・ソレ・ミオ』でなく『イッツ・ナウ・オワ・ネヴァー』と教えているのがフィリピンっぽい。映画は全編に『オー・ソレ・ミオ』のメロディーを使うほか、『禁じられた遊び』の『ロマンス』や『旅情』の『サマータイム』を盛りこんでいる。