ＫＡＲＩＢＡＬ　ＫＯ　ＡＮＧ　ＡＫＩＮＧ　ＩＮＡ
（お母さんが私のライヴァル）
　
82年：ブカン・リワイワイ・フィルムズ
監督：マリア・サレット
主演：グロリア・ディアス
　　　 マーク・ヒル
　　　 ルイサ・ムーニョス
　　　 セニー・サバラ
　　　 ジャニス・フラド
　　　 エルネスト・ブエノ
　仲のよい母と娘が、偶然に同じ男に恋してしまう愛憎劇。二人が同時進行で一人をでなく、タイム・ラグをとる構成がドラマティックさをゆるめるながら、いかにもフィリピン人好みのフィクションといえる。ネリッサ・カブラルの原作はダルナ・コミクスの連載で、セシーリエ・Ｂ・ラルディサバルが脚本を書き、マリア・サレントが監督との女性の視点にひかれる。
　冒頭に欠落がみられるが、ビートルズやエルヴィス・プレスリーの写真とともに、母子のポートレートや記念品がうつされるタイトル・バックで背景を示したあと、娘のヒルダ（ルイサ・ムーニョス）の卒業記念パーティーにつながり、ゲスト出演のラウル・アラゴンやルーベン・ルスティアがお祝いにあらわれる。ヒルダはアメリカ合衆国での仕事が決まって出発。未亡人の母のペルラ（グロリア・ディアス）が車のセールスマンのリゴール（マーク・ヒル）と出会い、同棲をはじめる。でもリゴールがセックス・アピールで顧客のジュディー（ジャニス・フラド）をつかむも、ペルラの嫉妬が原因でキャンセル。同僚のフレディー（ジョニー・ヴィカール）との用事で遅くなってもペルラが怒るのに嫌気がさし、リゴールがいなくなって別離をむかえる。ヒルダの帰国後が後半で、後見人のトリヤス夫人（セニー・サバラ）のもとでバギオに暮らすヒルダのことを、外国人相手の観光ガイドのリゴールがみそめる。
　ペルラが三十六歳との設定でリゴールが年下になり、ジュディーが「姉なの？」と聞いて「夫人です」と答えるおかしさをおきつつ、実際にペルラとヒルダが姉妹にみえるグロリア・ディアスとルイサ・ムーニョス容貌が、このドラマを成立させている。前半はヒルダからの手紙をペルラが読む二面分割画面で、ヒルダの部屋の窓ごしに雪が降っていたり、リゴールの家へ移るため、家政婦のインダイ（フローラ・ガセル）にペルラが留守番を頼むと、インダイが「幽霊がでるから怖い」といっていたり、ペルラとリゴールが赤ワインで乾杯でシャンパン・グラスに注いでいたり、どうでもいい細部を含め、わりと退屈させずに進む。リゴールとフレディーが路上で強盗の車に狙われ、ボコボコに殴り合う荒っぽいアクションの挿入は、女性のセンスに思えず、出演も兼ねる助監督のダンテ・ハヴィエールの演出だろう。
　バギオでの仕事中にリゴールがデビー（デクスター・ドリア）と一緒にいるヒルダにばかり気をとられ、同僚のマニー（マニー・ティバヤン）もあきれる場所をわきまえないダメさはどうかと感じながら、リゴールとヒルダの結婚後が極端につまらなくなる。結婚式のシーンには、バギオ市長のエルネスト・ブエノが顔をだす。ヒルダの母がペルラなのにリゴールが驚き、なにも知らないヒルダが「母よ」と紹介…、と一般的なお決まりの展開。親子の絆にヒビが入る心理描写は、さほど女性らしい繊細さと評価できない。
　グロリア・ディアスとルイサ・ムーニョスの魅力もイマイチにとどまり、ガウンを着ているルイサの横でグロリアが風呂に入っていて、背中の泡を流すショットにドキッとときめくも、リゴールと出会うバルサの浮かぶビーチでグロリアはワンピース水着なのに、ただ座って動かないまま。普段着のジーンズも、さほどピタピタのタイプじゃない。ルイサはリゴールとのベッドでボディーにシーツを巻き、シャワーを浴びる前のシャツから伸びる太腿が色っぽいのに、ほんの少ししかみせず、シャワーのあとはやはりボディーにバスタオルを巻き、パンティーをはいているのがチラりとうつって、ノー・パンじゃないのねとわかってしまう。でも意外と脇の女優が興奮をくれて、ジャニス・フラドは自宅のプールで泳ぎ、水から濡れてあがると薄手の素材の青いワンピース水着が貼りつき、バストにポッチが浮かぶ。お尻にはラインが食いこんで太めの形がくっきり。バササの海岸ではペルラの同僚のベット（オデット・カーン）が服のまま泳ぐが、若い部下らしいローズとテリアと紹介される女性はともにビキニ。とくにテリアのほうはチューブ・トップのブラが小さく、パンティーもハイレグぎみだし、ローズのセパレーツもお尻にペタりで、演じるトニ・ローズ・ゴメスとローズ・ソリスに視線を奪われる。
　なお、ふたたびヒルダがアメリカ合衆国へ旅だつラストでニノイ・アキノ国際空港（当時は名前が違っていた）の外観が同じなのに、ノースウェストの横にパンナムの受けつけがあり、時代の流れをうかがう。