ＫＡＰＡＮＴＡＹ　ＡＹ　ＬＡＮＧＩＴ
（空の下でみんな同じ）
　
94年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：ジョエル・ラマンガン
主演：シャーロン・コネータ
　　 　リチャード・ゴメス
　　　 トントン・グチェレス
　　 　ビン・ロイサガ
　　 　リザ・ロレナ
　　 　ローズマリー・ヒル
　　 　ズバス・ヘレロ
　　 　ヘーゼル・フエルヴェス
　　 　ロメオ・リヴェラ
　　 　チャリーナ　（チャリーナ・スコット）
　　 　ランデル・ヴェラ・ペレス
　シャーロン・コネータ主演の大人のロマンス劇で、リチャード・ゴメスの共演。
　夫のフランク（トントン・グチェレス）と別れ、画廊を経営で幼い娘のクリスティー（チャリーナ）を育てるオデットがシャローンの役どころ。クリスティーの後見人である親友のレレン（ビン・ロイサガ）が広告代理店に勤めていて、いつものようにオデットが子守りを頼んだとき、上司からレレンにＣＭ出演の子役候補を早急に探してほしいとの連絡が入り、ちょうど適役とクリスティーを紹介する。みごとにクリスティーがモデルをこなしたので、オデットのもとへお礼をいいにやってきたレレンの上司のディレクターであるスティーヴがリチャードの役どころ。父親をほしがっているクリスティーがスティーヴを母のオデットにお似合いと感じ、レレンも気をきかせるようになる。でも二人にすんなりいかないトラブルが降りかかる内容。
　オデットには父（ズバス・ヘレロ）と母（ローズマリー・ヒル）の友人にあたる初老のドン・フリオや、同年代のビジネスマンのマンディー（マンディー・オチョア）がプロポーズの意志を示すも、クリスティーがたくみに子どもの話術や悪戯で撃退する。フランクがオデットに未練を抱き、スティーヴの元彼女のパチョット（ヘーゼル・フエルヴェス）があきらめきれず、スティーヴにまとわりつく。フランクがスティーヴの家にくれば、パチョットがオデットの画廊に現われ、なにかとジャマな行動をとる。クリスティーを溺愛のフランクがオデットから娘を奪い、自宅へ連れ帰ってオデットが警察を呼ぶ騒ぎは、息子に批判的なフランクの父（ロメオ・リヴェラ）の配慮で丸くおさまる。いったんオデットの厳しいクリスティーへのしつけが原因でスティーヴとケンカは両者が折れて解決も、パチョットがオデットに「フランクの子を妊娠している」といったため、オデットが別れを決める。好きなダンスに夢中で息子のことなど関心がないふうだったフランクの母のエヴェリン（リザ・ロレナ）がオデットのもとを訪れ、和解の話し合いの場をもうける。のぞみうすと感じたフランクがアメリカ合衆国の駐在をうけ入れて、出発の日にオデットが空港へ駆けつける。
　エマヌエル・Ｈ・ボルラサのストーリーのもと、エマヌエル・Ｈ・ボルラサとジョエル・ラマンガンの脚本は、いかにも一般的なフィリピン映画の恋愛ものらしい起伏の多い、悪く評すればつくりが目だつ構成をとる。とくにフランクが不誠実と誤解したオデットがいっさいの説明を聞かず、一方的にわめく単細胞なキャラクターなあたり、まさに正統（！）な描きかた。それに出発ロビーの内部へ搭乗客以外は入場できない、閉鎖性が特徴のニノイ・アキノ国際空港にあって、クリスティーが迷子のふりでガードマンの注意をそらし、すきをみてオデットとレレンが入るのはよいも、まさか出国手続きの先までくぐれるわけがなく、映画だと許される無理なシチュエーションもほどほどにと指摘したくなる。クライマックスでのこのシラけは致命的。
　でもジョエル・Ｃ・ラマンガンならではのうまさも読みとれ、オデットとフランクが対峙の話し合いで、大きなテーブルの左右の端同士に二人が座り、離れた配置がそのまま心の距離感をあらわす。
　中流階級の暮らしぶりがカルチャー的な興味を加える。自宅でラテンのダンス教室を開き、食事中までチャチャチャが流れてくるとスティーヴを相手に踊るエヴェリンのダンス狂や、クリスティーが通う幼稚園のお遊戯会、フランクが参加のレガッタ、オデットの母が練習のソプラノ、レレンが役者の一人の前衛演劇をはじめ、オデットとフランクがデートの食事でシー・サイドのオープンのレストランへいき、テーブルの横で弦楽四重奏が生演奏する。凧揚げや写生会の人がいるタガイタイに、植物園のあるバギオと観光要素を盛りこみ、オデットとスティーヴがお似合いとさとったレレンの想像でフォーマルにドレス・アップのオデットとスティーヴが踊るのは、シャーロンとリチャードへのファン・サーヴィス。レレンが恋愛を発展させる作戦でわざと演劇ふうの芝居口調でオデットに接するシーンでは、バックにショパンの夜想曲を流す。
　まあ、平均的なレヴェルの、とくにどうってことない娯楽作に落ちつくも、退屈さを招かない語り口がさすがかな。
　ラストの結婚式のストップ・モーションによるショットで、フィルムにゴミがついているのをそのまま使用は、いささかあきれる。ロミー・ヴィトゥグの撮影というより、機材か予算か、そういうことへの大ざっぱな国民性のせいだろう。
　出演陣はみんな無難な演技をこなすも、レガッタのフランクを護岸でパチェットが待つとき、ジーンズの短パンからでる太腿がそそるが、ヘーゼル・フエルヴェスはさして顔がタイプじゃなくて残念。オデットのメイドのリリアン役がちょっとかわいく、女優名を知りたくなった。