ＫＡＰＡＧ　ＩＧＩＮＵＨＩＴ　ＡＮＧ　ＨＡＴＯＬ　ＮＧ　ＰＵＳＯ
（胸の中にある決心が絵に描かれたとき）
　
93年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：セルソ・ＡＤ・カスティーリオ
主演：ディーナ・ボネヴィー
　　　 モニク・ウィルソン
　　　 ガーリー・エストラダ
　　　 ルストム・パディーリア
　　　 ビン・ロイサガ
　　　 ローズマリー・ヒル
　　　 ルシタ・ソリアノ
　　　 ロルリ・ヴィリアヌエヴァ
　　　 デクスター・ドリア
　いかにもフィクションふうにつくられたイメージの愛憎とサスペンス劇で、代理父をベースにおくのがユニーク。ディン・アルヴァのエスペシャル・コミクスを原作に、ラクエル・ヴィリアヴィセンシオとサム・ムリーリオが波乱に富んだドラマに脚色し、セルソ・ＡＤ・カスティーリオが娯楽志向の強い構成に仕上げている。
　ディーナ・ボネヴィーがヒロインを演じ、結婚式の当日に婚約者から破棄を突きつけられた人物。自殺未遂を起こして病院へ担ぎこまれ、それをたまたまモニク・ウィルソン演じる旧知の女性がみかける。クラブ歌手のモニクは客をめぐってミシェル・バウティスタ演じるホステスと取っ組み合いのケンカを繰り広げ、ケガの治療で運ばれたのだが、きつい性格をうかがわせる。会社の重役だったディーナは回復後に仕事へ復帰するや、モニクと友だちづき合いを始め、偶然ルストム・パディーリア演じる自分を捨てた婚約者がビン・ロイサガ演じる妻と一緒にレストランへきたとき、となりのテーブルになって、ビンがディーナに意地悪な皮肉をいう。未練タラタラのルストムが郊外の別荘へ押しかけてディーナに「愛している」とつめよると、追いかけてきたビンが暴れ、ルストムと車でチェイスのうえに交通事故死。モニクはじゃぱゆきになりたくて違法業者に払う渡航費用の捻出を考えていたものの、ガーリー・エストラダ演じる恋人にディーナが興味を示したのに気がつく。マリッサ・デ・グスマン演じる友人の娘の名づけ親でもあるディーナは自分の子をほしがっていて、ルル・アラネタ演じる女医に人口受精を相談したりで、モニクからガーリーの斡旋によって代理父のセックスになる。ディーナの礼金でモニクが日本へいき、利用されたガーリーがモニクともめ、本気でディーナにほれる。年下のガーリーの猛烈なアプローチを振りきっていたディーナだが、ルストムが暴力的に迫ったとき、ガーリーが必死に助けてくれて印象が変わる。無事にディーナが出産で父親のガーリーとともに幸福なカップルが誕生。しばらくのち、モニクの帰国で状況が崩れる。ディーナの豪邸にはマリッサの母にあたるアリシア・アロンソ演じるおばさんが同居していて、たまたまモニクとガーリーの話を盗み聞き、二人が夫婦だった事実をディーナに教え、自らは不満からでていく。ディーナとの関係を嘆いて復縁を求めるモニクをガーリーは避けていたが、折り悪くも抱きつかれた現場をみつかり、ディーナがしめだす。クラブ歌手に戻ったモニクのステージをルストムがながめ、結託を決めると、ディーナの赤ん坊を誘拐。身代金の要求にガーリーが運び役を引きうける。
　とにかく代理父でセックスのシーンがおもしろく、ディーナが愛情のない性交だからとハダカをみられないためにガーリーへ目隠しする。思えば自分の場合は恋人のハダカをながめるのが趣味で、じっと素っ裸にむいてベッドで観察状態なので「もう、恥ずかしい」と怒られる。ときどきオマンコに顔を近づけ、ヒダヒダをいじりながら色や形を調べたがって「変態のドスケベ」とバカにされたりも。すぐに慣れてきて「またか」とあきれ半分だが…　そのせいか外見的な要素に限っていえば、容貌やプロポーションのほか、乳首とオマンコがきれいかどうかが恋人にときめく必要条件のひとつになっている。モニクがガーリーの紹介でディーナに写真をわたし、海パン姿がまじっていてディーナがニコッと笑うシーンがあるのには、やはり女性もヌードのポートレイトをオナニー・ネタにつかうのかな、との想像がめぐってくる。ディジタル・カメラというのができて以来、カノジョと全裸のショットを撮りまくっていて、ちゃんとこちらのチンポまで写った紙焼きをあげているが、はたしてどうなんだろう。まあ、これはお互いにヌード写真を他人に公開しませんよ的な約束の意味合いの、人質ならぬ写真質ではあるが…　某高校教師の知人は、東欧出身の奥さんが不妊とわかり、公認で子づくりのためにちょくちょくフィリピンへきている。代理母を承諾した女性の排卵日と合わないのか、なかなかうまくいかず、今度は以前にアメリカ人の子どもを生んであげた経験をもつ女性を手配したものの、まだ陽性反応がでない。三日ほど滞在でやりまくって帰るのが短すぎるのか…
　なんて話はどうでもよく、代理母はよく聞くが、しっかり大金をあげて代理父とはめずらしいように感じる。モニクがテープを聞きながら「おはようございます」「いらっしゃいませ」「お元気ですか」「こんにちは」と日本語を練習し、多くのフィリピン映画でじゃぱゆきが戻るとけっこう貯めこんでいるのに、そうじゃないあたりが現実的かな。映画はラストでジョニー・ヴィカール演じる刑事に指示された警官隊が取り巻き、たまたまいたメル・キムラ演じる女性をルストムが楯に銃を突きつけ、逃げようとしたメルを撃つ。警官隊がかまえたにもかかわらず、結局はガーリーがルストムを射殺で、これは正当防衛じゃないし、民間人による殺人行為だよいいたくなる。無事にディーナが赤ん坊を抱きあげるも、倒れたメルに救急車を呼ぶわけでなく、ビンの亡くなるところでもロイ・デ・グスマン（ロドリゴ）演じる運転手の消息があやふやなままで、こういった本筋に関係のない人物の命なんかどうでもいいみたいな描きかたは、さすがに非難したくなる。モニクが不在後しばらくの中間部がテンポ的にダレるせいも考慮すれば、セルソの実力がやや足りないかもしれない。
　娯楽作と割りきれば、平均的なできといえよう。
　美人のディーナとブスっぽいモニクでは当然ながらディーナに視線を奪われるが、ともにそこそこセクシーな魅力を与えてくれる。ポチョロ・モンテス演じる叔父からルストムの結婚を告げられるときにディーナはヨット・ハーバーの海岸にいて、ボトムにパレオを巻いたビキニ水着。モニクはステージの衣装が一回目は光沢ボディコン、二回目が短パン。ルストムがやってくる別荘ではディーナがプールで泳いでワンピースにパレオを巻いてでてくると、モニクはブラにパレオの水着。ガーリーとラヴラヴになったディーナがベッドで寝る黒いスリップ下着や、ガーリーを再び利用しようと接近のモニクがプールでたわむれるのをディーナがこっそりみる際のヒップラインが浮かんだモニクのワンピース水着など、いずれも大胆にはほど遠いものの、ドキドキ感を招く。ガーリーがシャワーを浴びているところへモニクが入ってくるシチュエーションは二度あって、ここはもう少し肌の露出がほしかった。
　意外な見せ場だったのはメルが撃たれた瞬間で、バタッと倒れるのを真うしろからとらえ、地面について脚をあげるかっこうで短パンのすき間にパンティーというか、オマンコがチラつきそう。
　泥酔のディーナが手首をきるバックにライザ・ミネリーの『キャバレー』がＴＶにかかり、ディーナが口ずさんでいるのにモニクがクラブで『キャバレー』を歌っているステージがダブるのは、本来ミュージカル女優であるモニクが『キャバレー』を当たり役にもつパロディーだろう。ガーリーがボーッとながめるＴＶにはドラマが流れていて、セルソ自身が出演。
　あとディーナの秘書を演じたミシェル・アン・ロペスが気になるかわいさで、もっとみたかったと思わせる。ビンの母親役でローズマリー・ヒル、モニクとガーリーが住んでいた部屋の新しい借り手役にルシタ・ソリアノが顔をだす。