ＫＡＬＡＫＡＬ
（商品）
　
08年：スター・イメージ・プロダクションズ
監督：ジグス・Ｆ・レクト
主演：メリッサ・メンデス
　　　 フレッドモール・デロス・サントス
　　　 フロイラン・モレノ
　　 　レイ・フェルナンド
　　　 サリー・サンティリアン
　　 　ビージェー・モラレス
　ホモを主題にとるディジタル作品。
　中年女性のピナ（メリッサ・メンデス）が引っ越してきた貧民街では、大家（チェリー・ドミンゴ）に息子がカネをたかっている。ピナは息子を二人もち、実の子である弟のオリヴェル（ビージェー・モラレス）を偏愛し、連れ子だった兄のチト（フロイラン・モレノ）につらくあたる。チトとオリヴェルには深い兄弟愛がある。近くのサリサリ店主のサー（フレッドモール・デロス・サントス）にピナはカネをもらうが、ホモのサーはオリヴェルを狙っている。またピナは若いツバメのカルド（レイ・フェルナンド）をカネで囲う。ピナの冷遇にカルドが絶望で家をでていき、シャブの売買にかかわるカルドがヤクザに殺され、同性愛セックスを拒んだオリヴェルがサーに撃たれる、とのピナの自分勝手がもたらす悲劇を描きつつ、これに暴力の虐待で苦しむ若い女性のサルモネリア（サリー・サンティリアン）がＴＶ出演し、番組ホストのオカマ二人（ティタ・スワルディン、アイヴィー・バトゥラハル）に傷あとをみせるなどのエピソードがからむ。サルモネリアの告白をピナが放送でみていたが、彼女の自殺が報じられ、悲痛な心境を訴える生前のヴィデオがピナの絶望にかさなる。
　人間の心はカネで買えないといったドラマだが、内容の軸は就職活動がうまくいかず、ホモ売春に入るチトを通じての風俗描写にある。オカマのママ（リト・シャララ・レイエス）との面接でハダカになるとき、チトのパンツが破れているのに生活感をあらわすも、ママにチンポを吸われるショットでお尻丸だし。売春仲間のジュネル（ジュネル・ハヴィエール）も客とホテルでお尻丸だし。ジュネルの部屋でチトがシャワーを浴びる際には、お尻のみならず、チンポもみえる。ゲイのゴーゴー・バーでダンサーになる踊りの練習をうけるところはおかしいが、店のステージではチトやジュネルのほか、全員がチンポを隠した全裸に近いかっこうで体をくねらせる。ビッグ・ボス（リト・ルナ）に呼ばれたチトとジュネルが全裸で四人の男たちからボディーを洗われ、全員が全裸になると、お尻のアップだけでなく、玉袋も映っている。ビッグ・ボスとのホモ・セックスでは、ジュネルのアヌスにチンポが入る。
　ヤクザに殺されたカルドが、近所の人たちに見物されながら、全裸で死体になって屋外に転がっていたり、とにかく男のヌードばかりなのにヘキエキ。一方のピナにはセックス・シーンが三回とオナニー・シーンが一回あるのに、服を着たままや、ブラをつけたままで脱がずじまい。ピナとカルドの情事をのぞいてもだえる太ったオバサン（セリア・ルカスタ）や、ピナがカネをくれないとカルドが相手する別の女（ハスミン・ブラック）といった、まったくハダカをみたくない女性も脱がず、さすがに不満が起きる。新人のサリー・サンティリアンはかわいく、太腿のアザをさらすミニスカがそそったが、ベッドで亡くなっているかっこうが全裸なのに、暴行のあとが残る身体をシーツに巻いていて肝心のパーツが隠れ、まったくもって不満。とくに熟女のメリッサ・メンデスのヌードを期待していただけに、演技はうまいものの、残念至極といいたくなる。
　自ら脚本を執筆のジグス・Ｆ・レクトは冒頭にラジオの声をバックに街の風景をおき、ごく日常にある出来事ですよとの暗示ではじめ、ピナがパンシット・ビーホンの中にシャブをひそませていたり、サーが店の引きだしにピストルを入れていたりの伏線でたくみに語るも、しょせんは六十分ほどの中編なので、深みを欠くのが惜しい。
　低予算のディジタル作品の限界かもしれない。