ＫＡＨＩＴ　ＷＡＬＡ　ＫＡ　ＮＡ
（もうあなたがいなくたって）
　
89年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：エマヌエル・Ｈ・ボルラサ
主演：シャーロン・コネータ
　　　 リチャード・ゴメス
　　　 トントン・グチェレス
　　　 チェリー・ヒル
　　　 チャンダ・ロメロ
　　　 トミー・アブエル
　　　 ミラ・デル・ソル
　　　 スザンヌ・ゴンザレス
　　　 サイモン・ソレル
　夫の浮気によって家庭が崩壊する人間模様は、二十代後半以降のシャーロン・コネータが演じる題材の定番といえるかもしれない。
　サイモン・ソレル演じる幼い息子とともに中流のめぐまれた暮らしにあった妻のシャーロンが、ある夜、リチャード・ゴメス演じる夫がチェリー・ヒル演じる秘書を自宅に連れこみ、イチャつくのを目撃。すぐにリチャードを追いだすや、チェリーと一緒に去っていく。チャンダ・ロメロ演じる友人に相談して泣き、ティタ・ムーニョス演じる母にすがるも、ジュニー・ガンボア演じる義父に皮肉をいわれ、とにかく生活が維持できなくなって安アパートに移ると、近所のモサどもの冷やかしを浴びる。ティナ・ロイ演じる子守りに給料が払えないために辞めてもらい、サイモンをかわいがっていたティナと涙の別れのあと、家賃の前金を母に借りたので、仕事を探しまわる日々に。一方のリチャードはチェリーとラヴラヴだったものの、性格が悪く、ワガママなのに不満を感じ始める。ベッキー・ミサ演じる大家の身内にあたるトントン・グチェレス演じる青年が越してきて、モサにからまれたシャーロンを助ける。トミー・アブエルが社長を演じる会社に就職が決まり、サイモンの子守りがいなくて困っていると、働き口のないトントンが引きうける。 サイモンが父親の不在でシャーロンに反抗的になる反面、トントンによくなつき、実の親子以上に心をかよわせる。トミーがシャーロンを気に入ってオフで食事に誘い、高価なブレスレットを贈る。ミラ・デル・ソル演じるリチャードの母がシャーロンとトミーの会食を目撃し、事実を知ったリチャードが責めにきてトントンと殴り合い、サイモンが悲しむ。リチャードがリア・バレート演じる新しい愛人をつくり、チェリーがヒステリックに怒る。サイモンのことでシャーロンとリチャードがもめて、ミラも加わり、その最中にショックで自暴自棄になったサイモンが事故死。スザンヌ・ゴンザレス演じるトミーの妻がアメリカから帰り、不倫の相手はゴメンとシャーロンがブレスレットをトミーに返す。レティー・アグサルド演じる弁護士を入れて財産分与など、正式にリチャードとの離婚協議を始める。今さら寄りを戻そうとリチャードがノコノコ現われたとき、チェリーがシャーロンとリチャードにピストルを向ける。トントンがとりあげて二人を追い払い、シャーロンにキスをする。
　これまでシャーロン主演作を何本も手がけたエマヌエル・Ｈ・ボルラサがオーソドックスに描くドラマながら、ホセ・ハヴィエール・レイエスのストーリーのもと、ホセとエマヌエルの脚本がうまくない。サイモンとトントンが梯子であがる廃墟のような草っ原の広場で遊んでいて、あとでサイモンが落ちるに違いないぞと簡単に予想がついてしまう。サイモンが亡くなる展開は、人の死をクライマックスにおく、もっとも安易な作劇法。チェリーが銃を持ちだすのもパターンなら、撃たないとはいえ、武器の軽はずみな使用が不愉快。
　でも細部におもしろさを含み、シャーロンに面接したトミーがさっそくセクハラっぽい雰囲気で、化粧によってイメチェンでさらに興味を示し、日本食レストランで食事がカネ持ち趣味を表わす。ダイアン・ホセ、ローラ・ルナ、ミレット・アドヴィンクラ演じる同僚たちがトミーのアタックを笑ってみているようすも、階級社会の職場をにおわせる。ロナルド・ハイメ演じる男の同僚がシャーロンと食事のあと、ホテルへ入ろうとして嫌われるエピソードは、トントンがサイモンを子守りすることとの対比に意味をなす。リナ・レイエス、ミア・グチェレス、マイク・オーストリア演じるシャーロンの義理の妹弟やその妻の存在は、複雑な環境をチラリとうかがわせる。トントンがいつまでもブラブラなのをベッキーがしかり、就職活動で似合わないスーツを着るあたりが日本と同じ。シャーロンの手にふれて引っこめたり、葬儀でリチャードに軽蔑の視線を送るなど、内気な人物をたくみに表現して、さすがにトントンがうまい。ちゃんと葬式にティナがきている図も納得。
　シャーロンは無難に役柄をこなし、スターらしい存在感を放つ。サイモンを連れてトントンと海へいった思い出で、ワンピース水着に短パンをはいているのが、少しだけそそる。見どころはやはりチェリーのセクシーさに尽き、サイモンの寝るベッドでリチャードを脱がす冒頭からドキッとハートを射止めるうえ、リチャードと二人のベッドでスリップを披露のあと、プールのシーンがやってくれる。競泳っぽいデザインの白ワンピースが肌に貼りつき、水中のショットもあって、もうたまりません。二度目は薄い素材の虹色のワンピースでプール・サイドに腰かけ、ヒップラインがおいしそうに迫るのみならず、小さめのバストがプルンと揺れる瞬間に視線釘づけ。下半身のプロポーションが浮きでる白パンが座ったままなのは残念だが、デパートの試着で大胆に背中のバサッとあいたワンピースのドレスに大人の色気がきわまる。
　愛してます。
　あとスザンヌがそこそこキュートだった。