ＫＡＨＩＴ　ＨＩＮＤＩ　ＴＵＲＵＡＮ　ＡＮＧ　ＰＵＳＯ
（心は教育されなくても）
　
97年：グッド・ハーヴェスト・プロダクション
監督：フランク・リヴェラ
主演：トントン・グチェレス
　　 　マリア・ソヴィエツカヤ・バクド
　　 　シルヴィア・サンチェス
　 　　ロイ・アルヴァレス
　正義漢のマスコミがゴー・ゴー・ダンサーにホレるという設定に、スキャンダル劇かとイメージしたが、まったく違っていた。
　トントン・グチェレス演じるのはベスト・ジャーナリストにも選ばれる新聞記者で、ロイ・アルヴァレス演じる上院議員からの誘いも断る公正さ。真実が武器であるとの信念をもっている。それがマリア・ソヴィエツカヤ・バクド演じるＧ．Ｒ．Ｏ．をカネで買うベッド・シーンの出だしはちょっとヘンだぞ、とイメージするが、きっかけだからしょうがないか。
　なんて思うも、セクシーな下着を着させて興奮するシーンがあるから、男なんだなあ、と妙に納得。
　ヴィク・ヴェラロ演じる警官の協力を得て足抜けさせると、無教養な彼女の教育に熱心になる。そして結婚し、一児をもうけるわけで、よきパパぶりを発揮。これにシルヴィア・サンチェス演じるマリアの親友が、タイロン・スアレス演じるトントンの同僚と不倫しているエピソードをプラスさせるも、それほど生かされていない。
　トントンはＴＶのニュース・ショーを担当するようになり、その悪をあばく姿勢が逆恨みを買って暴漢に襲われる。でも屈せずに、買収工作にでたロイをわざと出演させて、中継の中で不正を指摘する。ついに怒り心頭となったロイはトントンの誘拐を強行し、拷問と甘いささやきという飴と鞭作戦で説得。自分を賞賛する記事を書かせたうえ、ＴＶでも素晴らしい政治家と紹介させる。
　一億ペソという裏金を受けとったトントンはマリアにアメリカへ逃げようと誘うも、マリアは人間が変わったトントンを非難。最初のシーンでトントンからもらったお金が多かったから狂喜するシーンがあったのに、ここでの拒否はいっけん筋が通っていないように感じるが、たとえ売春であっても労働賃金だから不正で得た収入じゃなく、教養はなくたって、心は彼女のほうがずっときれいだという映画のテーマがうかがえるようだ。
　当然ながら、そんな一億ペソもの現金をもらってただですむわけがなく、シルヴィアと家をでたマリアはロイにつかまってしまい、トントンにも追っ手がくるが、あぶないところを射殺。正当防衛かもしれないが、正義のマスコミがあっさりと殺人を行う点に疑問があるものの、とにかくロイとの対決になって、マリアから奪った赤ちゃんに拳銃をつきつけながらロイが「カネをよこせ」と脅迫するクライマックスになる。トントンが現ナマの入ったバッグを放り投げ、それをこれまた悪の権化のようなテシー・ヴィリアーラマ演じるロイの妻が拾いにいく。じゃあ、トントンがテシーに銃をつきつければいいじゃないかと思っていると、案の定そうなって「こっちだって妻を殺すぞ」の逆襲に、ロイは「一億ペソだぞ。そんな女勝手に殺せ」と答える。あきれたマリアが「あなたたちはそんなにカネが大事なの」と現ナマを舞いあげると、みんなが驚いた拍子にテシーがトントンの捨てた銃でロイを撃つ結果に。
　再び元の真実の人に戻ったトントンがＴＶのホストを続けるところで終わり。
　新聞社のセットがセコく、大統領も視野に入れている設定なのにロイの周辺もサムーい描写になっていて、ホント安手なドラマである。
　ヒロインのマリアがイマイチ魅力的じゃないのが、とくに不満な要素で、ゴー・ゴー・バーでのステージ・シーンなど、露出少なめの白いビキニからしてあまり興奮させてくれない。一応ブラははずすのだが、乳首がみえないまでも、もっと挑発してよって感じ。トントンにセクシーな下着で迫るところでは、大きめの黒いパンティーがどこかダサい印象。シャワーを浴びたり、泡風呂に入ったり、赤ちゃんに母乳を飲ませるシーンもあるのだが、目がテンにならないから困ったもの。唯一、買収のあとに人が変わったトントンからまたダンスを強要されてイヤイヤ踊るシーンで上半身ハダカにむかれると、サディスティックなセックスになるあたりは盛りあがりが弱いものの、終わって全裸のボディーをシーツで隠しながら泣くカットにそそるフェロモンがあった。
　まあ、映画全体が場末的雰囲気の作品だ。