ＪＵＤＧＥ　ＭＡＸ　ＡＳＵＮＣＩＯＮ　　ＨＵＫＯＭ　ＢＩＴＡＹ
（マックス・アスンション判事　死刑執行判事）
　
95年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：フランシス・“ジュン”・ポサダス
主演：エディー・ガルシア
　　　 エヴァンジェリン・パスクアル
　　　 マット・ラニーリオ・３世
　　　 エフレン・レイエス・ジュニア
　　　 ロッド・ナヴァロ
　　　 ルイス・ゴンザレス
　　　 ディック・イズラエル
　　　 ペルラ・バウティスタ
　　　 リト・レガスピ
　エディー・ガルシアがマックス・アスンションという実在の判事に扮する実録もの。本人の容貌に似せたのか、ハゲかつらでメイクし、頭をハンカチでふいたり、手でなでたりのしぐさをみせる。
　ストーリーはいくつかのエピソードをかけ合わせ、アマド・ラクエスタとフランシス・“ジュン”・ポサダスの脚本がそこそこに練ってある。冒頭に容疑者のカロイ（レイ・セラノ）に有罪判決をくだすと、傍聴していた母親（ペルラ・バウティスタ）が抗議し、父親（アウグスト・ヴィクタ）がショック死。カロイの兄のルーベン（マット・ラニーリオ・３世）がマックスに恨みを抱く。１９７７年にラグーナへ赴任で、先任のソロモン判事（ルイス・ゴンザレス）や警察署長のダニロ（エフレン・レイエス・ジュニア）、警察のチーフ（マンジョー・デル・ムンド）たちに迎えられる。犯罪シンジケートから裁判所が襲撃をうけ、ソロモンが亡くなる。ダニロが犯人一味（レヴィー・イグナシオ、トム・オリヴァル、ジョーイ・パディーリア）をつかまえ、ボスのラレド（ロイ・アルヴァレス）がマックスを脅す。市長（ロッド・ナヴァロ）が裁判所へ押しかけてきて買収をもちかけるも、マックスが拒絶。レイプ殺人を犯した市長の弟（ダン・フェルナンデス）の審議を始める。マックス宅に棺おけの模型が届き、市長かラレドが怪しいとにらむ。実際にピストルを手に現れたラレドを撃退する。五年後、刑務所でいざこざからラレドの部下たちによってカロイが殺され、ルーベンがマックスへの復讐を決意。教会で射殺を試みるも、理を説くマックスの言葉に銃をおろす。市長が助手（ディック・イズラエル）や配下（ベルティン・ラブラ）とともにマックス宅へ嫌がらせにくると、弁護士である妻（エヴァンジェリン・パスクアル）が毅然と応対。結審でマックスが市長の弟を有罪にする。ラモス将軍（のちの大統領）からの辞令でマックスが最高裁の判事の一員に抜擢となり、ダニロや裁判所の事務員（ポチョロモンテス）、秘書（ラヴリー・リヴェロ）の祝福をうけながらケソン・シティーへでる。アキノ政権発足のニュース映像の挿入、息子を演じるのがレノン・セラノからシンタロ・ヴァルデスに変わることで時間の経過を示したあと、大量の武器を保有していたアベーリア大佐（リト・レガスピ）が逮捕され、クーデター未遂として国民の注目を集める。この事件の担当を決めるクジを司法長官（トニー・マベサ）が引くと、マックスに当たる。助手の仲介でラレドと組んだ市長が新聞でマックスの所在を知り、助手とラレドがケソンのマックス宅を襲って息子が撃たれる。ダニロが市長をつかまえ、マックスに市長が泣きを入れるも、きっぱりはねつける。大佐の判決の日がきて、裁判所の前では軍隊がヘリまで動員し、対立する部隊が戦闘を繰り広げ、途中にチェック・ポイントをもうけてマックスの入廷のジャマをはかるが、傷をおったのを隠しつつ、マックスが遅れて法廷に到着。こないと思った周囲を驚かせたうえ、法の信念を貫いて大佐に無罪を告げる。
　ソロモンにマックスがナイショに銃をおさめる厚い六法全書型のケースをもらい、いつも脇にかかえていて、ピンチのときに中からピストルをとりだすあたり、小道具の使いかたに配慮を感じるも、おそらく『ショーシャンクの空に』にアイディアをいただいたのだろう。公正な裁きのシンボルとして天秤をかざす目隠しの女神の像が裁判所の入り口にあり、ダニロの部下たちの銃撃で穴だらけになって、しばらくマックスの怒りの象徴のように映しながら、最高裁へ栄転で出発の際、新しい女神像が立っているのも小道具の活用法。背後の陰謀を訴える大佐の審議のゆくえを観客が参加する図式で進めるなど、フランシスは意欲的な演出をみせる反面、市長やダニロのマックス殺害計画がおよそ脳みそをしぼったとは思えない行き当たりバッタリのバカっぽさにあきれる。ダニロの車が爆発の安易さに落胆が起きるうえ、市長のキャラがカリカチュアをなさないおマヌケぶりだから、説得力を著しく弱める。
　まあ、エディーの人間味をかもす演技が唯一のみどころか。
　秘書役のラヴリーの美貌もときめく点。ソロモンが「魅力的じゃないか」と耳打ちするのにうなずくし、マックスを見送るときに涙を流してマックスが「結婚で子どもができたら、知らせてくれ。名づけ親になる」という雰囲気が、けっこうジーンと伝わってくる。市長の弟の裁判では被害者の母親（ナティー・サンチャゴ）の証言が再現映像になって、殺された被害者（ミシェル・パートン）のトップレスの死体があがるも、うつ伏せでオッパイがみえないままが残念。市長と風呂に入る女性二人も泡で裸体をおおう。
　なお市長の妻にデクスター・ドリア、市長のボディー・ガードにボーイ・ロケ、ダニー・ラブラ、大佐を逮捕の士官にジョニー・ヴィカール、ロリー・ベルナルド、諸々の裁判の被告にロベルト・ミレル、ロミー・ロムロ、クロイド・ロビンソン、ボーイ・アラノ、検事と弁護士にジョン・アチャヴァル、ジョーイ・ガルヴェス、ローラ・ルナ、ペン・メディナ、ナンディン・フェルナンデス、ガミー・ヴィライ、アーチー・アダモス、ノノン・タルヴォなどがチョイ役出演。ラグーナにおけるマックスのスタッフで顔をだすアンナ・マリー・カラメロ、ジュリー・ロレタ、エレーナ・リミタレス、ケソンにおけるドーンリンピエッテ、ロウェナ・カルデナス、ビン・マバヤドの中に美人はいなかった。