09年：ジュビリー・エヴァンジェリカル教会／ユース・フォー・クライスト・プロダクション／ジュビリー・クリスチャン・アカデミー
監督：ポール・ソリアノ
主演：ソリマン・クルース
ジョエム・バスコン
トニ・ゴンサガ
ジョン・マナロ
トリシャ・ルイーズ・カネテ
アテナ・ティビ
チア・プシット
かつて家族を捨てた父親が愛をとり戻すまでの物語で、いわゆる良心作。
日本、香港、台湾などで働いたダンテ（ソリマン・クルース）は年齢が引っかかって次の就労先がなく、フィリピン国内に仕事を探して新聞をながめていると、葬式の案内広告に自分の妻だったエヴァンジェリン（ラライン・アリヴィオ）の名前をみつける。葬儀場へきてみれば、長男の妻のゲール（トニ・ゴンサガ）が親切に応対も、今さらのこのことなにと長男のラフィー（ジョエム・バスコン）がつめたく追いはらう。偶然に軽い交通事故で父親にケガをおわせ、とりあえずはダンテがラフィーの家にとどまることになる。海外の就職のあっせん業をいとなむ叔母のネニータ（チア・プシット）にゲールがダンテを紹介し、ネニータがすごく気に入る。
とにかく人物のキャラクターづけが類型的になり、ダンテがミュージシャンのせいでラフィーが音楽を嫌い、ハイスクールにかよう息子のジェーク（ジョン・マナロ）がバンドを組むのをこころよく思わない。葬式中にラフィーがガールフレンドのアンナ（アイスリン・リム）にギターを弾くのにキレそうで、ゲールがとめる。ダンテが滞在でジェークにピアノを教えるのも不快に感じる。ジェークの妹でダンテの娘のクリスティン（アテナ・ティビ）が夫のヘンリー（ランス・レームンド）の浮気に悩み、家出と和解をくり返す。父を許さないラフィーの不寛容さをゲールが責めて、十七歳でジェークを妊娠のときにラフィーがいったん捨てた過去を同じだという。投資会社を経営のジェークが資金難におちいり、窮地を支える秘書のエミー（ララ・モレナ）と不倫に走るかもの雰囲気がにじむ。誰もが不和の状況でパターンの構図をつくる。
クラリサ・エストゥアル、ジェウェル・カストロ、アドルフォ・アリックス・ジュニア、アグネス・デ・グスマンのストーリーによるクラリサ・エストゥアル、ジェウェル・カストロの教科書的な脚本をポール・ソリアノがそつなくあつかい、プラスにもマイナスにも破たんのない構成をなす。
ビジネスのイライラが重なってラフィーがジェークにあたり、ほとんど家庭崩壊のとき、ラフィーとゲールの幼い娘のティンカ（トリシャ・ルイーズ・カネテ）が後悔のラフィーに「謝ればいいのよ」とささやけば、そうかとラフィーがゲールに謝罪ですぐにゲールも謝って、こんな単純なことで解決は確かに現実っぽいかな。直接、クライアントのロペス氏（ヴァル・ヴィクタ）にラフィーが説明におもむき、使いではなく本人がきたとロペス氏が信頼を回復はちょっと生ぬるい。
ネニータがクウェートに仕事をみつけて書類作成の健康診断でダンテにガンが発覚。結局は死にのぞんで家族の絆のありがたさに浸り、ダンテが安らぎをえる内容に、なんだ、このレヴェルかの軽い失望をおぼえる。良心作の限界を感じる。
しかもダンテが牧師（ジェー・バンスエロ牧師）と語らい、病気のピアニストにかわって教会で演奏のボランティアをうける。うまくできないかもと断わりつつも、ミサに参加で神の大きさを確認の信仰に救いを求めるありがちな展開。しょせんはフィリピン流のキリスト教べったりの安易な話に落胆がおきる。
もっとも、そもそもがジュビリー・エヴァンジェリカル教会の制作による布教が目的の映画だけに、宗教賛美は当たり前。甘いものが嫌いなら饅頭は食わなければいいわけで、饅頭を食って甘いと文句をいうのは筋ちがい。食ったあんたがバカ。
こころざしが高いせいか、個人的に低俗な表現を避ける傾向が不満になり、幸福があふれる家族がプールで遊ぶ光景をダンテがながめるラストにおいて、トニ・ゴンサガとアテナ・ティビが水着のうえにワンピースを着て肌の露出を欠くのにイライラが残る。人気スターのトニ・ゴンサガは、あらためてさほど美人じゃないと思う。アテナ・ティビとアイスリン・リムが中ぐらいのかわいさかな。アテナの下半身にぴったりの茶色のパンツとジーンズに視線を奪われる。かつてのセクシー女優のララ・モレナは容貌がタイプの外だが、色気を漂わせる。
また、海外就労が主体の社会のほか、葬式に泣き女（テリー・マリポサ）を用意や、ティンカの部屋にディズニーのキャラクターがいっぱいのあたりにフィリピンの体質がうかがえる。医者（アーチー・アダモス）がダンテと余命の会話にフィリピンのガン告知がわかる。看護婦役のキンバリー・タンがちょっと気になる。
