ＪＡＣＯＢ　Ｃ．Ｉ．Ｓ．
　
95年：リーガル・フィルムズ
監督：レオナルド・ガルシア
主演：エース・ヴェルヘル
　　　　アラ・ミナ
　　　　リト・レガスピ
　　　　ダン・フェルナンデス
　　　　オーロラ・セヴィーリア
　　　　ボブ・ソレル
　　　　ダニエル・パシア
　麻薬取り引きの現場に車でつっこんで激しい銃撃戦になる冒頭のシーンから、またもおなじみの犯罪アクションかと思わせるが、途中の展開にちょっと意外性がある。麻薬シンジケートのボスを追っていく過程で、エース・ヴェルヘル演じる主人公がボスの身内であるオーロラ・セヴィーリアとアラ・ミナ演じる親子と親しくなり、娘のアラがジジ・サンチェス演じる友人とともに悪党どもからレイプされそうになる。友人は殺され、アラは何とか助かるのだが、犯人の首領格が市長の息子で、逮捕に抵抗したためエースに撃ち殺されて、ストーリーは報復合戦に変わる。いわば犯罪捜査ではなく私怨による戦いで、リト・レガスピ演じる市長の、エースのプライヴェートへの攻撃が執拗に続くことになる。自宅への襲撃でオーロラが撃たれ、その死の床でエースとアラが神父を呼んで結婚式をあげ、夫婦となったのを見届けた直後に息を引きとるというシーンは、いかにもドラマティックにしようとの意図が丸みえで、ありきたりなアイディア。エースのグレンダ・ガルシア演じる先妻との間にもうけたジョアンヌ・ミレル演じる幼い娘も殺され、こうなると残酷すぎて、エースはよく恐怖も感じずに毎日生活できるものだとの疑問すら生じる。フィクションとして、構成がイマイチだ。
　ダン・フェルナンデス演じる主人公のパートナーが、いったんはカネのために裏切るのだが、再び寄りを戻す描写にも、もっとケンカがあってよかったのではないか。
　でも麻薬を追う話だと思っていただけに、こうした復讐の惨劇が展開するのは、アレッと思わせて面白みがあるながら、やっと市長一味をやっつけてみれば、背後にはさらにボブ・ソレル演じる悪徳議員の存在が判明。伏線がいっぱいあったとはいえ、また話は元へ戻って今度は議員一味との対決が待っているとは、ご都合主義というよりも強引すぎて、いくら単細胞なアクションものとはいえ、もっと筋を練ってくれよと思う。
　まあ冒頭のシーンと、ラストのエースと議員の一騎打ちになるシーンでのカー・アクション、墓地での銃撃戦とヘリコプターとの対決は、Ｂ級なりによくやっていると評価したい。
　主人公のエース・ヴェルヘルは、典型的なヒーローを演じるスターとしてかなりの人気のようだが、個人的にこの映画をみたのは相手役にアラ・ミナが出演しているからに尽きる。まだセクシー・スターになる前のアラだから露出はなく、レイプされそうになるところも服を逃がないまま。ジーンズすら身体にフィットしたものをはいていないのだから、あらためて『Ｉｎｉｔ　Ｓａ　Ｔａｇ−Ｕｌａｎ』から彼女は大変身したんだなあと納得する。襲撃戦の間もただ泣き叫びながら逃げているだけで、あの悪魔的ともいえる魅力はまったく未開なのが残念。具が大きくて濃いめの容貌も、十分に洗練されていない。それでも見せ場はあって、エースとの初夜のシーンで、処女膜を破られて痛さをこらえる表情がアップになる。
　もちろん演技でだが、アラの処女喪失がおがめただけでも、ファンとしては映画の価値を認めたい。