Ｉ’ＶＥ　ＦＡＬＬＥＮ　ＦＯＲ　ＹＯＵ
　
07年：ＡＢＳ−ＣＢＮフィルム・プロダクションズ
監督：リノ・カエターノ
主演：キム・チウ
　　 　ジェラルド・アンダーソン
　　 　アルベルト・マルティネス
　　 　ロイド・サマルティノ
　　 　チンチン・グチェレス
　　 　ロトロト・デ・レオン
　　 　アーミー・ペレス
　　 　ケチャップ・ユーセビオ
　キム・チウとジェラルド・アンダーソンのコンビによるアイドル映画で、まさに青春ロマンスとしていい気なものよとあきれるばかりのくだらなさ。
　同じアレックス・レイエスの名前をもつ若い男女が主人公で、女性のアレックス（キム・チム）は学費が必要。男性のアレックスはマウンテン・バイクに夢中。ちょうどマウンテン・バイクの大会があり、ペアーが出場の条件で男性のアレックスが相手を探す。賞金が五万ペソと知って女性のアレックスが男性のアレックスとティームを組む。その間に女性のアレックスが男性のアレックスを嫌っていたが、ふたりにときめきが生まれるわけである。
　メル・メンドーサ・デル・ロサリオ、フランシス・ブライアン・ルア、チエ・Ｅ・フロレスカのストーリーによるメル・メンドーサ・デル・ロサリオの脚本は、これに女性のアレックスの父（アルベルト・マルティネス）と男性のアレックスの母（チンチン・グチェレス）に過去があるドラマを盛りこむも、それだけのこと。
　フィリピン大学の合格発表にはじまり、フィリピンにも受験の存在をうかがわせる。女性のアレックスの家族が母のヴァンジー（ロトロト・デ・レオン）と母の友人でアレックスの後見人（アーミー・ペレス）と屋外レストランを営み、その場でアレックスが牛の乳をしぼってミルクセーキをつくるのが興味深い。アニメ好きがレストランに集まるとき、少年ジャンプがどうしたと話すあたりがおもしろいも、あまりオタクっぽくないと思っていたら、アレックスも参加のコスプレ・パーティーにつながる。さもキャラっぽいコスチュームの出席者たちがうろつくが、やはりどこか日本の萌え連中と異なる。フィリピンなので当然か。
　コスプレ・パーティーで男性のアレックスが女性のアレックスと知り合い、自分の車をもつ男性のアレックスが経済的にめぐまれ、ジンガポールで育ったとわかるうえ、オーストラリアに住む父（ロイド・サマルティノ）とパソコンのＴＶ通信で話すも、母のテッサと父が離婚の危機に瀕する。女性のアレックスの家にボケたふたりの祖父（クロイド・ロビンソン、ジョニー・バーンズ）がいる、なんて双方の環境がちょっとひねりを含むながら、とにかく大衆向けの娯楽作のせいか、世間をなめたような展開が共感を呼ばない。
　途中でゴー・カートに乗ったりは単純な彩りの追加にすぎず、肝心のマウンテン・バイクの練習に真剣さがイマイチ。だからこそ、もし優勝だと笑ってやろうと感じたが、二位にとどめるものの、レースに過酷さがにじまなくて甘っちょろい。
　なめてますねえ。
　それぞれ父のジョナタンと母のテッサの恋愛が自分たちの立場を苦しめるも、アイデンティティーを問うほどの悩みに遠く、薄っぺらは確信犯だろう。
　リノ・カエターノがファンに夢を与えるためにリアルな表現を避けたのが手法的に納得とはいえ、いい気なものねとの印象はいかんともしがたい。
　キム・チウにさほど魅力をおぼえないあたりが個人的に弱いところで、自転車に乗るときの白い短パンなど、もっとセクシーなら視線を奪ったかもと惜しくなる。コスプレ・パーティーで衣装が破れても、下にちゃんと短パンをはくし、紫と白いミニスカの下も短パンをはく。男性のアレックスと池に入ってハシャイでもシャツがスケる誘惑がゼロ。男性のアレックスと谷間の川を歩くシーンにも濡れるシチュエーションがほしかった。
　脇では男性のアレックスの友人を演じるケチャップ・ユーセビオとともに、女性のアレックスの友人を演じるカティー・ゴンサガ（別名：アレックス・ゴンサガ）がユーモアのプラスなどに少し貢献も、実姉のトニ・ゴンサガよりもかわいいかなと感じるのに、まったくセクシーさを欠く。女性のアレックスの妹を演じるマイルス・オカンポは、まだ子ども。女性のアニメ仲間を演じるヴェヌス・ファハルドとセット・セット・カヌラスはほんのチョイ役。
　熟女だとチンチン・グチェレスの赤いドレスがチャーミングだった。