Ｉ．Ｔ．Ａ．Ｌ．Ｙ．（Ｉ　ＴＲＵＳＴ　ＡＮＤ　ＬＯＶＥ　ＹＯＵ）
　
08年：ＧＭＡフィルムズ
監督：マーク・Ａ・レイエス・Ｖ
主演：ジョリーナ・マグダンガル
　　　 ルーファ・メエ・キント
　　　 デニス・トリーリオ
　　　 ユージン・ドミンゴ
　　　 マーク・ヘラス
　　　 リーアン・ラモス
　　　 マーヴィン・アグスティン
　豪華客船を舞台に展開のラヴ・ロマンスでコメディー。海外就労がテーマなのがフィリピンっぽいといえる。
　歌手志望のデスティニー（ジョリーナ・マグダンガル）は家族を支えるため、地中海を周遊の豪華客船の仕事を申しこむが、希望の歌手はダメで客室の清掃係になる。結婚式を前にフラれた過去がトラウマの中年女性のラヴリー（ユージン・ドミンゴ）が先輩の清掃係。船内の歌手のステラ（ルーファ・メエ・キント）は少女時代（ニコル・ドゥダリア）に父（マイク・オーストリア）が母（エリサ・リヴェラ）を捨てた苦い記憶をもつ。客室案内係のネータン（マーク・ヘラス）はガールフレンドの二股で双方を失い、母に責められて自信を失う、と各人がワケありで仕事につく。
　デスティニーとステラは同じフィリピン人の船客にほれてお互いに相手の足を引っぱるいがみ合いのうえ、ついにケンカも、当の客のパオロ（デニス・トリーリオ）は別れたイタリア人の妻のソフィア（アンドレア・デ・ルゴ）を思い続け、その記憶しか頭になく、こちらもワケあり。ネータンは客のフィービー（リーアン・ラモス）にひと目ぼれながら、はたして母（イダ・ルシーリア・ヘナレス）のガードが固いフィービーの気持ちをつかめるか、なんて話が適度な観光要素の盛りこみで進む。
　冒頭、デスティニーがマニラのパシグ川のクルーザーに乗りながら、ゴンドラを夢みるヴェネツィアに始まり、客船が出航のサヴォナ、パオロがソフィアとの幸福な日々を回想のローマとピサとフィレンツェ、デスティニーがラヴリーと歩くバルセロナ、ステラがパオロを連れだすチュニス、デスティニーが同行でパオロがソフィアの実家を訪ねるジェノヴァ、船に乗り遅れたデスティニーとパオロが再乗船のナポリ、ナータンがフィービーとデートにこぎつけるマヨルカ島のパロマ、デスティニーのためにステラが声のでないふりをラヴリーに示すマルセイユ、と各地をめぐるも、あまりくどくなく、さり気ない紹介がよい。トレビの泉でパオロとソフィアのコイン投げもでてくる。
　ジェノヴァの実家でソフィアの死を知ったパオロが悲嘆に沈み、遺灰をうけとると海にまき、ソフィアに子どもがいたとわかり、その子に希望をみいだすエピソードがほろりとさせる。
　まあ、和解のデスティニーとステラに友情が生まれ、ステラが喉をやられたと訴えてデスティニーに船内のステージで歌う機会を与える、予定調和のありがちな内容。お嬢さまのフィービーを現実的に従業員のネータンが口説けるわけがない。また、パオロは客だけど、雇われ人のデスティニーが出航に間に合わず、次の港でまだ仕事があるなんて、世間をなめすぎ。
　海外就労はこんなおとぎ話じゃないも、ちゃんと「海外で厳しい仕事につく就労者たちに捧ぐ」とクレジットが入り、マーク・Ａ・レイエス・Ｖなどの作者は商業娯楽作とわり切って、意図的に軽いご都合主義のフィクションにとどめたに違いない。しかもラヴリーが船長（アントネッロ・アンヌンツィアタ）にプロポーズされ、帰国の六ヵ月後にマニラのパシグ岸でデスティニーが素敵な男（マーヴィン・アグスティン）と出会い、一年後にデスティニーとステラとラヴリーがトリオを結成で歌手に進出のエピローグつき。
　マークの演出ともども、セネディー・ケの脚本がとことんリアリズムを避ける。
　ただしデスティニーの三人の弟（アルジュール・アブレニカ、エドガー・アラン・グスマン、ホアキ・ヴェルデス）がデスティニーの送りだしにブタのぬいぐるみを贈り、病弱な父（ペン・メディナ）とデスティニーが心をかよわせ、航海の途中で連絡を入れれば父が涙のしんみりさは、いつでも家族が第一のフィリピン人の精神構造を反映で、ちょっと納得が起きる。
　デスティニーがブタのキャラクター・グッズを好み、立体のブタが表紙のノート、ブタの絵のＴシャツ、ブタの置時計などブタ尽くしは笑えるかな。
　女優陣の顔合わせはジョリーナ・マグダンガルがしっかり歌を披露し、主役をになうが、色気にほど遠い。ユージン・ドミンゴは船長との初夜でドタバタをくり広げ、個性派のパワーをみせる。リーアン・ラモスはドレスがキュートだが、個人的にジーンズに視線を奪われる。アンドレア・デ・ルゴはイタリア人なので、評価の対象外。セクシーさではルーファ・メエ・キントがとどめを刺し、恋人（マーク・アレハンドレ）の車から降りる際のバストが揺れる胸元の切れこんだワンピースに始まり、ステージの衣装がいずれもバストを強調のうえ、プロポーションが浮きでる光沢素材や下乳を露出のタイプだし、船内でミニのボディコン、白い短パン、キャミソール型のワンピース、胸元が大きく開いたスリップに似たシャツ、甲板で胸元が大胆なワンピースとそそり、つくりもののオッパイとわかっていても悩殺をうける。とくに白いビキニ、黒いビキニの水着に興奮。
　ほかに出発前のベイ・ウォークでデスティニーに適当なアドヴァイスをのべるニセ占い師役のチャリス・ソロモンがひょうきんなおかしさで、ネータンをひっぱたくふたりの恋人役は女優名がわからない。
　二枚目のデニス・トリーリオがパンツ一丁は、女性ファンへのサーヴィスだろう。