ＩＳＩＮＡＫＤＡＬ　ＫＯ　ＡＮＧ　ＡＫＩＮＧ　ＩＮＡ
（私は母を提訴する）
　
97年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：メル・チョングロ
主演：スーザン・ローセス
　　　 ウォーウィー・デ・グスマン
　　　 エディー・グチェレス
　　　 ロナルド・ヴァルデス
　　 　アンジェルー・デ・レオン
　　　 リッキー・ベルモンテ
　　　 グラディス・レイエス
　　　 ダリア・ラミレス
　　　 ジェラルド・エヘルシト
　　　 マリタ・ソベル
　世代差のある数名のカップルによる愛憎劇をたんたんと繰り広げ、昼メロを一気にみたような印象。
　リッキー・ベルモンテとダリア・ラミレス演じる夫妻の間に二人の男の子がいて、リッキーは弟のほうばかりかわいがり、兄のほうに冷たい。近所にはエディー・グチェレスとマリタ・ソベル演じる夫婦が住んでいて、エディーが兄のほうに親切をかける。兄弟が大きくなるとウォーウィー・デ・グスマンとジェラルド・エヘルシトが演じ、リッキーがウォーウィーに犯罪行為を強いたりのあと、ついに家から追いだし、ウォーウィーはエディーのもとで育つ。一方で高級住宅にロナルド・ヴァルデスとスーザン・ローセス演じる夫婦が暮らし、アンジェルー・デ・レオン演じる娘を持つも、関係がすっかり冷え切り状態。ロナルドにはミア・グチェレス演じる愛人が存在し、もはや公認の仲になりつつある。どうやらスーザンとエディーは過去に愛し合ったらしく、スーザンがエディーの思い出を振りきらないのにロナルドは不満のようす。
　ドラマはマリタが倒れ、入院先でエディーが女医のスーザンと再会の偶然から始まる。ウォーウィーは車の整備を勉強したあと、スーザン宅に雇われ、アンジェルーの運転手に。当然、二人にはロマンスが芽ばえていく。ケンカで刺されたジェラルドが退院のとき、ダリアをみかけたスーザンが思わず声をかけ、「息子は？」と問うているから、だんだんと人間の構図が明らかになってくる。スーザンはエディーとの子をダリアに預けたのだが、リッキーはスーザンの子がウォーウィーであると知りながらも、カネ持ちにたかるため、ジェラルドを差しだす。
　ニセの子が本当の子を使用人として見くだすシチュエーションや、いつ周囲が反対と気がつくかにもうひとつサスペンス不足のうえ、ウォーウィーにはグラディス・レイエス演じるガール・フレンドがいたのに、ジェラルドがアンジェルーとのことをグラディスにちくり、グラディスが嫉妬からスーザンにたれこむ展開は、さしてあとに生きてこない。エステル・チャヴェス演じる教母が身体にあったアザを指摘でジェラルドを替え玉と見破る手法は、いかにもありがちなアイディア、などのイマイチな進めかたのうちにダリアの告白から真実が発覚も、ウォーウィーは自分を捨てた母に恨みを抱いていたため、裁判へ発展。トニー・マベサ演じる父によって無理やり引き裂かれたスーザンの回想のあと、エディーが法廷へ現われ、ウォーウィーが初めて実父と知るのがクライマックス。さすがにここは、ちょっと興奮が高まるかな。
　続くリッキーとジェラルドがアンジェルーを誘拐のエピソードは、ドンパチを盛りこみたいサーヴィス精神と好意的に解釈も、はっきりいって安易さを助長したのみ。
　途中、マリタが病死は裁判の際にエディーが出廷する妨げをなくす目的かとうかがわせるうえ、エディーとスーザンの再会現場を目撃のカレン・デロス・サントス演じるエディーの娘や、事実を胸にしまっているはずのアニータ・リンダ演じるエディーの母など、からませかたのまずい人物も登場。アンジェルーがミアの子とわかるのは、リッキーに撃たれたアンジェルーへミアが輸血を提供する和解の設定をちゃんと設けるも、種違いの兄妹ならウォーウィーとの恋愛が成立しなくなるための逃げ工作っぽい、といったご都合主義に思えてしょうがない。
　まあ、いかにも通俗フィクションというか、ホント昼メロなのだが、２時間18分にもおよぶ長尺を退屈させずに引っぱったメル・チョングロの演出力はさすがだ、と素直に拍手を送りたい。
　ところで個人的にはウォーウィーとのデートの流れでプールへ行き、アンジェルーが水着を披露がとくに嬉しい点。虹色ワンピースで露出少なめタイプながら、カワイイっと声がでそう。ラストでケガから回復し、グラディスの謝罪を受けるのはビーチで、ウォーウィーと浅瀬に入り、水をかけ合う際にシャツから赤と黄色の水着がスケていて、ドキドキッとそそる。
　グラディスとキムにもセクシーさがほしかったところだが、とりあえずグラディスは白いパンツ・ルックからスタイルのよさを浮きだたせ、うーん、ステキー。若い頃のスーザンを演じたファラー・フローレルは、もっとよくみたかったなあ、との感じ。
　あと裁判長役のジョシー・タグレ、女医仲間役のテッシー・ヴィリアラマを含め、おばさん女優ゾロゾロのパワーには、ただただ圧倒されるのみだった。