ＩＮ　ＹＯＵＲ　ＥＹＥＳ
　
10年：ＶＩＶＡフィルムズ／ＧＭＡフィルムズ
監督：マック・Ｃ・アレハンドレ
主演：クローディン・バレート
　　　 アン・カーティス
　　　 リチャード・グチェレス
　　　 ジョエル・トーレ
　アメリカ合衆国のグリーン・カードの取得にからむ三角関係のロマンス劇。
　まずはアンジェリー・ニコレ、ソフィア・バアル、アンナ・ダニエーリエ・ヴィセンテが少女時代を演じるシアラの生いたちを冒頭で素早く示す。妹の出産時に母が亡くなり、モニカ・ナグハット、ルイーズ・イノセンショが演じる幼い妹のジュリアを母がわりで育てる。シアラをクローディン・バレート、ジュリアをアン・カーティスが演じる娘の年齢になったとき、父（レーモンド・ラウチェンコ）も亡くなる。姉妹はアメリカ合衆国に自分たちの家を建てる夢をいだく。シアラが看護士でアメリカ合衆国に仕事をえて、夢への第一歩を踏みだす。
　妹を呼ぶためにシアラがプライヴェートを犠牲に働き、恋人のデニス（レアンドロ・ムーニョス）が待てないと去っていく。一方のフィリピンのジュリアは恋人のストーム（リチャード・グチェレス）と遊びほうける。ドライヴでジュリアが運転中のストームにイチャつき、危険な蛇行にむかつきをおぼえる。ストームはバーでくわえタバコだし、こんな連中にまったく共感がおきず、いきなり導入部で駄作の予感が走る。
　アメリカ合衆国の領事館でジュリアが留学ヴィザの説明をうける部分が好奇心をそそり、最初からジュリアが条件を守るつもりなど皆無で不法滞在を決めこむあたりが現実的かな。ジュリアに同行でストームも父（レイ・“ＰＪ”・アベリアーナ）に旅費を頼んで渡航ながら、留学じゃないのにヴィザはどうしたと疑問が生じる。
　ジュリアはカレッジに入学のうえ、中国（韓国？）人相手の語学学校で英語教師の仕事につく。カメラマンのストームは写真店で仕事をもらうが、不法就労の身分に雑用係で同僚（ジオ・アルヴァレス）の制止も聞かずに雇い主の横暴にキレる。こんなワガママ野郎にまったく共感がおきず、またも中間部で駄作の実感が走る。不法滞在でなくなればストームが希望の職をえる甘さが実情をなめているといえる。
　ストームの強制送還を避けるためにジュリアの泣いて説得にシアラが負け、ストームと偽装結婚で先が読める。アメリカ合衆国の入国審査官が調査に現われるハラハラ期間と、しばらくは嫌々のはずが、なにかの拍子でストームとシアラに愛が芽ばえ、ジュリアが気づくまでの知らぬが仏のおじゃま虫期間のあと、ふたりの裏切りにジュリアが反発のドラマに決まっていると察しがつく。ケイコ・Ａ・アキノの脚本がパターンどおりに展開し、興味の対象はいかに結果をつけるかのみなので、途中の過程がたるいばかり。
　シアラが勤務する病院のフィリピン人医師のオルフィンド（ジョエル・トーレ）が妻のディーナ（アイリーン・セレブレ）をアメリカ合衆国へ呼ぶものの、いったん離婚でスージー（フランセス・イグナショ）とグリーン・カードのために結婚のさい、本気でスージーを愛してしまうサブのキャラクター像がカネ目的か、同胞の助けあい目的かの意識がはっきりせず、シアラを圧迫の要素にダブらない計算たらずは演出のマック・Ｃ・アレハンドレの責任か。
　ジュリアがモデルのアルヴァイトをうけるも、ポルノとわかってやめる風俗や、語学学校で銃撃に遭遇などでアメリカ合衆国の治安の悪さにくわえ、シアラがストームにシニガンを料理で食の違いをやんわりと挿入が適度の範囲は買えるが、シアラとストームがタバコのまわし吸いにアメリカ合衆国で医療従事者がバカなことをあきれ、いったいマック・Ｃ・アレハンドレはちゃんとアメリカ合衆国のライフ・スタイルを描く姿勢があるのかと不信感がつのる。ジュリアが帰国の何年かのち、仲直りでシアラの夢がかなった新居に住む渡米と、ストームが再度の渡米でヴィザはどうしたと根本的な疑問が生じる。
　ジュリアとストームがサンタモニカの海岸で再会の偶然は無理がきついし、ジュリアがベビー・カーを押す赤ちゃんはシアラの子とバレバレで、いかにもつくり話のヘタな語り口にうんざり。
　クローディン・バレートとアン・カーティスの魅力の薄さが退屈感に拍車をかける。ともにタイプをはずれるが、セックス・シーンはお約束で露出がおざなりも、一応はクローディンがベッドでストームと寝転ぶときにタイツのパジャマがお尻にくいこんで視線を奪い、シャワーでキスはお約束で露出がおざなりも、アンが車のイチャイチャでジーンズのミニスカ、ヨガのポーズで水着のブラと白い短パン、カミナリに驚いてストームの横からシアラの横へベッド・ルームを移動でランジェリー、語学学校の授業で黒いタイツのパンツ、ストームとベッドで胸元がチラつく黒いランジェリーに視線を奪うあたりは嬉しいが、やはりパンチに欠ける。
　ほかにシアラの同僚でカンの鋭いリザ役のマリカル・デ・メサは以前のセクシー・スターのイメージに遠く、シアラのアメリカ合衆国で暮らすフィリピン人コミュニティーの知人役のＪＣ・パーカーも同じ。ジュリアの友人で一緒に遊ぶチェルシー役のＣＪ・ジャラヴァタはもっと色気の際だつ衣装がほしい。ストームが写真撮影のモデル役のクリスティン・ヘルモサ、アンジェリカ・パスンバル、アレクシス・ナヴァロは出番が短すぎ。セクシー・ガールとクレジットに記載のサラー・ポルヴェリニはどこにいるのか不明で、デニスの妻役かと思ったものの、顔が違うし、バーでストームに接近の女性かもしれないが、いずれもオマケ程度の配役に終わる。
　まあ、フィリピン人がグリーン・カードに積極的と確認できるくらいの内容かな。
　実にささいなことだが、アメリカ人の患者がチアラと呼んでシアラといい直し、フィリピン人たちの会話でシャラと聞こえるフィリピン人の名前のカタカナ表記が難しいとわかる点がおもしろい。本来のリサはリザだし、フリアはジュリアで、アメリカ合衆国を舞台にとるばかりでなく、英語ふうの発音の一般化が進む状態もうかがえる。