ＩＮ　ＴＨＥ　ＮＡＭＥ　ＯＦ　ＬＯＶＥ
　
11年：ＡＢＳ−ＣＢＮフィルム・プロダクションズ／スター・シネマ・プロダクション
監督：オリヴィア・Ｍ・ラマサン
主演：アガ・ムーラック
　 　　エンジェル・ロクシン
　 　　ジェーク・クエンカ
　 　　ダンテ・リヴェロ
　 　　カルミ・マルティン
　　 　レオ・リアルプ
　　 　スモーキー・マナロト
　　 　ライアン・アイゲンマン
　エンジェル・ロクシンにポール・ダンスのシーンがあると知り、無視できなくなった。
　オリヴィエ・ラマサンの監督作なので、たるい展開ではとの予感が先立つが、日本ロケを含む内容に興味がおきる。
　タイトル・バックに玩具のロボットとともに太極マークのペンダントがうつされ、このペンダントは主人公ふたりの思い出の小道具に活用だが、どこか韓国とごっちゃに感じる。冒頭に東京セヴンという男性ユニットのダンスが登場で、アガ・ムーラック演じるエマンだけ中年の不釣り合いが無理のある設定。ユニットの踊る店内は日本らしいも、ちょっと違うぞと苦笑いのあと、エマンがフィリピンの家族に電話の街角や、帰国の成田空港で日本のロケがわかる。大量のドル札の違法もちだしが発覚でエマンがつかまるシーンに、音楽担当のヴォン・デ・グスマンが和太鼓を流す。別室における取り調べをリアルに描く。
　７年後のフィリピンにかわり、この程度の犯罪で７年もくらうかと疑問がもたげるが、とにかくきっかけのプロローグをなす。成田空港の入管職員を演じるスズキ・カダツグのプロフィールは不明ながら、日本のどの役者も自然な印象を残す。
　フィリピンの公共マーケットに続き、家族とエマンが鮮魚売り場で働くシーンの騒々しさが実際っぽく、旧知のマリリン（チキ・デル・カルメン）に近況をあれこれ質問ぜめに迷惑がるエマンから現状を伝えつつ、フィリピン社会の出稼ぎ体質が浮かぶ。エマンの兄のダン（エミリオ・ガルシア）は妻がサイパンだし、エマンの妻のエミリー（ディンプレス・ロマナ）は友人のニール（ボビー・アンドルーズ）とくっつき、エマンの息子であるミゴ（パウル・サレス）の教育を考えてニールが掃除夫の仕事をうけ、ニュージーランドへ一家で移る。この公共マーケットを知事のトニー（レオ・リアルプ）が私欲で移転をもくろみ、恨みをかうあたりは納得も、トニーの息子のディラン（ジェーク・クエンカ）が副市長に立候補で、怒りの住民に襲われるのを偶然にエマンが阻止の事件は虚構にうつる。
　国会議員に進出を決めたトニーが利権を維持のため、市長（ナンディン・ヨセフ）とつるんで二男のディランをかつぎ、政治に無関心のディランが不本意でも親の意思で選挙に乗りだす。長男のホメル（ライアン・アイゲンマン）が政治がらみの殺人の容疑者でイメージが悪いせいで、トニーとホメルが絵に描いたごときワルの典型に対し、ディランの善人ぶりが単純すぎてキャラクターづけがバカっぽい。エンリコ・サントスのストーリーによるエンリコ・サントスとオリヴィア・Ｍ・ラマサンの脚本が薄っぺらなら、オリヴィア・Ｍ・ラマサンの演出が表層的。
　まあ、しょせんは低レヴェル。
　ディランがダンサーのメルセデス（エンジェル・ロクシン）と婚約で、トニーが主催のパーティーでメルセデスがディランと社交ダンスを踊ることになる。ちょうどエマンがダンス・スクールを再開のとき、マーケットで暴漢の襲撃を救った縁でディランがメルセデスのコーチにエマンをおす。実はエマンとメルセデスが日本で恋人同士の間柄で、パーティー本番までの特訓の期間中にロマンスがよみがえる。との本筋において、エマンが服役の原因の事件がメルセデスの提案だった事実を回想で開示の流れで進める。偽のパスポートで入国のエマンの名前がガーリー・フェルナンデスに対し、メルセデスの苗字が同じフェルナデスなんて親しみで仲をはぐくみ、まだ以前に誰もバレていないとヤクザのマネー・ロンダリングの運び役をメルセデスがひきうける。ヤクザが暴力をふるう暗示や、トニーが日本のヤクザとコネクションのある設定もでてきて、よほど日本のイメージにフィリピンはヤクザがダブるらしく、じゃぱゆきにヤクザがかかわってきた実態がにじむ。
　先の成田空港で出国のシーンにはメルセデスの顔がみえないアングルから撮っていたショットのモンタージュを思いだす。ネタあかしの成田空港のシーンでは、エマンの逮捕に駆け寄ろうとするメルセデスをエマンの友人のトビー（マイケル・フロレス）とジョジョ（ジョシュア・サモラ）がとめた経緯を教える。
　もともとは政治家のボンボンとダンサーが結婚なんてシチュエーションが浮世もどきにすぎず、まして売春の過去をもつ女性となんて可能性がゼロのはずだし、まったくくだらない構成ながら、あえて政治家がダンサーを嫁にとる寛容さで庶民性をアピールと理由づけにおいて、トニーの妻でディランの母の、同じく政治宣伝に利用されたクロエ（カルミ・マルティン）がメルセデスにディランと逃亡をすすめて偽のパスポートを準備に、エマンの日本滞在ともども、安易なフィリピンの旅券発行のシステムを盛りこむ。
　いずれにおいてもエマンに心臓病をわずらう高齢の父がいて、このロジャー（ダンテ・リヴェロ）の頑固な病院嫌いがうなずけるなど、多少の意欲を買える面があれど、いきなり健康が大切なダンサーのはずのエマンが店でタバコを吸うし、メルセデスも日本の店や帰国後にタバコをひんぱんに吸うし、クロエは墓地で吸いがらを火のついたまま投げ捨てのうえ、ホメルの手下の見張りがタバコをポイ捨ては下等な人間をあらわすのに有効も、主人公を含む全員近くが喫煙にいっさいの共感が断たれ、どうせ生きようが死のうがどうでもいい連中だけに、ただの学芸会のたぐい。トニーとホメルが指示の殺人事件の捜査にエマンの相棒でダンス教師仲間のパトリック（スモーキー・マナロト）が協力のこじつけがましさが一層のゴミ化を招く。ホメルがピストルをだして暴力を加え、ダンス・パーティーでスナイパー（マルク・マルセリーノ）がメルセデスを狙うサスペンスは、いったい恋愛劇なのか、犯罪ドラマなのか、なにがやりたいのかとあきれるばかり。しかも結末の予想がつき、ギリギリのタイミングで助けに入るエマンがメルセデスをかばって撃たれ、スナイパーの失敗でトニーが発砲に今度はディランが盾に走って弾にあたる。オイオイ、支持者の目のある場所で知事が自ら手を汚すかよ、とノータリンも程度がすぎる。
　本当にひどい作品。
　ラヴ・シーンにニーノ・ロータの『ロミオとジュリエット』ふうのメロディーを流したり、エマンとメルセデスが着メロにフランシス・レイの『ある愛の詩』を使う手法が嫌味にひびく。
　それでも『ジャッカルの日』めいた暗殺の緊迫感をともなったぶん、オリヴィア・ラマサン特有の退屈な語りかたが緩和されたかも、なんて皮肉な評価がもたげる。
　日本ロケは浅草の雷門や仲見世、人力車、渋谷のハチ公前の交差点、富士山麓などが適度にはまり、エマンのヘンテコな日本語がご愛嬌。メルセデスが富士山に向かって手を叩いて祈る神道の勘違いがおかしいかな。
　個人的にエンジェル・ロクシンの魅力の爆発が高いポイントにあたいする楽しみを呼ぶ。ポール・ダンスは白いミニスカとブラで踊り、ヒップラインがそそる。青いランジェリーでベッドに寝転び、そのランジェリーで部屋をうろついたり、黒いスリップのバストの谷間にディランの顔をうずめたり、青いレオタードと赤いレオタードでダンスを練習はともに布をボトムに巻くが、赤いレオタードは真上のショットでバストの谷間を強調や、日本で風邪をひいてエマンがハダカで抱いてあたためる処置はヘソだしのみのおざなりも、元気回復でエマンにまたいで乗ってキスはヒップに短パンがくっきりとくいこむ。さらにディランとダンスの練習で白いコスチュームがまずまずだし、練習場で泣くあとにエマンとキスで黒いブラをだすうえ、回想の風俗店でダンスの黒いレザーの短パンが視線を集め、逃亡を中止でセスナを降りるときのかがんだかっこうでシャツにバストの谷間がのぞき、ジーンズがお尻にフィットし、ダンス・パーティーのスカートに脚のシルエットがスケる。とくに興奮はプールのシーンにつきて、黒いワンピースで泳ぎ、濡れて水からあがるショットでお尻の形をばっちりに歩く。ホメルが迫るプール・サイドでくびれのプロポーションがそそる。泡風呂で乳首が隠れるのはしょうがないも、ディランがシャワーを浴びる奥でバス・タブをあがる姿が湯気と刷りガラスごしにおがめ、バス・タオルをとるまでのお尻を露出のボディーがぼんやりと輪郭をみせる。反対側からのショットでディランのお尻がけっこうモロだけに、もしエンジェルのお尻が丸だしなら、あえなくイッたはず。もっとも経歴を告白のあとに『ある愛の詩』をＢＧＭに愛撫でブラをはずす背中はお尻の割れ目がわかる寸前ながら、割れ目の上あたりに刺青みたいなものがチラりで落胆につながる。
　エンジェル以外ではホメルの妻のリタ役を演じるカト・アラノにセクシーな要素がほしかったところ。パトリックの妻役のカリラ・アキロスはパトリックがふざけてお尻をさわるときなどのジーンズがなかなかキュート。エマンと模範ダンスを踊る女性役はジレット・サンディコだと思う。メルセデスのポール・ダンスをサポートするふたりの白いブラの女性を含むダンサー役は、カルラ・ロナ・ベカロ、チェリー・クラリス・パルコン、マリア・ネリタ・アラリーリア、シェーナ・リチェン・ダミナル、ジェニファー・アマハン、ほかの名前がクレジットに読める。
　一応はエンジェルに“おかず”をいただいたしだい。