ＩＮＯＳＥＮＴＥ
（純潔）
　
90年：ダブル‐Ｍ・プロダクションズ
監督：レロイ・サルヴァドル
主演：アケミ・ローセス
　　　 ガビー・コンセプション
　　　 マイケル・デ・メサ
　　　 ジョージ・エストレガン・ジュニア
　　　 オレステス・オヘダ
　　　 ララ・メリッサ・デ・レオン
　　　 デクスター・ドリア
　　　 レロイ・サルヴァドル
　　　 ルシタ・ソリアノ
　　　 ベリア・フロレス
　純粋だった女性が転落人生を歩み、底からはいあがって幸福をつかむまでを型どおりに描く作品。もう暴力的な父から逃げて家出→スケベ男からレイプ未遂→水商売で売春→本気に好きな男との出会い→スケベ男から誘拐→本気に好きな男が救出して結婚、とあきれるほどありきたり。レロイ・サルヴァドルの演出が手がたくまとめるゆえ、平凡さがさらに際だつ。
　ガビー・コンセプションのフィルモグラフィーに題名が見あたらないマイナー作だから、こんなものか。
　まずデクスター・ドリア演じる母が浮気したため、オレステス・オヘダ演じる父が粗野になり、逢い引き現場をみつけてアケミ・ローセス演じる娘をばら撒いた豆の上に正座させ、ジェイ・ジェイ・サルヴァドル演じるアケミのボーイ・フレンドをムチ打ちにするのが無茶苦茶。マニラへでてマリテス・サムソン演じる女性が恋人を奪ったと因縁をつけ、アケミを暴行するのはありがちにしても、ララ・メリッサ・デ・レオン演じるアケミを助ける先輩売春婦が、バーニー・ギント演じるボンボンを誘惑したとベリア・フロレス演じる母が怒鳴りこんできて、ララがベリアの顔面を何度も壁に打ちつける。それでベリアがヤクザを雇い、ララをボコボコの目にあわせる。バーニーがアケミをトイレへ連れこんで犯そうとし、ララがバーニーを刺す、などの血まみれヴァイオレンスの応酬に否定的な意味でびっくり。
　最初にマニラで訪ねた先がマイケル・デ・メサ演じる叔父宅で、マイケルがオカマなのはおかしいも、ジョージ・エストレガン演じるマイケルのホモ相手が両刀なのかアケミにほれ、蚊帳の中でアケミに抱きつき、マイケルと大ゲンカになって、思わず車道へ飛びだしたマイケルが交通事故で亡くなる展開も、どこか荒っぽい。
　まあ、最大の短所はダンサーとなったアケミを警察の風俗捜査から助けるガビー演じる男性の登場がとう突で、ジョージがアケミを誘拐し、助けに向かったガビーとジョージの対決がさして盛りあがらず、サスペンス失格な点ではないだろうか。
　でも興味深い要素はあって、田舎でアケミがジェイジェイの家へおかずを差し入れすると、監督のレロイ自身が演じるジェイジェイの父がその場で食べようとし、ルシタ・ソリアノ演じる妻から手をピシャッと叩かれているのがおかしい。ララの家で住みこみ売春婦たちがアケミをみてイイ娘ねと注目し、グルッと一回転させたり、バーニーがアケミのことを「アルマ・モレノみたいだ」といっているのがいかにも。アケミが大人のスレた世界へ興味を抱いたのはタバコを吸ってむせることや、ミニスカをはいて鏡に映す行為で表現し、実際にクラブ勤めを始めると、ベタベタの厚化粧に変わるのに納得。
　もちろん、一番の期待はアケミのセクシーさにかかるといえる。開巻と同時に池での水浴びを野郎どもにのぞかれ、みえそうでみえないボディーがそそるも、タイトルのクレジットがダブって余計な障害物をとイライラさせる。バーニーにホテルへ連れこまれ、いよいよ裸かなと鼻息が荒くなったのに、アケミが騒いだため、警察がきて終わりでアレレ。ダンサーとしてのステージは、さすがにウハウハを呼ぶ。ブラウンの光沢ブラで、下はヒダヒダのついたパンティーがイマイチながら、胸元の谷間がおいしそう。左右にいるダンサーの貼りつきボディー・スーツと網のタイツも挑発的。ガビーとのデートではモーターボートでの花柄と、プールでの赤ワンピースの水着を披露し、とくに後者はガビーに抱きかかえられ、プールへ放りこまれる動作でのヒップラインがキュート。欲をいえば、プール・サイドへあがる濡れたピタピタの全身をみたかった。
　満足度は三十％くらい。
　ララは水浴びや殴られたあとの手当てでブラをみせるも、相当に露出不足で残念。
　スリップからお尻を突きだしてパンティー・ラインを浮きあがらせたり、ジーンズのホット・パンツがゾクゾクなのはレニ・サントスか。
　カティー・モリナ、ベット・コルネステ、マリリン・アヴィレス、チェリー・アン・エスピリツなどが演じるホステスには、まったく活躍の場なし。
　どことなくお色気シーンすら場末感が漂う、安手作品と評価できそうだ。