ＩＬＵＳＹＯＮ
（幻影）
　
05年：ディジタルＶＩＶＡ／ペリプラ／ポリエン・プロッズ
監督：パオロ・ヴィリアルナ、エレン・ラモス
主演：ユル・セルヴォ
　　　 ジェイシー・パーカー
　　　 ベリア・フロレス
　　　 ロニー・ラサロ
　　　 ブーツ・アンソン・ロア
　　　 アニータ・リンダ
　ジェイシー・パーカーを主演にするディジタル・シネマで、エロティックな期待が盛りあがる。
　五十年代を舞台にとり、初期のシネマスコープ作品みたいなタイトルのだしかたや音楽がアルフレッド・ニューマンといったアメリカ映画ふうなのに、ファン感覚を読みとる。パオロ・ヴィリアルナとエレン・ラモスの共同監督は、けっこうやるんじゃないかと。ジョン・レッドのストーリーのもと、ジョンとパオロが脚本を書いていて、インテリのお遊びっぽいイメージも伝わってくる。いわゆるクラシック・カーの登場に、ソフト帽をかぶるファッションなど、小道具に凝っているものの、フィリピンじゃなくアメリカ合衆国だろうと思わせ、確信犯的な勘違い表現がパロディー精神。オールド・ファッションドなラヴ・ソングの使用と、古くさい画面構成が拍車をかける。さらにはユル・セルヴォ演じる主人公が田舎から上京してきて、マニラを歩くのにウェッセルマンなどアメリカン・アートをまねたコラージュの映像を使ったり、サックスとトランペット主体のジャズが流れたり、ミュージカル・タッチで歌とダンスやタップが入ったり、黄金期のハリウッドを意識に置くことを鮮明にする。前衛イメージのアニメーションの挿入にかさなる音楽は七十年代の印象。一方で草原の牛が人間の声で話すシュール・レアリズムのコメディー要素は決して成功と感じられないも、ユルが手紙を読みながらや、ベリア・フロレス演じる大家と会話しながらロニー・ラサロ演じる不在の父が同一空間に現れたり、写真の中のテッチー・アグバヤニ演じる母とロニーが動いたり、亡くなっているテッチーが部屋にきてユルを抱く幻想など、語り口に意欲がうかがえる。テッチーとベリアが赤い服で踊ってロニーが加わるシーンで女性だけモノクロから浮きあがる手法は、ちょっとワザとらしいかな。
　物語は絵描きを志すユルが父を頼ってマニラへくると、画家の父は入れ違いで故郷へ帰っている。父が依頼したというジェイシー・パーカー演じるモデルが訪ねてきて、その美しさにポッとなったユルが父の名を偽って雇い、ヌード・デッサンを始める。何回目かで画家とモデルの一線を越え、肉体関係を結ぶも、ジェイシーのボディーに斑点ができて、だんだん広がっていく。激しいセックスを繰り広げつつ、依頼者とユルが別人と気がついてジェイシーがショックをうけ、突然に姿を消す。つかれた如くユルがジェイシーの油彩を描き、ビトゥイン・エスカランテ演じるジェイシーの友人から実家の住所を聞くと、ボロ車を直して田舎へ絵を持参するというもの。ユルのデッサンが次第に緻密に変わっていくのに『美しき諍い女』を連想したが、ああいった美術の本質に迫るような内容ではなかった。生活費のためにユルがペンキ屋に勤め、アーチー・アダモスなどが演じる仕事仲間とのやりとりもでてくる。ジェイシーの斑点は明らかに寓意によるシンボルだが、ブーツ・アンソン・ロア演じる女医に診てもらったり、ユルがボディー・ペインティングをほどこしたり、曖昧なあつかいなのがよい。でもジェイシーの実家への道すじを聞く駄菓子屋で、子どもの顔に黒いアザがあるのは、ただのこけおどしに思えるし、いざ実家へきてみるとアニータ・リンダ演じる祖母が「いない」といい、さて…　とミステリアスな興味を抱いたが、なーんだ的な再会の展開がイマイチだった。またも入れかわりにロニーがマニラの部屋へ戻って、ユルのデッサンをみると、置き手紙を読むオチもこんなもの。手紙が主要な媒体になっているので、ラウル・モリット演じる郵便夫をユーモラスにからめるあたりは評価できるかな。
　それでジェイシーの露出に目を向けると、赤い服にハートのサングラスをかけたスタンリー・キューブリックの『ロリータ』みたいなファッションで姿をだし、タバコを吸うのはげっそりながら、雰囲気をつくるための演出。ユルにボディーをチェックで下着になると、五十年代らしくガードルで色気の少ないタイプ。でもデッサンで乳首をポロリと服を脱ぎ、横からの全裸で乳房とお尻の形が絶品なうえ、正面からのショットで陰毛もバッチリに迫る。二度目のデッサンでは乳首モロ、寝ころぶ全裸、乳首に手をおいて陰毛のみえるポーズのあと、パンティーをはくかっこうがたまらない。斑点がでて以降は乳首バッチリの全裸に加え、騎乗位のセックスでお尻の愛撫をドアップにとらえるのに興奮。二度目のセックスは騎乗位で下向きオッパイとお尻を全開がそそり、正常位からエビそりで挿入がリアル感を生む。さすがジェイシーと納得の次第。
　ほかにベリアの孫役でジェニファー・リーが出演し、フラフープでセクシーさを漂わせるも、ユルへ挑発をかけるのに、肌をさらさないままが残念だった。テッチーがデブになったのがわかるのは、いささかびっくり。
　なおジェイシーとユルの歌はふきかえだが、ベリアは自分で歌っている。