10年：ＡＢＳ−ＣＢＮフィルム・プロダクションズ／スター・シネマ・プロダクション
監督：ヴェロニカ・Ｂ・ヴェラスコ
主演：エリッチ・ゴンザレス
エンチョン・ディー
ポクワン
デニス・パディーリア
ヤヌス・デル・プラド
ナッシュ・アグアス
メーライ・カンティヴェロス
ジュン・ウルバノ
リカルド・セペダ
イサイ・アルヴァレス
エリサ・ピネダ
中国系と結婚の困難さをエリッチ・ゴンザレスとエンチョン・ディーのコンビでコメディー・タッチに展開の作品。
友人の結婚式で出会ったマユミ（エリッチ・ゴンザレス）とランス（エンチョン・ディー）はおつきあいをはじめ、すぐにマユミが妊娠。ランスが責任をとって入籍のはずが、中国系のために家族がフィリピン人との結婚を許さない。女の子を出産後にマユミの家族が婚礼を手配も、ランスが連絡を絶って流れる。家族が仕向けた恋人のシーラ（ジョイス・ソー）とうまくいかず、ふたたびランスがマユミに求婚で、あきれたマユミが断わる。でも愛情はウソをつけずに交際を再開で結婚式を明日に控えるとき、今度は事故でランスが下半身麻痺で歩けなくなる。ランスの父のエディソン（リカルド・セペダ）が見舞いすら拒み、ランスの家族が不在のままに神前で気持ちのゆれるマユミが夫婦の誓いの「Ｉ ＤＯ」をのべる。
慣習で板ばさみの葛藤の中、おおらかなフィリピンのファミリーと血統優先の閉鎖的な中国系のファミリーを対比する。
ジャンク・ショップを営むマユミの一家が両親のほか、妹（ジェーン・オイネサ）と弟（ナッシュ・アグアス）の五名の構成はフィリピンだと少ない印象だが、伯父（叔父）と伯母（叔母）とその配偶者の大親族がいかにも。マユミが女性の友人のマリアン（メーライ・カンティヴェロス）とエプリル（アリソン・ルアルハティ）に男性の友人のベルナルド（ヤヌス・デル・プラド）といつも一緒に行動し、いわゆるバルカダを組むのがフィリピン気質をなす。どうもベルナルドはマユミに気のあるようす。
マユミの父のカロイ（デニス・パディーリア）がユーモラスに親の心境をあらわし、ランスがマユミをパーティーへ誘いにきて、とうとうとショックをうけ、つい「コンドームは？」とつぶやき、見送ったあとに泣く。マユミが妊娠を告白のとき、カロイが星一徹のごとくテーブルをひっくり返す怒りの幻想をみるも、実際は外で商品のクズ道具を蹴りまくって荒れる。
たまたま床に落ちた指輪をランスが拾ったのをプロポーズと勘違いでマユミの一家が盛りあがり、中国系でランスにカネがあると判断か、結婚式の準備で式場の教会選びや衣装、指輪や料理をどんどん手配に、家族の未承諾を隠すランスが金額を聞くたびに叫ぶおかしさは、フィリピン人とつきあった経験をもつものだと数倍以上に痛感のギャグ。でも、すべてがカネなわけでなく、ランスの母（イサイ・アルヴァレス）が「経済的に彼女をサポートはするけど、結婚はダメだ」とランスにいい、一家でマユミの家族を訪ねると大歓迎をうけるが、マユミとランスの赤ん坊をアメリカ合衆国で育てるカネで解決の提案に追い返されるあたり、なによりも家族の絆が大切なフィリピン人がうかがえる。
マユミが女の子をのぞみ、生まれた赤ん坊が女の子でランスが落胆は中国系の感覚。
またランスの祖父（ジュン・ウルバノ）のバースデー・パーティーにマユミを招き、全員が赤い衣装なのに、マユミだけ青いドレスが中国系のしきたりを教える。入籍の書類を提出でランスが二十一歳なため、二十五歳以下は親の同意が必要と受けつけを拒まれ、四年先だとランスが安堵に対し、落ちこむマユミをみた事務員が宣誓供述書をつくって三カ月待てばいいとこっそり裏ワザを耳うちにフィリピンの結婚制度がわかる。
ただしヴェロニカ・ヴェラスコの演出はランスの家で食事にマユミが下品にがっつくのがスパゲッティーで中華料理じゃなく、結婚式が常識のごとくキリスト教の教会なうえ、ランスの言葉が中国なまりゼロだし、そのくせランスの祖父は中国なまりでしゃべり、ジンキー・ラウレルと共同執筆の脚本ともども、どこまでちゃんと中国系を描く意図があるのか疑問が残る。愛車をかわいがるランスが婚礼の費用の捻出で売るものの、いったん祖父の病気をきっかけにマユミと別れるや、ランスの家族が買い戻してあげるながら、経済的なサポートを失った独立後のランスがどうやって生活費をえたかをあいまいにすませ、しょせんは現実に目をそむけるレヴェルの内容。
祖父が亡くなった四年後に従兄弟のアレンベルグ（アルウィン・ウイティンコ）の結婚式でランスが家族と和解のハッピー・エンドに商業映画の限界を感じる。
マユミがバスケットボールのシュートを決めるゲームがワン・ショットでないことも手抜きに思える。
エリッチ・ゴンザレスはセクシーさに遠いようでいて、一応はベッドを転げ落ちるときにジャージーがお尻にくいこみ、タイツをはいたお尻のアップや、ジーンズと白パンがときめきをくれる。ジェーン・オイサガがエリッチよりもかわいく、将来が楽しみになる。家族で唯一、ランスにみかたの妹のシャーリンを演じるエリサ・ピネダも同様に将来へ期待のわくタイプ。マユミの母親のネニータ役でヘンテコな顔のポクワンが好演し、ファニー・フェースのメーライ・カンティヴェロスとデブのアリソン・ルアルハティともどもに喜劇要素を加える。ランスの姉のミルドレッドを演じるチェ・ラモスは容貌がイサイ・アルヴァレスと近く、いかにも中国系の親子のイメージ。マユミの伯母（叔母）連中に扮するルビー・ルイズ、カルメリータ・サンチェス、アナベル・セラオン、オリンピア・ヴェラスコはおばさんパワーの存在感を示す。ジョイス・ソーに色っぽいシチュエーションを欠くのが残念かな。ランスの相談相手のアレンベルグがプレイボーイで、いつもガールフレンドが変わり、結局は最初のカノジョと結婚において、恋人の三名のうち、スペリングのＨがひとつ多いキンバリー役のヴェロニカ・コースが平均程度のキュートさ。シャーリー役のステファニー・チャンが一瞬のみの登場に終わり、ベヴァリー役のステファニー・タンはジムでウォーキング・マシーンをこぎ、できればジャージーのお尻をみたかった。
