ＩＢＵＬＯＮＧ　ＭＯ　ＳＡ　ＤＩＹＯＳ
（あなたの神へのささやき）
　
(88)年：リーガル・フィルムズ
監督：エルウッド・ペレス
主演：ヴィルマ・サントス
　　　 ガーリー・ヴァレンシアノ
　　　 ミゲル・ロドリゲス
　　　 エリック・キゾン
　　　 エディー・ガルシア
　　　 ニダ・ブランカ
　　　 バルバラ・ペレス
　　　 ナジャ・モンテネグロ
　　　 アルミダ・シギオン・レイナ
　　　 ペルラ・バウティスタ
　　　 レーチェル・アン・ウォルフ
　　　 デボラー・サン
　大時代的な波乱万丈の女性ドラマで、あまりにフィクションが目だち、笑ってしまうほど。オルランド・Ｒ・ナドレスの脚本が安手の連載小説レヴェルなのに起因する。
　ヴィルマ・サントス演じる主人公はステージのバック・ダンサーで、ガーリー・ヴァレンシアノ演じる歌手と恋人同士。ガーリーたちが沖縄の仕事でしばらく滞在することが決まり、弟の病気が心配のヴィルマだけ嫌がって残る。弟が亡くなり、ニダ・ブランカ演じる母はアルミダ・シギオン・レイナ演じる義理の姉妹からカネを借り、白紙委任状にサインさせられる。それによってニダたちは家を追われ、ニダはアルミダ宅に召使い的に住みこむハメに。ヴィルマはエリック・キゾン演じるガーリーの友人を訪ね、ガーリーが暮した部屋を借りる。となりにはミゲル・ロドリゲス演じる振付師がいて、ヴィルマを自分のステージのダンサーに抜擢。とまではよかったのだが、ヴィルマをミゲルが犯し、無理やりヴィルマを殴って水商売で働かせる。ガーリーが戻り、ヴィルマの行為を許そうとしないため、思わず絶望したヴィルマが雨の中で交通事故にあう。エディー・ガルシア演じる実業家に救われるも、失明状態に陥る。実はひいた本人だったエディーがヴィルマへ親切に尽くすと、バルバラ・ペレス演じるエディーの秘書が嫉妬。妊娠中だったヴィルマの出産で、エディーが自分のジュニアと名づけ、ミゲルが「オレの子だ」と強引に奪う。エリックとガーリーがとりかえそうともめて、エリックがミゲルを刺す。ガンに冒されていたエリックは留置場で倒れたあと、手術のかいなく死亡。ヴィルマのほうは治療で視力を回復する。アルミダが財産危機に直面し、エディーのカネでヴィルマが屋敷を買いあげ、ニダを酷使していたアルミダへの復讐にでる。でも事故で命を落としそうになったアルミダをヴィルマとニダが救い、あっさりアルミダが改心。ガーリーが後悔から「愛している」とヴィルマに迫るも、ヴィルマはエディーとの結婚を決める。その式の真っ最中にバルバラが発砲におよび、アルミダがとっさに止めたのも間に合わず、エディーと赤ちゃんに命中。エディーは他界し、赤ちゃんはガーリーの輸血で助かる。ヴィルマがガーリーに「あなたの子よ」と告げる内容。
　とにかくミア・グチェレス演じる女医を含む、トニー・カリオンやエルニー・サラテといったヴェテラン俳優から、おそらく実際に病院へ勤務する本人まで、医者役を七名もが違ったシチュエーションで演じるだけでも度を越えたドラマティックさがうかがえるというもの。ストーリーがハデなわりに人間が描けていないのは致命的といえ、プール掃除をさせられるニダのもとをヴィルマが訪ねたとき、アルミダが高笑いしながら銃を撃っておどすなど、バカバカしさでサジ投げ寸前。各キャラクターの行動を安易にからませるながら、ナジャ・モンテネグロ演じるエリックを慕う女性がヴィルマに直感する警戒心はあとに広がらず、確かにエリックは親切だったとはいえ、ラストでヴィルマがエリックの墓をまいったとき、何を感謝しているのか焦点ズレを起こすのも構成の弱さ。ヴァンジー・ラバラン演じるアルミダの家政婦からニダがイジメを受けないのも、どんなものか。
　部分的にはヴィルマとミゲルの出会いにおける電話料金のやりとりや、ヴィルマがピルを飲んでいたり、ヴィルマを買いたいという客にミゲルが「すごく高いよ」「五千だ」と高飛車な交渉におもしろさがあり、ガーリーがヴィルマをペタペタと平手打ちする『ゲッタウェイ』におけるスティーヴ・マックィーンのごとき女々しさの表現のほか、エリックのガンを告知せず、かわりにガーリーが聞いたときの反応などがまずまずで、ダメな点ばかりでないのは事実。エディーがヴィルマのためにペルラ・バウティスタ演じるプライヴェート看護婦を雇うあたりにも、フィリピン的な上流生活のスタイルがうかがえる。でもガーリーとヴィルマがもめて、赤ちゃんを乗せたベビー・カーが『戦艦ポチョムキン』のオデッサの階段というか、それをマネした『アンタッチャブル』のシカゴ駅の階段みたいに落ちるのは、やはり失笑を誘う。病室でエディーの遺体が運び去られ、ヴィルマがアコーディオン・カーテンを引くと赤ちゃんの手術現場とのショットは、演劇場の幕かよとマイナスの意味で唖然もの。
　まあ、くだないと片づければそれまでだが、二時間十分弱にもおよぶ長尺を退屈させずにみせたエルウッド・ペレスの語り口は、とりあえず評価したい。
　もっともヴィルマが意外とセクシーなのが、予想外の嬉しい要素。ミゲルの部屋でミゲルがパンツ一丁なのにヴィルマは着衣のままだし、ガーリーとのセックス前でシャワーを浴びるとき、ボディーにバス・タオルを巻いているのは惜しいながら、ミゲルが手配する店におけるダンス・ステージがウハウハ。ハイレグ・レオタードのヴィルマは脚にタイツをはくも、お尻の食いこみがすごい。しかも二度目はそのお尻のドアップから登場で、スリスリさわってみたいじゃないか。プールで泳いだあとにはちゃんと水からあがるショットがあり、青いワンピースが濡れて貼りつき、かえってプロポーションが浮きぼりすぎて太めとわかるのがつらいとはいえ、くっきりのヒップラインに生つばゴクリ。もう、ヴィルマのお尻に悩殺されたと告白せざるをえない。
　あとミゲルにシャツの上からオッパイをもまれ、ジーンズに手をつっこまれて別れるダンサーの恋人役はレーチェル・アン・ウォルフか。
　ヴィルマが担ぎこまれる病院の看護婦役が、女優名不明ながら、ちょっと美人ぽかった。
　なお、アルミダの弁護士役でズバス・ヘレロとロメオ・リヴェラが申し訳程度に顔をだすのが、ぜい沢な使いかた。ガーリーが歌を録音するシーンでは、スタジオにブーツ・プラタ、ラクエル・ヴィリアヴィセンシオ、アンジー・マグバヌアが、本当にいるのか特定できないほどのチョイ役で出演し、結婚式で見とどけ書にサインするニノンやニナン役として、ラミル・ロドリゲス、ガマリエル・ヴィライ、ルディー・ファロル、ルル・アリエタ、ネナ・ペレス・ルビオ、リン・パレハが、これまたエキストラ扱いに映っていた。