ＩＢＩＢＩＧＡＹ　ＫＯ　ＡＮＧ　ＬＡＨＡＴ
（私のすべてをあげる）
　
98/99年：グッド・ハーヴェスト・プロダクションズ
監督：タタ・エステバン
出演：サンシャイン・クルース
　　　 フリオ・ディアス
　　　 レーモンド・バガチング
　貧乏娘の陰謀を扱うドラマながら、人間を描けない姿勢にあきれるほど。
　サンシャイン・クルースが主人公を演じ、しばらく展開する暮らしぶりの紹介はまずまず。父が事故死して以来、二人の妹と一人の弟のためにホテルのメイドと養鶏場の手伝いで身を粉にして働き「もーうイヤ、こんな生活」と告白するのだが、ニワトリのフンにまみれた衣装や手がリアルで、女優根性をみせる。
　ルシタ・ソリアノ演じる母にコンピューター・スクールへ行きたい希望を話すと、ヒステリックにルシタが怒り、一本調子の単純バカさ加減はナニ？　とに印象に。まずルシタのぞんざいな扱いからダメさぶりをうかがわせる。
　スーザン・スアレス演じる母の友人がいて、アンディー・カブレラ演じるその夫がサンシャインに迫り、スーザンとルシタにみつかって非難を受け、やってられないと家出。かつて父が運転手として雇われていたアルマ・レルマ演じる主人宅に仕事を得る。たくみにアルマへ取り入ると好印象を与え、コンピューター・スクールへ通う許可をもらうとともに、コニー・チュア演じる家政婦の長を蹴落とすあたりの展開はけっこう納得がいく。
　レーモンド・バガチング演じるアルマの息子のパンツ一丁をのぞいて誘惑しようと考え、オルガ・ナティヴィダッド演じるレーモンドの恋人を自殺へ追いこむ策略は、ちょっとシンプルすぎないか。レーモンドがセックス目的だけで自分を抱いたとわかり、レイプを装ってアルマに訴え、結婚に成功する流れも、主従関係から判断してリアルさを欠く。あとでレーモンドがサンシャインを暴行した事実を知ってアルマがショック死し、パトロンを失ったサンシャインがどう対応するかの進めかたも、安易さに驚くばかり。フリオ・ディアス演じる運転手とサンシャインは肉体関係を持ち、フリオの子を妊娠するも、フリオが実はレーモンドの家に恨みを抱き、復讐の機会を狙っていたとの設定。レーモンドを射殺しようとしたフリオをサンシャインが撃ち、命の恩人になったから愛が生まれるなんて、人間の心理はそんなもんじゃないだろう。
　途中、レーモンドと結婚後にいったん実家へ顔をだすと、ルシタが感情的に追いだし、おそよ母親とは思えない対応ぶり。ラストでは説明をいっさい省略で和解しているから、一体まともに表現する気があるのか、と叫びたくなる。
　デニス・エヴァンゲリスタの脚本が手抜きなうえ、タタ・エステバンの演出が、この程度でいいや、と適当に割りきっているようだ。
　イッダ・ヤネサ演じるアルマの妹など、登場した意味がよくわからないし、サンシャシインが罪の意識を抱く幻想的なシーンもイマジネーションの少なさにうんざり。まあ、サンシャインの出産を手伝うショットでコニーとの仲直りを示すやさしさは、そこそこよかったかな。
　もっともサンシャインはさしてタイプじゃないながらも、セクシーさを強調してくれれば満足なのは事実。レーモンドをプールで誘惑するシーンがハイライトといえ、スリップ下着になって泳ぐと、水からあがるときにピチッとパンティーが貼りつき、ヒップラインがみごと。プール・サイドでは浮かびあがる乳首がおがめて、キャーッ、ステキー。でもレーモンドと抱き合う斜め上からのショットではオッパイの谷間がきわどいものの、ついにモロだしはないし、レイプのフリもブラをみせるどまり。フリオとのセックスでは、なぜかフリオがお尻を露出するのに、サンシャインはボディーにシーツを巻いたまま。
　不満が残るぞ、と指摘したい。
　あとオルガがレーモンドとプールでたわむれるとき、黒いワンピース水着を濡らし、スリムなプロポーションや切れあがったヒップラインで魅了するも、ややカメラの位置が遠い。レーモンドの浮気相手になる秘書役の女性は、メガネをかけた容貌から好みと感じるのに、座位のセックスで脱がずじまい。
　イライラばかりが残る作品だ。