ＨＵＷＡＧ　ＭＯＮＧ　ＵＢＵＳＩＮ　ＡＮＧ　ＢＡＩＴ　ＫＯ
（私の親切を無駄にするな）
　
00年：リーガル・エンターテインメント
監督：バルド・マーロ
主演：リト・ラピッド
　　　 ガルド・ヴェルソザ
　　　 ジャッキー・フォースター
　　　 デレク・ディー
　　　 マリカル・デ・メサ
　暴力描写というのは、みる対象に制限を加えるべきかもしれない。そういう意見に立つならば、これなど成人指定でもいいと思えてしまう。
　冒頭にストーリーのきっかけ的な意味のアクションが置かれているのは、いつものフィリピン映画のパターン。リト・ラピッド演じる警察官は、このときの手柄によって休暇をもらい、家族と田舎へ帰ってくる。
　途中、マルガ・ヤバオ演じる下の娘がウロチョロして、ヴィサヤへ向かうフェリーの中を紹介するのは、タイアップかなと思う。また田舎へ着いたらちょうどフィエスタの真っ最中で、パレードにまたマルガがまぎれてしまい、リンゼー・アン・ケネディー演じる上の娘が探しに行くのだが、このウロチョロぐせは伏線かなとも感じたのだが、まったく関係なかった。
　フィエスタが夜のロウソクのパレードになるあたりは、まずまずの雰囲気が伝わってくる。
　そもそもリトが帰省したのは、パウロ・リヴェロ演じる弟が麻薬の運び屋をやっているのを何とかしようとしたためで、親分であるガルド・ヴェルソザ演じるシンジケートのボスは、元警官で、大金を横領しようとしたのをリトにみつかって逮捕された過去があるという設定。マリカル・デ・メサ演じる愛人も、かつてリトのガールフレンドだったということになっている。
　あまりにも二人を対立させようという、できすぎのシチュエーションに苦笑い。
　とくにあきれるのは、ガルドの人間性皆無の悪人ぶりで、いくらなんでも極端すぎる。すぐに部下は殺すし、マリカルにはＳＭ行為を強要する。警察を含めてカネで買収しているのだが、これほどの恐怖支配をしいていれば、普通なら反発を買うところ。
　パウロが殺害されて、デレク・ディー演じる買収されていない地元警官の協力を得て、リトが捜査に乗りだすのだが、ジャッキー・フォースター演じる妻など家族から「気をつけてね」といわれるシーンで、これは反対に家族がやられぞ、とすぐに展開が読めてしまう。
　案の定そうなり、ルシタ・ソリアノ演じる母以外は皆殺しで、本当にこれでいいの、と疑問がわいてくる。
　そのあとあちらこちらで銃撃戦で、もはや小さな町は恐怖のどん底。どうして誰も避難しないのか、と不思議になってしまう。
　マリカルを連れだしたリトが、海岸の村へ逃げてくると、追ってきたガルド一味がまったく罪のない漁民たちをバンバン撃ち殺しまくるにおよんで、この感情が欠落した、人を人とも思わない、ゲーム感覚にすらなっていない無差別殺戮描写を、安易にみせていいものか、との怒りすらわきおこってくる。バルド監督ら、スタッフの意見を聞きたい。
　日本もそうだが、性表現には厳しいくせして、暴力描写には甘い傾向は、まじめに困ったものだ。性に関してなら、異常な内容はさておき、ちゃんとした愛をストレートに扱うなら子どもにセックスしている様子をみせてもかまわないのに…
　愛の部分でいえば、妻を演じているジャッキー・フォースターがかなりの美人で、もうホントに大好き。白いピタパンでみごとなプロポーションをうかがわせ、前にかがんだときの胸の谷間が悩殺ものなのに、まったく色っぽいシーンがないのが残念。
　マリカルは上半身ハダカにされるも、乳房は隠れたままだから、こちらも期待に応えていない。しかもガルドにナイフで背中に傷をつけられ、血をなめられるアブ・ノーマルさだから気持ちが悪い。こういう変態行為を描くなら、やはり性表現も成人指定にするべきだ。
　まったくＰＧやＲで公開しちゃいかんよ、という作品である。