ＨＵＷＡＧ　ＭＯＮＧ　ＳＡＬＩＮＧＩＮ　ＡＮＧ　ＳＵＧＡＴ　ＫＯ
（ＴＨＥ　ＢＵＥＮＡ　ＶＩＳＴＡ　ＳＴＯＲＹ）
（私の傷に触れるな　ブエナ・ヴィスタ物語）
　
(91)年：ゴルディ・ピクチャーズ
監督：クリストファー・ストラウス・デ・レオン
主演：クリストファー・デ・レオン
　　　 ディーナ・ボネヴィー
　　　 ナネット・メドヴェド
　　　 マイケル・デ・メサ
　　　 マット・ラニーリオ・３世
　　　 ダニエル・フェルナンド
　　　 モナ・リサ
　　　 モーリン・マウリシオ
　　　 ルエル・ヴェルナル
　　　 ロルリ・ヴィリアヌエヴァ
　　　 ロメオ・リヴェラ
　交通事故で亡くなったリノ・ブロッカのあとをうけ、俳優のクリストファー・デ・レオンが監督した作品。リノのストーリーをもとにリッキー・リーが脚本を書いていて、実際にリノが撮影にかかわった部分があるかどうかは不明。
　いずれにしてもウロ・Ｑ・デラ・クルースを共同監督にむかえ、役者のキャリアを積み重ねるうえで恩人にあたるリノに対し、クリストファーが敬意をこめて望んだことは想像にかたくない。
　ブエナ・ヴィスタという小島を舞台にとり、ここ出身のクリストファー演じる医師が病院をつくるため、アメリカより帰ってくるところから始まる。島にはロメオ・リヴェラとロルリ・ヴィリアヌエヴァ演じる兄夫婦が住んでいて、晩餐会を開き、モナ・リサとマイケル・デ・メサ演じる有力者の母と息子が歓迎する。
　でもナネット・メドヴェド演じるクリストファーの妻が島の環境に抵抗感を示し、すぐに不満ばかりを述べるようになる。ディーナ・ボネヴィー演じるマイケルの妻は、かつてクリストファーの恋人だったらしく、クリストファーと会うのを避けまくる。ルエル・ヴェルナル演じる従順そうにみえる警察隊長や、トニー・マベサ演じる偽善っぽい神父などもでてきて、ギクシャクした構図が明らかに。
　日本企業からビジネス・マンを招くモナにもあやしさがにおう。
　島にはハンセン病がまん延し、クリストファーの目的はこれの治療なのだが、一方で父が謎の死をとげたことへの真相究明といった、別の狙いも秘めている。
　ダニエル・フェルナンド演じる拘留中のＮＰＡを訪ね、クリストファーが事情を聞きだそうとする。モーリン・マウリシオ演じるダニエルの妻を、ルエルがセックスの奴隷化。クリストファーとディーナが会うのをみて、マイケルがディーナを暴力的に責め、モナもヒステリックにいじめる。教会の軒先での治療をトニーが許さず、患者たちを追いだす。マット・ラニーリオ・３世演じる良心派の若い神父がクリストファーのみかたにつく。
　などの展開で、いっけん複雑にからむながら、どの人物もキャラクターがストレートすぎて、深みを欠くのが実感。
　ディーナがクリストファーの子を妊娠し、モナとマイケルが強引に堕胎手術をしむけると、女医のはからいでこっそり逃げる。ナネットが島を去り、脱獄したダニエルとともにクリストファーがルエルたちと銃撃戦を繰り広げるにいたって、さすがにヘタさが目立ってくる。肝心な瞬間に、その場で撃たないご都合主義は、ちょっとしらけるイメージ。
　ルエルがモナの命令でクリストファーの父を殺した事実はミエミエだし、ストーリーの進めかたにも疑問が残る。
　ただし、ダニエルとモーリンを山へ送りだすと、クリストファーがルエルに教会前の広場へ引ったてられてくるクライマックスは、さすがに盛りあがる。集まった島民を前にモナがモラルをたてにクリストファーとディーナの姦通を非難。ロメオとルエルがもめ、その間に銃撃で重傷のクリストファーをディーナとマットが教会の中へ運ぼうとする。ついにロメオがルエルを射殺におよび、その光景をトニーがただ上からながめているだけ。興奮したモナがたきつけ、我を失ったマイケルがクリストファーへ発砲。
　島民たちの反応がみるみる軽蔑に変わって、モナがひるむあたり、場のもつ緊張感というか、殺気だった空気まで伝えてくる。
　ラストにおいてクリストファーの演出がうまさを発揮したといえよう。
　それにしても、いささか単細胞な内容に思えるだけに、リノが監督していたらどうだったのだろうか、との想像がわいてくる。
　ま、いってもしょうがない問題か。
　さすがに役者は全員がうまく、とくにモナが得意のごう慢な老女役でみごとな存在感。モーリンのベッドにカネをほうり投げるなど、ルエルの下品さもよくでている。ダニエルがいささか単調なのは、演技指導のせいだろう。
　セクシーさではナネットが素晴らしく、クリストファーとのセックスで、ホント、もうちょっとで乳首が露出の寸前までうかがわせる乳房に目が釘づけ。脚にスキン・クリームをぬるスリップでの立ちポーズがそそりまくり、漁師と浮気中に嵐となってワンピースが濡れた胸元や、カミナリの光で下半身が浮きあがるショットも興奮を呼ぶだけに、ナネットの魅力に降参。モーリンは海女のかっこうで魚を採る自宅前の浅瀬で、白いシャツから乳首が半スケなのがウハウハ。赤ん坊にオッパイをあげる、今にも乳首がのぞけそうなバストにも燃えてくる。ルエルとダニエルを相手に二度あるセックスにおいて、やや控え目なのが惜しい。ファンのディーナはクリストファーとのセックスでハダカになるも、クリストファーのキスやなめかたがおざなりすぎて、著しくリアリティーをそぐのがマイナス。乳首を隠すのは我慢するながら、もっと唇や舌がもつれ合い、肌に吸いつかなきゃダメよ、とハッパをかけたくなる。
　クリストファーの遠慮がちな表現が原因に違いなく、これだから自作自演のベッド・シーンはもの足りない。