ＨＵＷＡＧ　ＫＡＮＧ　ＫＩＫＩＢＯ…
（動いてはいけない…）
　
00/01年：ティームワーク・プロダクションズ
監督：ヒル・Ｍ・ポルテス
主演：プリシーリア・アルメダ
　　 　レーモンド・バガチング
　　 　ヴィア・ヴェロソ
　　 　レアンドロ・バルデモール
　　　 カミール・ロハス
　　　 ローレンス・デーヴィッド
　　　 ガンドン・セルヴァンテス
　　　 チェスカ・ディアス
　　　 デクスター・ドリア
　カルト教団を扱う作品で、ヘンにカリカチュアへ走らず、正面から宗教に対峙する姿勢が特徴をなす。いかにして二代目の指導者が生まれたかの内容であり、天間敏広の『教祖誕生』を連想したが、あんなコメディー仕立てではない。いたってマジな姿勢だけに、フィリピンと日本における宗教への温度差をはかれて興味深い。またセクシー女優のプリシーリア・アルメダを主演に、多少エロっぽさをまじえて描くから、個人的に好みともいえる。
　いきなりベッド・シーンが開巻で、オッと驚いたものの、プリシーリアのボーイフレンドを演じるレアンドロ・バルデモールのお尻にゲーッ。すぐにプリシーリアの上向きオッパイがみえて、ああ、よかった、と安心するや、ヴェネッサ・オルピンド演じるレズの相手を含め、プリシーリアのセックス狂いをスピーディーに表わす。全裸になって二階のヴェランダから叫び、街の人たちにみられる露出行為に、プリシーリアのキュートなお尻と、堂々モロだしのオッパイがウハウハの迫力。らせん階段がシュール・レアリズムの絵画のごとく視界で変化する中で倒れ、入院の導入部へと続き、さらなるヌードへの願望と、ヒル・Ｍ・ポルテス監督の創作意欲に満ちた芸術性への期待が高まってくる。
　ミレニウム直前を舞台にとり、プリシーリアの世紀末的な退廃ぶりをセックスのほか、タバコとドラッグで示すあたりのさり気なさに共感。
　病院の屋上でヴィア・ヴェロソ演じる新興宗教の幹部と出会ってメインの物語へと進む。
　しばらくはヴィアに誘われて団体の共同村へきたプリシーリアが、レーモンド・バガチング演じる教祖など、メンバーの暮らしぶりを冷静かつ、半分せせら笑いながらながめているエピソードが展開。カミール・ロハス演じる信者がレーモンドの子を出産も、すぐに赤ん坊がレーモンドに捧げられて不満を抱いたり、周辺住民に反対運動があったりを紹介しつつ、教会に捨て子として育てられたレーモンドが神の声を聞いて世俗し、再び神の声から妻子を残して山へ入り、病気の少年を治療した奇跡などが語られる。
　レーモンドのセクシーさに魅力をおぼえてとどまったプリシーリアが、ロネット・ジョルダンやメラニー・アドリアノ演じる女性を癒すレーモンドの様子を、うっすらバカにしながらも、祭壇にある目のオブジェがらせん階段のイメージに重なって、だんだんと洗脳を受けていると暗示。
　川での洗礼式に参加で一員になるや、レーモンドの誘惑に失敗し、代わりの信者をたらしこむとヴィアが怒る、といった男狂いをやめない流れのあと、レーモンドのセックスを目撃のシーンへ。
　このレーモンドによる儀式的なセックスは、一つのハイライトといえる。竹筒を鳴らす合図で全員が集まり、ヴィアが相手を選ぶとレーモンドの寝屋へ案内。妻を他人に抱かれるポジションの夫が嫉妬を持たないあたり、教祖さまのみが快楽の特権を得る図式。座った女に手をかざし「ＨＵＷＡＧ　ＫＡＮＧ　ＫＩＫＩＢＯ…」の呪文から始まる交わりの行為は、肉欲を肯定しない宗教の多い中、ヒル監督が性とのかかわりを主体に宗教をみつめている視線をうかがわせる。愛の確認ではなく、種の保存とのネガティヴなセックス観を逆手にとる偽善で、実際、“宗教＝禁欲”との考え方にこそ、常に“宗教＝カネ”と解釈する日本人と違いがきわだってくるよう。『教祖誕生』だって、テーマはカネだったではないか。
　反面、カネの話題にほとんどふれていない構成は、著しく作品の説得力を弱めるポイント。プリシーリアなど献金を求められず、だと教団運営はどうしてるのといった疑問が生じ、現実味を欠くのが惜しい。
　デクスター・ドリア演じる母と一緒にレアンドロが訪ねてきて、帰宅をうながすも追い返し、山へ精神統一に入ったレーモンドとセックスに成功。プリシーリアが女性教徒のまとうスカーフを頭に巻くところから第二部へと進む。
　レーモンドのチンポを奪ったことでプリシーリアが征服欲を満たしたような表情をつくるのは、男女を問わず、生殖器でモノを考える人間の特性ともいえて、なるほどと納得。
　すぐにプリシーリアがカリスマ性を伴ってリーダーのようにふるまうのは、やや早急ながらも、スターの存在感でねじ伏せる。確かにプリシーリアは個人的にタイプじゃないながら、画面をさらうだけのムードを持っている。
　後半は具体的なドラマをどんどん積みかさねていく印象。いったんプリシーリアがら致で帰宅を強いられるものの、デクスターとレアンドロをみかぎって教団へ戻る。それでレアンドロは周辺住民をあおり、反対運動を鼓舞する。カミールはレーモンドとのセックスを許されず、不満から同じようにレーモンドの子を産んだ母たちと一緒に脱会していく。ヴィアはガンドン・セルヴァンテス演じる夫が現われ、復縁を拒んだために撃ち殺される。レーモンドにもチェスカ・ディアス演じる妻が訪ねてきて、悲痛な訴えにレーモンドが精神的な呵責をおぼえる。などの次々と起こるアクシデントのすえ、レーモンドがプリシーリアにすがる逆転劇へ。女性を抱けなくなったレーモンドに対し、プリシーリアが「ＨＵＷＡＧ　ＫＡＮＧ　ＫＩＫＩＢＯ…」をとなえて母のように包みこむ図式が、もっともヒル監督の狙った核心だろう。
　ローレンス・デーヴィッド演じる神父の静止をきかず、住民が教団の屋敷へ火を放つのがクライマックス。カトリックと異教徒の共存概念にまでは、残念ながら追求の表現がおよんでいない。レーモンドだけが逃げずに焼死し、プリシーリアが二代目の預言者におさまるとのオチで、終わってみれば魂の救済を中心にすえた世界観、宗教観がテーマを支配していて、フィリピンだなあというか、インテリのカトリックの描くフィクションじゃないかに落ち着く。みごと、とうならせるようなパンチ力に欠け、正直、もの足りないものの、やはり辛らつな風刺になりきれないあたりが一神教を信仰する人たちのメンタリティーを反映しているともとれる。カネのみで新興宗教を扱う『マルサの女２』や『教祖誕生』などのシンプルな日本映画よりは、少なくとも買えるんじゃないか。
　まあ、ヒル監督のアートな面へ向けた期待は、半分くらいの満足といった結果。一方でヌードへの願望は、けっこう充実感を与えてくれる。川での洗礼シーンで男女の信者が全裸になって輪をつくり、引きのショットでプリシーリアの陰毛までみえるからスゲーッ。寄りに変わるとオッパイをだしっぱなしのうえ、山中のせせらぎでレーモンドとセックスのときには、嬉しいまでに一糸まとわぬボディーを公開。ら致前にも川で水浴びしていて、ホント、美乳であることか。レーモンドと寝屋でのセックスも、ほどよい大きさのオッパイがまぶしい。
　プリシーリアよりもファンのヴィアは、レーモンドとのセックスで素っ裸になり、下向き、上向きのオッパイが揺れる。
　カミールはレーモンドに迫るときに全部脱ぎ、張りのよいオッパイを押しつける。
　あと、パメラ・デル・ピラル、ジョアン・ウィルソン、アイリーン・プンサラン、レニー・ポランコス、ラニー・フェルナンド、アイリーン・サラノといった信者役のうち何名か、洗礼シーンやプリシーリアのら致前の水浴びで全裸を披露するし、その中のアキ・サバルテ演じる一人はそこそこ美人だけにそそる。洗礼の引きではオッパイと陰毛が小さくのぞくも、寄りで水の中にしゃがんでいてオットット。レーモンドに捧げるセックスでは素っ裸とわかってぞくぞくながら、上にレーモンドが乗って肝心の部分を隠したまま。ら致前の水浴びは、もうちょっとで乳首のでる寸前の乳房が興奮を呼ぶも、ニプレスをしてるのか、ついに乳首をみせずじまいだった。