ＨＩＴ　ＡＮＤ　ＲＵＮ
　
75年：ロダ・フィルム・プロダクションズ
監督：パブロ・サンチャゴ
主演：ジョセフ・エストラダ
　　　 ジュン・アリストレナス
　　　 サルディー・ショルナック
　　　 エリザベト・オロペサ
　金庫破り、こそ泥、小切手偽造と個別に犯罪をくり返していた三人。たまたま同じアメリカ人のカネを狙ったため、奪い合いになるも、いったん休戦で山分けにする。以来、住宅詐欺をアレンジやテニス場で中国人をハメるなど、共同作戦で成功をおさめ、だんだんと友情で結ばれていく。
　ありきたりな犯罪ものながらも、風俗的なおもしろさが興味を引きつける。三人のうちフィデル（ジョセフ・エストラダ）は貧民街に暮らし、警官（パキト・ディアス）が強引に犯罪者を探す手入れにあらわれ、刺青の有無を調べている。オカマっぽいフィデルの友人（デンショ・パディーリア）や快活な子どものボエット（ロデリック・パウラテ）、男まさりの女のマックス（マルー・デ・レオン）などがいて、庶民のごったなエネルギーのあふれるバランガイの光景がまず好奇心を刺激する。賭博のとりしまりがはじまり、三人のうちのリック（ジュン・アリストレナス）がトレーナーのふりで逃げる場末のボクシング会場や、移動遊園地にあるごとき縦にまわるルーレットのギャンブル場、パンティーがチラつくミニスカの女と三人のうちのアントンが踊るダンス・ホールなど、当時のマニラの娯楽がうかがえる。アントンの恋人のリサ（エリザベト・オロペサ）が仲間で、アントンとインド人に化ける詐欺の手口も、どこか前出のアメリカ人、中国人と同様にフィリピンのカネもち観が探れる気になる。アントンとリサが大きな家に住み、家具のセールスマンがオカマなのは、おなじみのフィリピン映画のお笑い要素。
　ただし映画のできとしては、かなりさむい内容と評さざるをえない。リックの妻（トリシア・ゴメス）の兄が警官との設定はストーリーにさしてからまず、リサがアントンに不満をおぼえてフィデルに相談したり、アントンとトラブルの後半がいたって退屈で、パブロ・サンチャゴが語り口のまずさを露呈する。リサが麻薬販売にアプローチをかけたのでシンジケートにつかまり、三人がニセのヘロインを売ってリサをとり戻し、カネをえるエピソードでは、相手が犯罪組織だというのに逃げないままの展開がヘンだぞと思わせる。案の定、ウェディング・ドレスを試着中のリサが撃たれる結果をまねく。
　アメリカ人の部屋からカネを奪う直接のショットがなく、突然にリックがボンネットに乗ったアントンの車とフィデルの車のカー・チェイスになるつながりの悪さは、シーンの欠落かもしれない。リサが殺される前後の不自然な流れにも欠落が感じられる。冒頭のタイトルは明らかに紛失なので、あとから再生したもののようだ。
　ラストのオチがエッとキツネにつままれたごとくヘンなのは、みかたによっては意外性でプラスの部分ともいえるだろう。
　まあ、のちの大統領のジョセフ・エストラダがチンケな犯罪者を演じている設定に、今となってはクスクスとできるおかしさをひめる。
　女優では若き日のエリザベト・オロペサがセクシーに迫ってくる。リックが泥棒に入る部屋で寝ていて、赤い下着をはだけてみせる。アントンといるときは黒いパンティーのはみでるワンピースや、黒いパンティーが顔をだすガウンをはおったかっこう、アントンとケンカでガウンからパンティーがチョロチョロに視線を集める。トリシア・ゴメスはリックと兄の殴り合いでとばっちりをうけ、ワンピースが破れて下着を露出させる。マルー・デ・レオンはバランガイで女同士のとっくみ合いをくり広げ、激しい動きでシーンズからお尻の割れ目の頭をのぞかせる。相手の女性もまずまずかわいいが、ワンピースは乱れないままが惜しい。フィデルとセックスは、シーツをかぶって肌をみせない。ほかにフィデルとアントンのカー・チェイスで小屋にぶつかって破壊のあと、真っ裸の男女が驚いて逃げるのは、お尻丸だしのサーヴィスぶり。
　個人的にはマルーがもっとも好みだった。