ＨＩＰＯ
　
04年：ＡＴＤエンターテインメント・プロダクションズ
演出：ソクシー・トパショ
出演：カチャ・サントス
　　　 アレン・ディゾン
　　　 ＶＩＶＡホット・メン
　　　 ブディー・カラマト
　　　 ボン・エンビレ
　　　 カーロン・マトバト
　　　 ロトロト・ブスタマンテ
　題名はＨＩＰＯＫＲＩＴＯの省略形で、偽善を意味している。演劇の舞台を撮った作品であり、オリジナルの映画ではないが、最初から撮影が目的だったようだ。アレン・ディゾンが制作を兼任し、パオロ・セラーノ、ジュスティン・デ・レオン、ジェローム・オカンポ、ジェイソン・コリス、イータン・スレータ、ブディー・カラマトのＶＩＶＡホット・メンが顔をそろえる。だと男のハダカばかりじゃないかと危惧するも、ＶＩＶＡホット・ベーブスのカチャ・サントスが参加に注目。劇団“ペタ”の芸達者な役者たちも加わる。白い体操着で全員が踊って歌うオープニングからミュージカル・タッチのコメディーとわかる。六つのステージに分かれ、“ＢＩＫＩＮＩ　ＣＯＮＴＥＳＴ”はその名のとおり、男性の候補者もいるビキニ・コンテストを皮肉る。下着の上に白いガウンで現われたあと、男たちのブリーフによるパフォーマンスは気持ち悪いし、カチャはガウンを着たままで、ロトロト・ブスタマンテのブヨブヨに太ったおばさんのビキニにオイオイなものの、審査で全員が水着になって、カチャの花柄ビキニに視線を引かれる。できれば男たちのようにＴバックならよかったのに…　“ＳＨＯＯＴＩＮＧ　ＳＴＡＲＳ”は映画撮影の現場で女優がごねるショート・コント。政治家と芸能界のピンクな関係の話題もでてくる。カチャはレースのパンティーとブラの下着姿で、パンティーがお尻にキュッと食いこんでいるのにゾクゾクっとそそる。しかも四つんばいのポーズをとるから、思わずウヒョヒョの興奮。相手役の男がパンツをおろされ、前ばり一枚でアナルがみえそうなのは、マジでやめてくれー。カチャのお尻の穴だとよだれものだが…　“ＰＡＲＬＯＲＩＳＴＡ”（美容院族）は美容院で起こる脅迫もどきの寸劇で、美容師に多いオカマのおかしさを狙う。カチャは赤いＴシャツにジーンズの短パンどまりが、スケベ目的にはイマイチ。仮面をつけてカチャが白い下着姿で登場し、パンティーのお尻を突きだして男たちにさわられるつなぎのダンスのあと、“ＨＩＬＯＴ　ＢＡＮＧＵＮＧＯＴ”（悪夢の助産婦）はマッサージ・サーヴィスのコント。アレンにマッサージされるロトロトのビキニはともかく、Ｔバックの男をマッサージするカチャがガウンを脱ぎ、白いビキニ下着になるのにウハウハ。結局は売春へ進む実態をユーモラスに表わす。“ＰＡＳＡＷＡＹ”（注意すべき助言）はオカマなのを隠す男がタクシーを呼ぶ際の動きでバレてからかわれるなどのギャグで同性愛への偏見をおちょくるが、カチャ抜きのネタ。“ＢＡＮＡＬ　ＮＡ　ＨＩＰＯＫＲＩＴＯ”（聖なる偽善者）はおそらく、演出のソクシー・トパショ、台本と音楽のヴィンス・デ・ヘススがもっとも力を入れた部分じゃないだろうか。新興宗教の教祖と信者、セレモニーにきたゲストなどがオカマをからかったり、ウィットにとんだ台詞と癖のある演技で虚像をバカにしてみせる。でも長さをおぼえてタルいのみならず、カチャがワンピースで肌をださず、ついついあくびをもよおす。
　後半の二つがつまらないことが全体の印象をさげるのが惜しいながら、ラストのしめが絶賛ものだった。全員が全裸で立ち、男はチンポを手で隠し、カチャがオッパイと陰毛のあたりに手をあててコメントを述べる。そして腕をパーっと開くや、オッパイも陰毛もバッチリのみごとな素っ裸。うしろを向くと、お尻をキュッキュッと動かす自然さで歩く。男の中には拍手で手をはずしてチンポ丸だしのメンバーもいる。役者とは自分をさらし、恥をかくことであり、演劇なり舞台なりが人間性をあばく芸術だと感じさせるあっけらかんさ。
　客席にいたモン・コンフィアドなど有名人の感想を聞く簡単なインタビューと、終わった直後の出演者たちに充実感を聞くインタビューで幕。
　テーマである偏狭さに対するアイロニーの喜劇よりも、カチャのオール・ヌードに圧倒された一編だった。