ＨＩＮＡＨＡＮＡＰ−ＨＡＮＡＰ　ＫＩＴＡ
（私たちは探し合っている）
　
98/99年：リーガル・エンターテインメント
監督：チト・ローニョ
主演：アガ・ムーラック
　　　 ジゼル・トエンギ
　　　 デイジー・レイエス
　　　 シャイナ・マグダヤオ
　　　 ブーツ・アンソン・ロア
　キャリア・ウーマンの社会進出がフィリピンでどこまで進んでいるかは知らないが、まだ雇用による男女の差別があるようには思う。元来が女性のほうにしっかり者が多く、男はヒモ状態のフィリピンだけにおかしな話だと感じるが、バカな男が女卑のイメージを抱いている以上、解消されないだろう。それはどこかの国と同じこと。
　でも女性に管理職への機会が開かれて『クレイマー、クレイマー』のような家庭問題が生じているんだなあ、とうかがわせるのが、この作品である。
　アガ・ムーラックとＧ・トエンギが演じるのは六年間つき合ったカップルで、既にシャイナ・マグダヤオ演じる娘がいる。いよいよ正式に結婚することになり、式の様子から映画は始まる。アガは小型機のパイロットで、Ｇは高級ホテルのＯＬだから、かなり中流だといえよう。しばらくは幸福な日々なのだが、Ｇが管理職に抜擢されることになり、おかしくなってくる。忙しさから、シャイナの世話をアガばかりでなく、デイジー・レイエス演じる友人のカメラマンまでがみることになる。
　やたらＧがアメリカへ行く機会を得たことを喜ぶのは、あきれるほどのフィリピンだなあと思うが、家庭を軽視するようになってアガとケンカばかりに陥り、ついに家出。アガが慣れない料理をしようとフライパンから火が吹くエピソードは『クレイマー、クレイマー』の影響だろう。ブーツ・アンソン・ロア演じる母に諭され、Ｇがシャイナを連れにきて、またケンカ。
　貧困層からみれば、ぜい沢な悩みだろうに、ともあきれるのだが…
　途中で伏線をおくものの、シャイナを連れて南の島へ物資輸送のフライトをしたアガがゲリラに拉致され、意外にも荒っぽい展開になる。ゲリラの仲間割れのスキに逃げるや、アガが肩を撃たれる設定はどんなものか。ホーム・ドラマに暴力はいらないと感じるのだが、これもフィリピン社会の反映かもしれない。
　アガたちが救出されて、心配で駆けつけたＧと再会するも、またケンカの二人にシャイナが愛想をつかせるあたりは『ペーパー・ファミリー』を連想させる。
　最後はメデタシメデタシに相場は決まっているから、まあこんなものか、といった印象である。チト・Ｓ・ローニョ監督にすれば、難なくこなしたといったところだろうか。
　全体的にはコメディー・タッチながら、デイジーがマダム・アウリン演じる占い師にこっているあたり、個人的に仕事の関係で占いの知識が多いのだが、実際にフィリピンでも運勢を聞かれる機会が多く、安易な占い好きの性格はどこも同じだなあ、とバカにしてしまう。
　そのデイジーが酔ったアガを介抱のシーンで、浮気に発展するのかと思わせるも、こっちとしてはセクシーなデイジーがみたかった。当然そうならないのは、家族ドラマだからだが…
　結婚式のシーンで、ホーム・ヴィデオを上映するところがあり、中に水着のＧがいるのには、ちゃんとみせてくれよと声がでそうになる。続く、一家三人が海岸で遊ぶシーンで、まさか声が聞こえたわけじゃないだろうに、ビキニのＧが登場で、目の保養をさせてくれる。
　美人のビキニって、本当にいいなあ。
　このサーヴィス精神もプラスして、一応は満足のいく作品である。
　ただしシャイナは、けっこう人気があるようだが、大人を食うほどの演技になっていないのが残念で、意外と名子役というのは難しいんだなあ、と思ってしまった。