ＨＩＨＩＮＴＡＹＩＮ　ＫＩＴＡ　ＳＡ　ＬＡＮＧＩＴ
（あなたを天国で待っています）
　
(91)年：レイナ・フィルムズ
監督：カルロス・シギオン・レイナ
主演：リチャード・ゴメス
　　　 ドーン・スレータ
　　　 エリック・キゾン
　　　 ジャッキー・ルー・ブランコ
　　　 マイケル・デ・メサ
　エミリー・ブロンテの『嵐が丘』の映画化。クレジットに原作の表記がないので、なんとなく似たストーリーだなあ、マネたのかなあ、といぶかりながらみていたら、途中で完全に翻案と気がついた。これまで『嵐が丘』といえば、ウィリアム・ワイラー、ルイス・ブニュエル、ロバート・フュースト、吉田喜重と四人の監督作を思いだすが、一番小説に近いのは吉田版ではないだろうか。主人公であるヒースクリフ（鬼丸）の狂気に近い愛情と憎しみを、恋人であったキャサリン（絹）の子どもにまであたっていく構成がすさまじく、実験的な失敗作との印象だったものの、異様な雰囲気で迫ってきた。それに比べると残りの三作はキャサリンが亡くなるところで終わり、ヒースクリフとの恋愛を軸にまとめていたように記憶する。とくにブニュエル版は人間の動かしかたの表現に特徴があったが、ワイラー版はロマンティックさを打ちだし、ある種の通俗性を基本に置いていたようだ。ここでのカルロス・シギオン・レイナはワイラー版に近い構成をとって、やはり愛情が反面として秘める憎悪の中にも、ロマンの要素を意識的に残こす。決してほめられたできではないが、フィリピンという舞台への移行におもしろさがあり、フュースト版よりは相当に高く評価できる。
　それにしても小説の前半部を忠実になぞっている。リチャード・ゴメス演じるガブリエルがヒースクリフ、ドーン・スレータ演じるカルミナがキャサリン、エリック・キゾン演じるアランがエドガー、ジャッキー・ルー・ブランコ演じるサンドラがイザベラ、マイケル・デ・メサ演じるミロがヒンドリーにあたる設定。ロケ地になった崖の広がる海岸線の風景が、どこか英国ふうというか、アイルランドをイメージさせ、確かに『嵐が丘』の世界を語るにふさわしい。現代劇ながらも大地主制度が今も根づき、エドガーの営むマンゴ農園のようすなど、ブロンテが生きた時代の英国に通じるかもしれない。
　またフィリピンっぽい要素がうかがえる点が興味深く、カルミナとアランの結婚式がスペイン統治下の様式そのままといえ、ヴァンジー・ラバラン演じる家政婦を含むコスチュームが、このシーンだけとれば時代劇にも思えるほどで、いかに植民地マインドが定着したかを示す。カブリエルがカネ持ちになって帰るのに、海外で出稼ぎしたのかとの話題がでるのもフィリピン社会の傾向。
　反対に息絶えたカルミナをガブリエルが抱きかかえて屋敷のベランダへでる演出はワイラー版のラストと同じ絵づくりとも感じられ、影響を受けたかなと推測させるまではよいながら、カルミナの墓を狂ったように掘るガブリエルをミロが射殺するしめは、まさかブニュエル版を参考したとは想像しにくく、はたしてどんなものか。結局、死でロマンスを昇華に導く安易さのみが際だち、なんだよと切り捨てたくなる。いったい脚本のラクエル・ヴィリアヴィセンシオと監督のカルロスのうち、どちらが考えたのだろう。
　もっとも大好きなドーンを目的にみた映画だから、ドーンのヒロインぶりが魅力的ならば文句のないところ。容貌だけでもマール・オベロン、イラセマ・ディリアン、アンナ・カルダー・マーシャル、田中裕子よりはるかに美人とはいえ、さらにセクシーに輝いているのにうっとり。海のみえる丘でガブリエルとキスをかわし、シャツを脱がされてトップレスの背中がチラつく。ガブリエルがパンツ一丁で体を洗う場へしのんできて、ふざけて水をかけ「やったなあ」と反撃に濡れると、またもシャツを脱がされて乳首がこぼれそうにオッパイがのぞく。服を選ぶ際のブラをつけた谷間も、小さめのバストが本当にキュート。エドガーとの初夜は着たままだが、エドガーやサンドラとプールにいるときにガブリエルが訪ねてくるシーンが素晴らしい。ワンピース水着でヴィーナスのごときラインをつくって寝ころぶポーズに呆然とみとれるや、起きあがって歩き、うしろ姿に理想的なヒップの形が浮かぶ。とどめはガブリエルとの愛を抑えきれず、海岸でハダカになって愛撫をかわす描写で、ドーンのきめ細かい肌の背中が画面に大きく迫り、お尻が割れ始める寸前までバッチリだけに、もはや我慢の限度を超える。ガブリエルとサンドラの結婚式へ主席するためにアランから無理やり着がえでガウンの紐をほどかれ、ブラになるオマケもあって、ドーン最高。
　ジャッキーもいつになく色気を放ち、キャサリンにガブリエルの紹介を受けるのがプールで、青いワンピースがボディーにピタッとフィットし、トランジスター・グラマーとわかる。ガブリエルとデートでプールは濃いブラウンのワンピースになり、水からガブリエルにザバッと持ちあげられるショットが遠いのは惜しいが、お尻にキュッと食いこんでいる。プール・サイドへあがってくるとワンピースが貼りつき、ガブリエルとアランがケンカで取っ組み合うと、水着のまま駆けつけてとめる。ガブリエルとの初夜はシー・スルーぎみのスリップでワンワンのかっこうになって女性上位でキスするのを真横から撮る。
　個人的には文芸作品もクソもなく、女優へのときめきがすべてという感じ。
　ドーン、愛してるよ。
　なお制作はアルミダ・シギオン・レイナだが、出演はしていない。