ＨＥＡＲＴＡＣＨＥ　ＣＩＴＹ
　
(85)年：エセックス・フィルムズ
監督：ダニー・Ｌ・シアルシタ
主演：チャンダ・ロメロ
　　　 バルバラ・ルナ
　　　 タニャ・ゴメス
　　　 マリア・イサベル・ゴメス
　　　 リズ・アリンドガン
　　　 ライカ・ウガルテ
　　　 ロナルド・ヴァルデス
　　　 トミー・アブエル
　　　 グロリア・ディアス
　　　 イサベル・リヴァス
　マルコス政権末期に多数制作されたヌードを盛りこむドラマの一本であり、その代表的な作品にあげられるかもしれない。まさにこの時期がフィリピン映画にとって、ちょっとした黄金期だったとうかがえるよう。
　複数の女性を主人公にとり、ホセ・ハヴィエール・レイエスのストーリーのもと、ダニー・Ｌ・シアルシタの脚本と演出が表面的に登場人物をうまくからませている。アンドレア（チャンダ・ロメロ）とマリテス（バルバラ・ルナ）が同じパパのラファエル（ラモン・ド・サルヴァ）をもち、下半身不随で不能のラファエルはアンドレアを強く愛している。マリテスはジョジ（マリア・イサベル・ゴメス）とレズで、マリテスにパパがいるのをジョジが不満に思っている。もうひとりマルテスは浮気者のフランシス（トミー・アブエル）ともつき合っていて、フランシスの実態を知らずに結婚。一方、バーのダンサーのセリス（ライカ・ウガルテ）は夫への気持ちが冷めきり、新しい男のバンジョー（マンジョー・デル・ムンド）を実質の夫にしている。バンジョーはボスのエドゥアルド（エディー・アレナス）につかえ、悪事に加担しているようす。それでバンジョーがヤクザの一味に連れ去られたときに捨てる。サウジ・アラビアへ行きたがっているカリート（ジョニー・ヴィカール）は妻のエリザベト（タニャ・ゴメス）とうまくいかず、エリザベトが他人の子を妊娠したらしいので、相手が誰か聞きだそうとする。カリートの上の妹のテレサ（スザンヌ・ゴンザレス）は夫にたかられまくり、下の妹のエルマ（リズ・アリンドガン）は恋人のアンジェロ（アレックス・レヴィステ）の子をはらんだようす。乳飲み子をかかえる友人のマギー（アベル・フランシスコ）からエルマが子育ての大変さを知る。アルヴァイトでエルマが画家のロメロ（ロナルド・ヴァルデス）が主催する美術教室のヌード・モデルになり、ロメロは妻のマグダ（オデット・カーン）の尻にしかれている。自宅へ全裸の絵が届いてテレサがエルマをしかるも、エルマは平然としていて、ロメロとセックスもする。エリザベトが田舎へいったとテレサから聞きだしたカリートが追いかけ、ボコボコに合わせて不倫の相手がセリスの前の夫だと吐かせる。カリートの母のルス（ルス・フェルナンデス）がエリザベトに冷たい。顔にアザをつけられたエリザベトがエルマを訪ね、兄のカリートの居場所を問いただすも、殴り合いのケンカになる。カリートはセリスの前の夫を射殺し、刑務所のカリートに面会したエリザベトがサウジのための貯金がパーだと伝える。秘書のマグダ（デクスター・ドリア）の紹介でエドゥアルドがセリスと会い、愛人として囲うようになる。エドゥアルドはアンジェロの父で、恋人を妊娠させたことを責め、母のメルセデス（ローズマリー・ヒル）はアンジェロが麻薬に手をだしている告白をうける。バギオでフランシスがエリザベトとゆきずりの関係を結び、一回限りで無視なのでエリザベトが怒りの電話を入れる。フランシスがラファエルに無断で会ったため、マリテスがラファエルの夜の要求を拒む。エドゥアルドの浮気をかぎつけたメルセデスがセリスとの情事の現場へ銃をもって押しかけ、発砲騒ぎでエドゥアルドが二階から落ちる。アンジェロが妊娠の責任をとろうとしないのでテレサと一緒にエルマがメルセデスに交渉し、松葉杖のエドゥアルドが会って息子の婚約を認める。ロメロがアンドレアへヌード・モデルを頼み、二人がセックスしたとかんづいたラファエルが、ロメロの気持ちを確かめて自殺する。とたくみに全員がつながっている構図をグランド・ホテル形式で並行に配置している。深みはないながら、技術を感じさせる。
　またマリテスの相手とわかってジョジがフランシスにけりを入れるなど、女がパワフルで男がオロオロとの印象を与え、女性社会のフィリピンを反映しているようにも思われる。『ビリティス』の音楽を使用といったシラける面を考慮しても、まあまあ水準には達したレヴェル。
　内容なんてどうでもよく、とにかく主演女優六名のヌードがみどころであり、すべてはそれにつきるといえる。チャンダ・ロメロは泡風呂から乳首がのぞき、立ちあがってお尻に泡のついた水がしたたり落ちる。前向きではオッパイのみならず、陰毛が丸みえになる。真っ裸でプールで泳ぎ、水面からオッパイやお尻に陰毛までが浮かび、プール・サイドへあがるときにラファエルがながめる視線でお尻の形のよさがわかる。ベッドでのキャミソールが乳首くっきりのシー・スルーのタイプだから、オッパイ全開よりもそそる。白いビキニの下着姿ではパンティーにくるまれたお尻の超アップなど、全裸とは違った興奮をくれる。すべてを脱いで絵のモデルになって、オッパイと陰毛を腕と机で隠したポーズをとり、ボディーのラインを明らかにする。ロメロとのセックスはオッパイが激しい動きの中でのぞき、ことが終わったあとに重なって寝ているときにロメロからお尻をなでなでされる。バルバラ・ルナはマリア・イサベル・ロメスとのレズの愛撫をかわすシャワーで、二人ともオッパイやお尻に陰毛までさらす素っ裸で立って抱き合い、しゃがんだマリアに手でもみまくられるバルバラのお尻が画面いっぱいに近いクロース・アップにうつされる。ベビー・ドールの片方の肩紐がはずれたり、ガウンからパンティーがのぞいたり、チラリズムの色気もいける。リズ・アリンドガンはヌード・モデルでオッパイも陰毛もモロの真っ裸で横たわり、プロポーションのバツグンさをうかがわせ、座ったうしろ姿にお尻が理想的に割れている。下着姿で階段を昇り降りのさいにパンティーがヒップに食いこみ、タニャ・ゴメスとつかみ合いのケンカになって下着がはだける。ロメロとのセックスでは、ほんの少しでも股を開いたらオマンコがバッチリのアングルでお尻をドアップに迫る。ライカ・ウガルテはショーのステージでニプレスをつけただけのバストをゆらせ、赤いパンティーがお尻のカーヴをきわだたせ、キュッとしまったくびれといい、ヴィーナス的なスタイルのよさを強調する。Ｔバック・パンティーと黒いパンティーのダンサーがいる楽屋でもニプレスのオッパイのままに動きまわる。ビーチでのビキニの水着が誘惑光線を放ち、バンジョーに人質にとられるときとエドゥアルドに囲われるベッドでのお尻にピタピタのパンティーの下着姿がよだれもの。タニャ・ゴメスはカリートからの暴力的な追求やエルマとの格闘で下着がちらつきまくり、滝の池でカリートともめるレイプもどきはオッパイ丸だしなうえ、水からあがるさいにパンティーがお尻に貼りついている。フランシスのナンパをうけたベッドで腰のあたりにタオルをかけた全裸で仰向けに横たわる。欲をいえばスザンヌ・ゴンザレスにもきわどいシチュエーションがほしかったが、六人の大胆な描写だけで十分に満足。全体をとおしてヌードのシーンをふりわけているので、最後近くまでもうビンビンの起ちっぱなしであり、何度みても何回もお世話になれる実用的な作品だともいえる。中でもいまや脇の名女優となったチャンダの若いころの裸身をぞんぶんにおがめることや、びっくりするくらい美貌のバルバラがすっぽんぽんだけでもたまらないのに、ダニー・Ｌ・シアルシタがスケベ人間の願いをよく心得ていて、お尻をつかめるくらいの接写でみせるのみならず、キュートでアイドル的なかわいさのリズが陰毛も惜しまずに露出の素っ裸だから、これ以上なにをか望まんや。同時期の日本映画の性表現と比較すればその差が明らかであり、マルコス末期のフィリピン映画というのは本当に素晴らしかったのね、との懐古趣味がわきあがる。また似たようなゆるい規制が復活して、チャンダやバルバラ、リズほどの美人が一糸まとわぬ全裸になってくれないものか。
　なお酔ったフランシスが一夜をともにする女性役でイサベラ・リヴァスが、新しいレズのお相手にとジョジが声をかける女性役でグロリア・ディアスがゲスト出演している。主題歌をテレサ・ロイサガが歌っている。