（私が握るあなたの命）
（97）年：ＮＥＯフィルムズ／ロケット・プロダクション
監督：ロン・リック
主演：ロニー・リケッツ
ミシェル・アルダナ
マイケル・デ・メサ
エフレン・レイエス
ジェッサ・サラゴサ
ロリー・キソン
レス・コルテス
エルニー・ガルシア
ベン・ティソイ
色っぽいミシェル・アルダナがみたかったのだが、彼女はほとんど添えものの、男たちによるハード・アクションだった。それも印象は、決して悪くない。
とにかく夜間と室内の撮影が多いせいもあって、全体の70％くらいがくすんだ画面のような感じ。このダークな色彩設計が、低予算のＢ級アクションに重いムードを漂わせる。それに全編ヴァイオレンスに浸りきるも、えげつなく血のでるような、悪趣味なショッキング演出のないところがよい。
ロン・リック監督（主演のロニー・リケッツの変名）は、よくパワーを持続させ、まずまずの力量と評価できる。
物語は犯罪を憎むがゆえに暴走しがちなロニー演じる捜査官が主人公で、ストイックな人物として、本当にこんなフィリピン人がいるの（失礼しました）との設定になる。いつも身体を鍛えまくる傾向において、戦いの日々に疲れ気味ながら、ミシェル・アルダナ演じる恋人の捜査官に甘えないドライな面をもつ。それでベッド・シーンへと発展しないため、個人的にはセクシーなミシェルに出会えないわけで不満タラタラだが、アクション映画としてはトーンの統一に成功している。ただし帽子をかぶらせて個性をだそうとの狙いははずれかな。
敵の対象は複数あり、一つは若い女性の誘拐集団。この捜査をめぐってエフレン・レイエスがチーフを演じる警察と対立し、正義の側同士が一触即発におちいったり、ロニーとエフレンがボクシングで対決をくり広げる。内部闘争も敵のごとく描く構成で、ミシェルに気のあるエフレンが部屋へ忍びこむシーンくらいはセクシーなカットがほしかったなあ。
最大の敵はマイケル・デ・メサ演じる私怨でロニーを狙う男になり、長髪にニットの帽子をかぶった雰囲気からオッと思わせる不気味さが漂い、ロニーを食ってしまうくらいの存在感をかもす。まあ犯罪アクションでは『ブラック・レイン』の松田優作など、悪役のほうがカッコいいケースが多いもので、マイケルもなかなかのもの。
捜査過程の描写では、似顔絵をつかうあたりが興味を引きつける。口うるさいながらも、ギリギリのところで理解を示すレス・コルテスの上司の個性づけは、アメリカの刑事ものを勉強したなあ、とのフシがうかがえる。
結局エフレンはマイケルに殺され、鉄道の車両倉庫に隠れていたアジトで銃撃戦のあとに誘拐一味を逮捕のロニーが、今度はミシェルを連れ去ったマイケルと対決。いよいよ一騎打ちをむかえ、鏡を小道具に使用のあたりは『上海から来た女』か『燃えよドラゴン』の影響と思うが、よく緊張感をとぎらせないテンポを評価する。荷物で下敷きにして殺そうとのあたりも迫力に満ちる。
ただし最後に紐で首をしめられたとき、ロニーが隠しもっていた棒のようなものをだして反撃は、いただけない展開だった。
それと誘拐の危機一髪にあうも、あやうくロニーに助けられる少女をジェッサ・サラゴサが演じ、マイケルに殺されてしまう設定は余計。
どうせなら、せっかくジェッサが配役だからとセクシーな期待が高まったが、やはり描いてくれないのはハード・アクションに徹しているためだろう。
